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開けたままのドアから廊下に戻ろうとして――そこは高校の廊下だった。女子生徒の制服を着せられたマネキンが三体。
『柳井ってさ、目障りだよね。男ウケしか意識してません、みたいな性格しやがって。マジでいなくなってほしい』
『あ、でもさ、あいつあの男女に夢中じゃん。笹岩だっけ?』
『あー、あの無駄に背のでかいやつでしょ? 顔も男っぽいし女としては終わってるよね。あんな風に生まれなくてほんとよかった。ま、鬱陶しいやつは鬱陶しいやつ同士でくっついてりゃいいよ。私らには関係ないし。っていうかそのまままとめて消えろ』
喘ぐように廊下から教室に入る。しかし入った先は教室ではなく、僕の他に誰一人いない街中だった。僕の肩にマネキンの腕が絡みついている。
『正直言うとね、お前のことはどうでもいいんだよ』
膝から力が抜けて、だが絡みついたマネキンに支えられて、僕は膝を屈することさえもできなかった。
『俺達はお前のお友達で遊びたいだけなの、お前男みたいだけど女でしょ? 見た目はどっちか微妙だけど触ったら骨格ですぐわかったよ、お前みたいなのは俺もあいつもいらないんだ、でもお前がいればお友達に言うこと聞かせやすいでしょ? わかったら大人しくしててね』
腐り果てた木から滴り落ちた水のような力でマネキンを振り払い、この場所から逃れようとして、
「わかっていたんでしょ? かわいそうな雪子ちゃん」