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「……忌々しいトカゲが。そこの彼だけでなく、君も操られているということか。やはり一秒でも早く殺さなければ」
「違います! あなたがトカゲと呼んでいる女性は――火津木さんは、ただ普通の人間として生きたいだけなんです! それなのに何故殺さなければいけないんですか!?」
男の目から、再び感情が消える。そして独り言のように言った。
「君は本当にトカゲの言うことを信じたのか」
「……はい、信じました」
一瞬の沈黙の後、
「――そうか、つまり、君は狂っているわけだな?」
「な……僕は狂ってなんかいません! どう考えてもあなたの方が――」
「トカゲとはなんだ」