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願わくばこの手に幸福を  作者: ショーン田中
第十七章『聖戦時代編』
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第五百七十五話『地を統べる者と天を征した者』

 蒼穹の杯を握り込みながら、エルディスは碧眼をぐいと開く。エルフの姫君、いいや女王に相応しい溌剌とした笑み。妖精郷の中心地で、輝かしい美貌を湛える。


 だが恐ろしい事に、瞳には夥しいほどの呪物が溢れていた。


 妖精族にとって、祝福と呪いは固有のもの。古来、彼女らは時に人を愛して恩寵を与え、時に人を困らせる悪戯をする。最も人に身近な手伝い妖精や、悪戯妖精達。


 精霊が交わりある種の変質を帯びても、その本質は変わらない。 


「神とはいえ、君と同じように再生を繰り返すのは流石にやりすぎだと思うね、全く嫌になる」


 だがこの女王の本質は、余りに呪いに寄り過ぎていた。


 祝福とは願う事であり、呪いとは想う事である。想う事に特化した彼女が人間に恋をしたのも、必然であったのかもしれない。


 そんな彼女だからこそ、魔性でありながら此処に立っている。


「君は大地との繋がりを断たれたがゆえに致命傷を負った。ならば、やり方は同じだ。彼女にも同じことをしてしまえば良い。後は、ルーギスに任せる」


 森林が繁り、川のせせらぎが耳朶を打つ世界の中。ぽつりぽつりと、エルディスは言葉を紡ぐが、それは会話に近しい独り言だ。


 語るべき妖精王は、王都でその身を消失している。今此処にあるのは、彼の残した原典と意志のみ。その残り香が、時折声を発するようにエルディスに応えただけだった。


「彼がゼブレリリスに届くか――? 決まりきったことを聞くんだね」


 妖精王の声に応じて、エルディスは唇をつりあげる。


 高揚と、裏腹の冷静さが見え隠れしていた。実に楽しそうに、実に面白そうに。けれど氷のように冷たい。


「良いことを教えてあげよう。彼は幾度となく死にかけ、幾度となく乗り越え。その果てにはまた死地に向かう。きっと僕だけじゃない。カリアも、フィアラートも、他の誰かだって一度は言っただろう。

 ――もう、良いじゃないか。君は十分人間に尽くしたし、英雄と呼ばれる所業を超えた。大魔も、魔人も、君が殺す義務なんてない。どこに君が静かに暮らしちゃいけない理由がある?」


 保身や愛情を抜きにしても、言葉を尽くしたものは多かったはずだ。


 彼の成した功績に、異を唱えられる者はもういない。きっと史書を書き記す権利がどの勢力に渡ったとしても、彼の名を完全に抹消せしめる事は出来ないだろう。


 英雄としての功名であれ、大悪としての悪名であれ。もう誰も彼の存在を無視出来ない。歴史の中の一要素に、彼はなってしまった。


 彼が幼馴染を想っている事はエルディスも知っている。だが幼き日の淡い恋心を差し引きしても、得たものは莫大だろう。


 ならばもう、世界よりも自分の人生を選ぶべきではないのか。

 

「彼が何て言ったか? ――秘密さ。もう此処にいる以上どっちを選んだかなんてわかるだろう。けれど分かる気がするんだドリグマン。そんな彼だからこそ、そんなルーギスだからこそ」


 陽気に言葉尻を弾ませて、エルディスは腕を振り上げ手の平を開ける。声とは真反対に、彼女の周囲には呪いが立ち込めていた。此れほどに浪費と蕩尽を繰り返す呪いは、恐らくは此れが最後だろう。


 ドリグマンが貯め込んでいた魔力の悉くを、エルディスは我がものとして扱う。それは女王の振舞いだ。


「魔人も、大魔すらも殺して。――そうして僕に恋をさせた」


 言葉を発する度、エルディスの身体が奮い立っていく。それそのものが、彼女にとっての呪文のようだった。


「だから勝つさ。彼は、僕らの英雄なんだからね」


 エルディスは力強く振り上げた手を握り締める。それが全ての合図のようだった。


 世界が、妖精郷が、その姿を変貌させる。己らが女王に共鳴し、その号令に応じるように蠢動した。此処は神話の名残を残す理想世界。世界そのものがエルディスに味方し呪を発する。


 だが同時、体内に注がれたゼブレリリスの魔力も動く。


 神の号令に従って、神に逆らう者を殺害するために。ゼブレリリスの魔力はこれそのものが、生物に近しい。一滴一滴が命だ。それが体内に入った以上、相手を殺す事も統制する事も容易い。


 ――その性質を熟知した妖精王が、同時に魔力を残して此処に残っていなければ。

 

 エルディスはただ、ドリグマンから原典を受け継いだだけではない。彼の意志を此処に連れて来たのだ。精霊神を打ち果たすという約定のために。


 だからこそ、ゼブレリリスの魔力は僅かにその動きを抑えつけられた。新たな妖精女王が準備を終えるまでの時間は、其れで十分だ。


 世界が、唸りをあげる。


 挽歌を奏でるように、エルディスはこの世全ての呪いを解放した。



 ◇◆◇◆


 

 ゼブレリリスの玉座が、振動を覚える。


 懐かしい魔力の脈動と、凶意そのものの呪術。さしものゼブレリリスも、己の体内で起きた異常には敏感に反応した。


 妖精王の魔力――いいや気配そのものが、ゼブレリリスが大地より魔力をくみ取る線を絡み取り、悉くを断裂している。


 いいや、束縛していると言うべきかもしれない。


「――そう。貴方も私の敵に回ってしまうのね、ドリグマン」


 大地から魔力をくみ取る奇跡を彼に与えたのは、ゼブレリリス自身だ。奇跡の全容は分からずとも、仕組みくらいは理解していよう。


 飼い犬に手を噛まれた格好であったが、ゼブレリリスの動揺は薄い。


 それは保有する力への自信でもあったし、この程度の事そもそもが脅威でないと断じる。


 確かに一時的に魔力の供給は遮断されるが、永遠ではない。むしろ、ゼブレリリスほどの質量と魔力量を持つ存在を、長時間において縛り上げておく事は不可能だ。


 もって数分。


 その間は自前の魔力で十分おいつく。外郭を焦がすシャドラプトの火球も、芯を破壊し尽くすとなれば時間がかかるだろう。いかな竜でも、ゼブレリリスの巨大さを破壊しつくす真似は簡単ではない。


 ならば、後はどう対処するかだけだ。単純に黒水から造り上げる魔性では、この呪いには敵わない。

 

「さて、どうしましょう。魔人ルーギス。貴方、私に忠誠を見せてみる? それとも、そのまま跪いたままの方がお好みかしら?」


 玉座に細い身体を腰かけ優美に脚を伸ばすゼブレリリスは、足元で自由を失った魔人に視線を下ろす。無論、瞼は閉じたままだったが。


 やはり声に危機感はない。むしろ何時もと多少は違う事が起こったではないかという仄かな心の弾みすら覚える。王侯貴族が道化の芸を求めるのと大した変わりはない。


 だから一抹の哀れみと、隠す気も無い傲慢さで己に傅く魔人に問いかけた。


「――返ってくる答えが分かってるのに聞いてんじゃねぇよ。それとも分かってねぇのか。するわけ、ねぇだろう」


 息を細切れにして、渾身を尽くして吐き出した答えだった。


 それも仕方がない。今もなおルーギスの体内は、ゼブレリリスの魔力が暴れ回っているのだ。


 体内から己を浸食される感触を体験した事はないが、筆舌に尽くしがたいであろうことはゼブレリリスにも想像がつく。精神を焼き切らせないだけ、大したものだった。


「あら、そうよ分からないじゃない。私は色んなものを見てきたの。貴方には想像も出来ない程の色んなものよ。知っている魔人ルーギス? この世界はね、何だって起こるの。貴方が有り得ないと思っている事も、道理ではないと考えている事も、理屈を飛び越えた事も、竜が不幸に陥って死ぬ事だって。どれも起こっておかしくない確かな事。強い者が、それより強い者に屈して味方を殺す事は分かりやすい方だと思うわ。

 少なくとも、這い蹲ったままの一生よりマシな方だとは思わないかしら?」


 ゼブレリリスの実感の籠った言葉に、一瞬ルーギスは押し黙る。激痛への呻きを見せずに、歯を噛む音だけがした。


「ああ、何だって起こる。そりゃあそうだ。……だが起こすか起こさないかは、俺の勝手さ」


「そう」


 ゼブレリリスはため息を一つ漏らして、腰を深くして座りなおす。


 彼は諦めないのではない、諦め方を忘れてしまっただけだ。哀れでもあり、愚かでもある。しかし人間にも、魔性にもこういった存在は一定いる。


 所謂、意地を張るというやつだ。勝機がなくとも、意味はなくとも。自分の矜持のために合理的でない判断をする事。悪あがき。


「なら、ずぅっとそうしていなさい」


 意地を溶解させるのは、時間と苦痛だけだ。いずれ彼も、あの時従っていれば良かったと後悔する日が来る。それまで少しの間、神に逆らった魔人を従えるのも悪くはない。


 ふいと、ゼブレリリスは意識を神殿内部から上空へと向ける。今最も脅威たるは、外で唸りをあげる赤銅竜シャドラプト。


 先にあちらをどうにかしよう。そう、意識が外れた時だった。


 ――ゼブレリリスは頑として動きを見せなかった玉座から一息で飛びのいた。


 神としての威厳も、王者としての君臨も、全てを上回って其れは来た。全身を這いまわり、心臓を握りしめる濃密な死の気配。


 かつて一度、アルティアを前に感じたものと同一。受けきれぬと判断した。


 宙を跳びながら、ゼブレリリスはその正体を――信じられないものを視た。


 眉間に皺が寄り、疑問と不可解が瞼の下に浮き上がる。


 視界の中では、勇者でも英雄でもなく暗殺者の如き鋭利さで、ルーギスが魔剣を己に向かって突き上げている。


「――――ッ゛」


 ルーギスは自らを一本の槍とするかのようだった。全身を大きく跳ねさせながら魔剣を握った左手を前に突き出す。声にならない声の躍動。渾身の奇襲は、魔剣の切っ先をゼブレリリスの左胸に突き刺した。


 やはり、彼は運命や神々に選ばれた英雄勇者ではない。


 正々堂々。真っ向勝負。騎士物語の中の登場人物が持つ心を、彼は間違いなく欠いている。あるのはただ一つ、必殺の意志のみだった。


「――嘘でしょう」


 ゼブレリリスの包み隠さぬ言葉だった。どうして、彼は立っているのだ。いいやそれ所か己に刃を突き刺せた。


 有り得ない。


 彼は魔人、ゼブレリリスは大魔。血の主従関係が両者の間にはある。それは痛覚に耐えられるから逆らえるという程度のものではないのだ。


 与える激痛はあくまで付随物。相手の意志をへし折るためのものでしかない。それ以前に、上位者の血を呑み込んでしまったものはその時点で身体の自由を失う。魔性とは、魔人とはそういうものだ。


 起こりうる現象を全て理解しようとするゼブレリリスだからこそだろう。一瞬、思考が止まる。ルーギスが、見逃すはずもない。


「もう、神話は終わったんだ。お前らの出番も終わったんだよ。――原典解錠『原初の悪』」


 生物が初めて犯した罪、最初の殺害行為。


 紫電の魔剣が、神々をも殺す極光を煌めかせる。ただの一突き。馬鹿らしい事に、それだけで全身を穿たれた確信をゼブレリリスは覚える。これはただの剣ではなく、魔を人を殺すための概念そのものだ。此れによって、ヴリリガントも殺された。


 ようやく、気づく。閉じた瞼の中で、ゼブレリリスは己の不明を恥じた。


 そうだ。彼は、ヴリリガントを殺した。それがどういった意味合いを持つものか、問うまでもない。


 すでに、前任者がいるではないか。


 ――アルティアは大魔を殺し尽くしたゆえに、自らの魂も大魔へと変質した。ゆえに死後にあって尚、彼女は生き続けた。


 ならば、ヴリリガントを殺してしまった此の男の魂は、もはやとうに人間でも魔人でもない。ゼブレリリスの血をもって尚、完全に御する事が出来なかったのは当然の道理の一つ。

 

「ッ、う。……そう、こんな人間が、二人も生まれてしまうものなのね。アルティアに、ルーギス。覚えて、おくわ」


「覚えなくて良い。神様に名前を覚えられる事ほど厄介な事はない」


 二人揃って、きりもみをしながら地面に立つ。間合いは、もはや殆ど無い。


 血を身体から零れさせ、声を出して初めてゼブレリリスは真に自分が滅する存在になってしまった事を実感する。


 鼓動の一つ一つが身近であり、肌を刺す危機感が全身を覆う。細い腕を振るい、黒水を集積した。今はただの一滴でも血が惜しい。


 まだ、死にはしない。ルーギスが突き貫いた傷自体は致命では無かった。死という概念を与えられても、身体は健在。もう数分も時間が経てば、断たれた大地との繋がりも復活する。


 そうなれば勝機は再び此方に転がり込むはずだ。与えられた死を覆す事も出来る。


 今此処に、ゆるぎなかったはずの勝利と敗北の天秤が迷いを起こしていた。天秤は切っ掛けを待っている。左右、どちらかに傾くための致命的な切っ掛けを。


 ――そうして其れは、比類なき振動と共に来た。


 最初に気づいたのはゼブレリリス。


「……此れは、偶然なのかしら。それとも、貴方の思い通りなのかしら」


 ルーギスが気づいたのは、問いかけを受けてからの事だった。視界の端で神殿が砂を吐き出しているのを見て、頬を歪める。


「――シャドが動かなかった時の事くらい、考えておくべきだろう」



 ◇◆◇◆



 原初の悪が振舞われる、暫しの前。


 ゼブレリリス外周で、赤銅竜シャドラプトが暴れ狂いながら宙を駆けていた。彼女の極大火球は凄まじく、レウから見れば神の御業に等しい。何故あれだけの力を持ちながら、彼女は『ああ』なのだろう。そんな想いすら胸に去来してくる。


 しかし問題はそこではなかった。シャドラプトは、一度事を起こしたのなら全力を尽くす。己の勝利のために、手を抜くことはない。


 それでいて尚、ゼブレリリスの外郭を破壊し尽くせないというのは圧巻の一言。神とはどういうものかという事を、その身一つで表している。


「こういう、場合は」


 どうすれば良いだろうか。シャドラプトは無事動いた。彼女が動く様に促し、動かない場合には事を起こすのがレウが言い含められた事だ。ならばもう、レウのすべき事は終わっている。


 しかし、ゼブレリリスは堕ちる気配がない。本当に、此のままで良いのか。


 ――悲しい事に、レウは魔人に至って尚その中身は少女に過ぎない。戦場での臨機応変な判断など、彼女に出来るはずがなかった。


 もしかすれば、手を出すべきなのだろうか。しかしそれが余計な事に繋がればどうする。己の所為で、全てが台無しになってしまうかもしれない。


 渦巻く混迷と、頭を抱えるほどの懊悩。額をつぅと汗が伝っていく。時間は、いやというほど過ぎていく。


 シャドラプトが外郭の一部を破り、ゼブレリリスの動きは止まった。そうして今、理由は分からないが再生能力も失っているように見える。


 ならば、やはり見ているだけで良い、のだろうか。唾を呑みこむ。


『――悩む必要なんてないでしょう。思うまま、望むままに振舞うのが宝石の生き方であって、思い悩むなんて理解も出来ないわ。わけがわからない事に、あんたは人を救いたいんでしょう。手を差し伸べたいんでしょう。ならあんたが誰よりも真っ先に、迷い無くあいつに終わりを告げてやらなきゃいけないんじゃないの?』


 レウが瞠目する。その声が本当にしたのかが分からない。体内で僅かに響いた音がそう聞こえただけなのかもしれないし、幻聴かもしれなかった。


 どちらにしろ、声はかつてのほど鮮明ではなく、ただ残り香のような気配があるだけ。


 ああ、それでも。そうだとしても。


「……は、ぃ。そうです。その通りです」


 声が震えていないかがレウは不安だった。これが残り香であるにしろ、真にそこにいるのだとしても。彼女にみっともない所は見せられない。


 彼女は、レウに生きろと言ってくれた。幸せになれとそう告げた。そんな彼女に対して、涙を見せて声を震わせた姿をどうして見せられる。


『素直でよろしい。なら、その手の中のものを使いましょう。私が集積し、宝石と成した中で最も偉大。最も巨大。まぁ本来は、切り札というわけじゃなくてただの趣味なんだけど。それはそれとして』


 かつてバゥ=アガトスが集積した煌めく宝石。その全てが、今レウの手元にある。此れ一つ一つがレウにとってアガトスとの繋がりを示すものであり、生きる意味に近しい。


 どういった理由があるにせよ、此れを惜しげもなく使ってしまう事には一抹の罪悪感と悲しみが付きまとう。


 けれど声は、大笑いするように言った。


『馬鹿ね。そんな所に私はいないわ。私を私たらしめるものを、貴方は覚えているのでしょう。忘れたなんて言ったら許さないわ』


 レウは、こくりと頷く。声が上手くだせなかった。どうしても上ずってしまう。


 彼女はまるでともに在るように、レウに宝石を構えさせた。それを解放する事が、今この時に必要なのだと教えるかのように。


『かつての神話を教えてあげるわレウ。――地を統べるは妖精王ドリグマン。空を征するは、至高の宝石たるこの私。そうして私があるという事はどういう事?』


 ますます、声が本当のものなのか。幻聴に過ぎないのかが分からなくなってくる。


 レウは、瞳を細めた。今この時だけは、これが真実であって欲しかった。


 最後に、共に声を合わせながら宝石を解放した。


『――バゥ=アガトスがあるかぎり、至上の我儘が約束されているという事よ』


 煌びやかな、白色の宝石が射出される。


 輝きそれでいて儚く回転をしながら、其れは内に封じ込めたものを解放した。


 ――宝石バゥ=アガトスの逸話の中、彼女は己の好んだもの全てを宝石に封じたという話がある。それは輝かしいものは勿論、生物であったり。時には都市一つであったとすら言われる。


 此れも、その一つ。神話の遺物と呼ばれるもの。


 かつて竜が住まい、宙に浮かんだ神秘の塊たる天城都市。麗しく優美な姿を見せた、至高の神殿は浮かび上がった小さな島にすら見える。


 大地に巨大な影を作るそれは、今となっては浮かび上がる事もできず堕ちる事しか出来ない。かつての威光など覗き見る事すら出来なかった。


 しかし、今はそれだけで良かった。


 ――天城都市は、ゼブレリリスの巨体を討ち滅ぼすように。神話の終わりを告げるような慟哭をあげて、墜落した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ――そうして僕に恋をさせた 一周目では精神が壊れ 二週目の始めでは世界に絶望していた彼女から この言葉が出てくるのは、 とても感慨深かったです。
[一言] いよいよルーギスさんが、自分を人間だと思い込んでいる一般大魔に…
[一言] 大魔ルーギス……かっけぇ
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