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一瞬意味がわからなかったものの、真奈さんは今この場で抱き締めてほしいと言っているのだ、となんとか理解する。
「真奈さん、部屋でならいいけど、ここは一応公衆の面前だから」
「べ、別にいいでしょ! せんせー周り見てよ! 皆普通に抱き合ったり、キ、キスとかだってしてるじゃない!」
「確かにそうだけど、他の人達は他の人達で、僕達は僕達じゃないかな」
「……ちゃんと期末テストで全教科九〇点以上取ったのに」
真奈さんは暗い表情で俯いた。
「私、せんせーの言った通りの点数取ったのに……せんせーとのデートなのに、抱き締めるくらい、いいじゃん」
悲しみで震える声を聞くのは、気持ちのいいことではなかった。そして何より、僕と真奈さんの言い分では、恐らく真奈さんの言い分の方が正しいのだ。
真奈さんに近づき、抱き寄せる。ぎゅってしなさいと言われた通りに少し強めに抱き締めると、腕の中で真奈さんがびくり、と震えた。
「ごめん、強すぎたかな?」
「だっ、だっ、大丈夫だよ! うん、全然っ、平気」
安心すると同時に、一つ疑問が浮かんでくる。