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「まぁ俺も楓ちゃんと実際に会って、あぁ、雪子の言った通りだなって納得したんだけどね」
「……そんなに僕はひどい様子だったんでしょうか?」
僕が尋ねると、猛さんは口に手を当てて少しの間考え込んだ。そして、
「――あぁ、そうだね。消えかけの蝋燭の火を見ているみたいだった」
猛さんの目に僕はそんな風に映っていたのか、と軽く衝撃を受ける。だが、佐治さんに助けられなければ喪服の女の食事になっていた、という点で、確かに僕という存在は風前の灯そのものだったのだ。
「それに、楓ちゃんと話しているうちに、あぁ、この子は雪子と同じタイプなんだってわかったからさ。そりゃあ心配にもなるよ」
(――僕が、雪子さんと同じ?)
「それは、違うと思います。雪子さんは穏やかで、優しくて、何より――人をちゃんと笑顔にできる人です。僕は誰かを助けたいと思っても、助けるだけの能力がない」
猛さんは泣きじゃくる子供をあやすように笑った。そして、
「楓ちゃん、それは違うよ。困っている誰かを助けたいと思える人は、その誰かを絶対に助けられるのさ」