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文明トカゲ  作者: ペン牛
五 似姿の恋
122/263

52

「――やあ、久しぶり」

 見覚えのない男性だった。背は僕よりもやや高い。穏やかそうな、異様に好感を覚える容姿だ。

「これを探していたんだろう?」

 紙袋が差し出される。僕は携帯をしまうと、それを受け取った。

「初めて会った時よりもずいぶんよくなったね。私の姿がはっきり見えている」

 初めて会った時? それはおかしい。僕にはこの男性と会った記憶など――

――あぁ(・・・・)、やっぱり懐かしい顔(・・・・・・・・・・)が二人も揃うと、(・・・・・・・)気分がいいな(・・・・・・)

 男性の声は、あまりにも腥かった。何かに押し出されるように、右腕から銀色の液体が滴り落ちるのを感じた。

「……あなたは彼らに何をしたんですか」

 質問は自制のためのものだったが、ほとんど意味を為していない。目の前の男性がなんであろうと、何を言おうと、どうせすぐに僕か僕のなりそこないになるのだ。

「海野猛と海野雪子を殺されたいのかい」

 ――心臓が凍りついた。

「悪いけど、もう少しだけ先なんだ。待ち切れなくて、顔を見に来ただけなんだよ。だから――私のこともまだ覚えなくていい」

「――え?」

 目の前の暗さに驚く。携帯のライトで照らしていたはずなのに、と右手の方を見ると、右手は知らない紙袋を持っている。

(これは……佐治さんの言ってたいぶりがっこか? でもどうして僕はこれを持ってるんだろう。確かこれを探していたはずなのに)

 とりあえず紙袋を左手で持ち、右手で携帯を取り出すと、ライトを点ける。

 ――以前にもこれと似たようなことがあったはずなのだが、不自然なほど気にならなかった。


               五 似姿の恋 終了


               ※次回の更新は来年の一月を予定しています。

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