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文明トカゲ  作者: ペン牛
七 怨讐の皹
158/263

「……せんせーって?」

 暫しの沈黙。そして、

「……なんでもない」

 明らかになんでもないようには見えなかったが、言い切られてしまっては仕方がない。どうやら僕はまた間違った行動を取ってしまったようだ。さて、いよいよどうしたものだろうかと考えていると、

「……せんせー、そんなに私に下着、選んでほしいわけ?」

 そう聞かれると正直困ってしまう。実のところ思いつきで言っただけなのだから。だが、真奈さんが望んでいるのは恐らく僕が真奈さんと同じようにデートを楽しむことだ。なら、ここで引き下がってしまうのはよくないだろう。

「うん、そうだね。選んでほしい」

 真奈さんの人形のような頬に赤の色が咲く。真奈さんは口をモゴモゴと四、五回動かしてから、

「……わかったよ、選んであげる」

 と言った。

「ありがとう。ずっとどんな下着をつければいいのかわからなくて困ってたから、真奈さんに選んでもらえると助かるよ」

 ――どんな下着をつければいいのかわからないのは本当だ。しかし、困っていたというのは嘘だ。下着なんてものはただ安く、つけていて楽なものさえ選んでおけばそれでいい。別に一々困るようなものではないのだ。

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