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痛みでまともに動かない胸で無理矢理呼吸しながら、僕は火津木さんの側まで歩いていき、そのまま彼女を覆い隠すように立った。
(撮影することが攻撃になるなら、僕の体で隠してしまえばいい)
問題は、ここからどうするかだ。一体どうやって圧倒的な暴力を持つあの男を止める?
「そこをどくんだ。君を傷つけることにはなんの意味もない」
――そういえば、この男は火津木さんを自分の手で殺すことにやけにこだわっているようだった。なら、
「僕も持っているんですよ。トカゲを殺せる力を」
男がピタリ、と硬直する。いい反応だ。
「僕の力はあなたのものよりもずっと強力です。それこそ火津木さんを殺すくらいなら一瞬で済む――僕に火津木さんを殺されたら、困りますよね?」
僕が喋っている間、男は一切動こうとしなかった。つまり男にとって自分の手で火津木さんを殺すことはそれだけ重要だということ。僕は携帯を取り出すと、男に牽制するように見せつけた。
「あなたが大人しく引き下がってくれないのなら、警察に通報します。通報の邪魔をするなら、火津木さんを殺します――どうしますか」
携帯電話に一一〇番を入力しつつ、男の様子を伺う。
男は――笑った。