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文明トカゲ  作者: ペン牛
七 怨讐の皹
176/263

26

 僕の見ている目の前で法山の姿が変わっていく。女性の姿だ。年齢は佐治さんより一回り上、といったところだろうか。

 それを見た佐治さんの顔が――捻じ切れそうなほどに曲がった。

「あぁ、やっぱり覿面だね。加志間美咲の外見は」

佐治さんに殺させては駄目だ、と思った。僕は加志間美咲という人と佐治さんの間に何があったのか何一つ知らない。そして佐治さんの目の前にいるのがただの醜悪な紛い物だということもわかっている。だがそれでも――ここで佐治さんに引き金を引かせてはいけないと。

 右手から銀の雫が滴り落ちる。それは伸び広がって僕と法山を断絶させる。法山が意外そうな顔で僕を見た。

「――どうしてそんな顔をするんだ。殺させてあげようかと言ったのはお前じゃないか、法山」

 薄く形作られた鏡は僕の目の前で砕けて散った。それと共に法山の体が急速に僕へと変化していく。

(待て――どうしようもなく、大事なことを忘れている)

 そもそも僕の力は法山に通用するのか、ということ。形を変えられないトカゲに対してなら、この力はもちろん極めて有効だろう。だが、法山は僕の目の前で姿を変えてみせた。

もし法山が僕そのものに変身できるとすれば、この能力はなんの意味もない。

 法山が加志間美咲と思われる女性の体から、僕の体に変化し終えようとしていた時、唐突に変化が止まった。それと同時に、法山から命の気配が消える。

(……死ん、だ? まさか、耐え切れなかったのか?)

 目の前で起きたことが信じられない。まさか本当に、僕の力で、死んだというのか?

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