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「え、か、楓ちゃん、ごめん、まさか俺の話で泣いちゃったの?」
「――はい。猛さん、やっぱり助けてもらったのは、僕の方です。ビべリダエで働けたことで、僕は確かに救われました」
僕がそう言うと、猛さんは頭をかきながら、気まずそうに唸った。
「俺としては少しは気が晴れてくれればくらいの気持ちだったんだけどなぁ。流石に泣かれちゃうとちょっと……楓ちゃんにお説教して泣かせたなんて雪子が知ったら、大目玉じゃ済まないぞ」
猛さんの困った様子に、駄目だとわかっていても、つい笑ってしまう。
「――あぁ、いい顔だ。そういう顔を見せてもらえると、俺も大分気が楽になるよ」
そう言って猛さんは心からほっとしたような笑顔を浮かべた。
――携帯が振動する。確認すると、流谷さんから一言メッセージが入っていた。
『助けてください』