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「真奈さんは、どんな服が好きなのかな」
「え、どんな服って……せんせーが着る服のこと?」
「そうだね」
真奈さんは少しの間考え込んでいた。
「……せんせーって基本地味で遊びがない服なんだよね……ガラッとイメージ変えるとなると、Ⅴ系? いやいやいやいや、極端すぎる……B系? 駄目、却下。別方向で極端すぎる上にせんせーのイメージと違いすぎ。と、なると……モード系、か」
思考の一部を呟き終えると、真奈さんは僕の目をしっかりと見つめた上で僕の手を取り、
「よし、決まった! 行こ、せんせー!」
そう言って、施設の中を歩き始めた。
――今の心境を一言で言うと、まるで死神にでもなったかのようだ、というところだろうか。
「……せんせー、すご。こんなのまで着こなせるなんて流石に予想してなかった」
真奈さんに連れられてやってきた服屋で、僕は今全身黒尽くめの恰好をさせられている。左右非対称の異様なシルエットのコートにスキニーパンツ、そしてひどく仰々しいブーツ。こんな機会でもなければまず一生着ることはないだろう。
「……こういう服が真奈さんの好みなのかな?」
「いや、その……半分冗談のつもりだったんだけど、せんせーが着たら似合っちゃったから、どうしよう」
どうしようと言いたいのは僕の方だ。鏡に映った自分の姿を見ても、なんというか、自分という気がしない。