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「うん、僕もそう思うよ……そろそろ中を探索してみようか。時間が経てば喉が渇くしお腹も減る」
「うん、だけど……私、ここを歩き回って結構時間が経ってるはずなのに、何も変わらないんだよね。どれだけ歩いても疲れないし、お腹も減らなくて……こうやって意識しちゃうとすごく、不気味」
ニャン太に助けられた時のことを思い出す。もしもニャン太がいなかったら、僕と梓は今もトカゲに囚われ、無限に死を繰り返していただろう。今、この廃墟の中はどこかあの時と同じような空気で満ちているように思えた。
(……だとしても、やることは変わらない)
「とにかく歩き回れるだけ歩き回ろう。こんな状況なら疲れや空腹を無視できるのはかえってありがたいよ」
楓の見ている前で手近なドアを開ける。
「――あ」
開けた先には僕が一番見知った家の居間があった。そしてそこに一番見慣れた服の着せられた、木製の男女のマネキンが立っている。
「どうして――こんなところに、僕の家が」
清潔なベージュの壁紙。買い換えたばかりのソファーにクッション。誰も点けることのない大型のテレビ。窓を完全に覆い尽くした光の一切通らない分厚いカーテン。平凡で微塵も不快感のない服を着せられている、僕の父親と母親を模したやけに不格好な木製のマネキン。
ざあざあざあ、とノイズが走る。そうだ、僕はこの家で、僕は両親のことを愛していた。両親もきっと僕のことを愛してくれていた。だから、
『『楓、私達はお前のことをどうやって理解してあげればいいんだろう』』