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「……え?」
「君だって部屋の掃除をする時は邪魔なものを一旦どかしてから掃除を始めるだろう? それと一体どこが違うんだい」
思わず手を握り締めて、
「そこだ!! その人を物としか扱わないその考え、その在り方こそが僕にとっての邪悪だ!!」
――法山の顔から初めて笑顔が消えた。
「そうだな。君は、君達はいつだってそう言うんだものな」
「……どういう意味だ?」
「そのままの意味さ。君達はいつだって人間のことを特別だと口を揃えて言うんだ――なぁ、それは本当かい?」
「当たり前だ! 人の命より大事なものなんてあるものか!!」
ガタアン! とテーブルが揺れた。法山がテーブルに何かを叩きつけたのだ。法山が右手をどけると、叩きつけられたものの正体が明らかになった。無色透明な、それでいて内に虹の光を格納したあまりにも巨きく美しい宝石。
「……ダイヤ、モンド?」
「そうだ。四千カラットの、しかも最高のカットを施されたダイヤモンド。これと引き換えに君の命を奪ってほしいと頼んで、どれだけの人間がそれに応じるか、賭けをしてみるかい?」
「……それ、は」
「君の言うことが正しいとしたら、世界中の誰もそんな頼みになんて応じないはずだ。そうだろう? ――さぁ、この賭けに勝てると断言してみせてくれ、楓」