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「そう、ですね。そうかもしれません」
「わー、なんか感動しました! あの、多分年齢もそんなに離れてないですよね? 私は十九歳なんですけど、よかったら教えてもらえませんか?」
「……笹岩さんと同じです。十九歳」
「わっ! 近いと思ってたけど同い年だったんだ! 今は何してるの? 学生? 社会人?」
「……学生です」
「私も私も! もー、こんな変なところじゃなくてちゃんとしたところで知り合いたかった! ね、雪子ちゃんって呼んでいい? 私のことも楓って呼んでいいから、駄目?」
(違う――あまりにも、僕とは違いすぎる)
僕と同じはずの、だが僕とはあまりにもかけ離れた笹岩楓は今、僕に対して屈託のない笑みを向けている。
「い、いいです、よ」
「あー! 名前で呼び合うんだから敬語は駄目だよー! もっと気楽に気楽に、ね?」
「あ、あぁ、えっと、うん、わか、わかった」
強引に押し切られてしまう。彼女のことをこう呼ぶのはひどく奇妙だが――楓は、明るかった表情を一気に沈ませて、
「……ほんと、ホラー映画みたい。いきなり知らない場所にいて、出口もわからないなんて。って、そうだ、出口! 雪子ちゃん出口知らない!? ここの!?」
「出口、は……この廊下に入ってきたドアが出口に通じて――」
そう言いつつ後ろに振り返る。念のため閉めずにおいた廃墟の玄関へと続いていたドア。その隙間からは、今僕達のいる廊下と同じような長い廊下が覗いていた。