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(――そうだ、誘ってみてから考えよう)
どうせほぼ確実に断られるのだ。だったらまず佐治さんを誘って、後のことはそれから考えればいい。
携帯を手に取り、佐治さんにメッセージを送る。
『こんにちは。お元気ですか』
送ってから大きく息を吐いて、携帯をローテーブルに置く。立ち上がろうとしたところでローテーブルが短く音を立てた。
携帯を確認する。佐治さんからの返信が来ていた。
『どうしたの。またトカゲ絡み?』
普段通りの佐治さんからの返事。少し安心する。
『いいえ、違います。佐治さんは今どこにいるんですか?』
『千葉。ちょうど一仕事終わったところだけど』
とりあえず首都圏内にはいるらしい。できれば都内にいてくれるのが理想だったが、それは飽くまでも理想だ。千葉ならどうにか許容範囲内というところだろう。
『よかったら一緒に温泉に行きませんか? 宿泊券をもらったんです』
返事の間隔が空く。じっと返事を待つ。
――返事が来た。