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「……なるほど。どうやらこれ以上君と話しても無駄のようだ」
そう言うと男はズボンのポケットから携帯を取り出し、火津木さんを動画撮影モードで撮影し始めた――直後、火津木さんが呻き声を上げて体を硬直させる。
(やっぱり携帯で撮影することが引き金か!)
僕は男の携帯を奪い取ろうとし――圧倒的な力に弾き飛ばされた。三mほど転がされ、立ち上がろうとするが胸に強い衝撃を受けたために呼吸すら覚束ない。
「君一人程度、腕一本あればどうにでもなる。わかったなら大人しくしているんだ」
――満足に呼吸できないままで、立ち上がる。男を睨みつけると、かすかに動揺したのがわかった。
「……そこまで、狂っているのか」
殴られることにも、地面に叩きつけられ転がされることにも慣れてきている体に少しだけ感謝する。もっとも、決して自分から望んだわけではないけれど。