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「どうしてって、お土産渡しに来たのよ。いぶりがっこ買ってきたから、これが片づいたら持っていきなさい」
何を言っているのかさっぱりわからない。わからないが、落とされて地面に尻もちをついたまま、安堵の溜め息を漏らした。
「……お前の知り合いだったのか。佐治」
「そういうこと。ご無沙汰だったわね、浪口」
「何故私の邪魔をする? まさかお前までそこのトカゲを庇うとでも言うのか!」
「んなわけないでしょうが。トカゲが何匹死んだところで、アタシの知ったことじゃないし」
「だったら何故――」
「アンタのことが気に入らないからよ」
男の顔から怒気が一瞬消えて――燃え上がった。
「気に入らない、だと? そんな理由で私の邪魔をしたというのか!? いいか! 私は! この世に生きる全ての人間のために! あらゆるトカゲを皆殺しにしなければならないんだ!!」
「――それよ」
佐治さんの視線は、積み上がって氷の塔になっていく水のように凍てついていた。
「アンタが本気でそう思ってるのならアタシだって文句は言わないわよ――でも違うわよね? アンタのそれ、全部嘘でしょ」