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第一話 天才の姉と無才な妹

「ねえ、花ちゃん。ひとつ聞きたいんだけど」

「なに?」

 家に帰ると、そんなお姉ちゃんが玄関で仁王立ちしていた。

 薄い茶色の髪を後ろで一本にまとめて、肩から前に垂らしている。

 目じりの下がったおっとりとした顔つきのお姉ちゃんは虫も殺せなさそうなぐらい優しそうな雰囲気を醸しだしている。

 まあ、虫どころか、ヘヴィー級ボクサーぐらいなら倒せるぐらい強いんだけど。昔、一緒にお風呂に入ったときお姉ちゃんの体がバッキバキの筋肉で引き締められていることを知ったときは驚いた。

 そんなお姉ちゃんは困ったように眉をさげて、口をへの字に曲げている。

 足元には赤い十字が印字された救急箱が置かれている。

 はて、どうしてそんなものがここにあるのだろうか。


「それはね、花ちゃんがケガをして帰ってくると分かったから」

「お姉ちゃんとうとう超能力に目覚めたの?」

「極めて簡単な、初歩的な推理です。お姉ちゃんの勘(監視カメラハッキング)です。家族の絆(制服に仕掛けた盗聴器)です。大好きパワーの力(自動通報システム)です」

「今なんか、変なルビが振られていたような気がするんだけど」

「気のせいじゃあない?」

 お姉ちゃんは、はて。と首を傾げた。嘘をつくのも得意であるはずのお姉ちゃんにしては、適当なごまかし方だった。


「それで、ねえ。花ちゃん?」

 ぐにい。と鼻の近くの肉を引っ張られた。

 むに、むに。と頬をもまれる。

 鼻をみるために、その行動は必要なのだろうか。


「どうして鼻が真っ赤になっていて、血がどぱどぱ流れてるの?」

「コケたから」

 私はお姉ちゃんの心配そうな目から、視線をそらしながら言い返した。

 我ながらぶっきらぼうな口調だと思った。

 明らかに不機嫌で、あからさまに嘘をついている。


「こけたって……体力測定ぐらい全力疾走していないとこんなことにならないと思うけど。花ちゃんって、そんな走るような子だったっけ?」

「走りたくなるような日もあるよ」

「こけたにしては、服が汚れてないし、擦った痕もないけど」

「頭から地面に激突するみたいに、アクロバティックにこけたから」

 お姉ちゃんは私の目を覗き込むようにしながら尋ねてくる。私はその目から逃げながら言い返す。そしたらお姉ちゃんは私の目を追いかけてくる。私はやっぱり逃げる。

 傍からみたらすごく滑稽な光景だと思う。


「また、誰かに殴られたとかじゃあなくて?」

「まさか。私だってもう中学生だよ? お父さんとお母さんが死んでからも何年も経った。ケンカはもうしないよ」

「ホント? 殴ってきた相手を二度と立ち直れないぐらいこてんぱんにする必要はないの?」

 かなり物騒な物言いだった。

 更に物騒なことにそれが『できる』か『できない』かでいえば、『できる』ところだ。

 あいつらに『出来る姉の陰に隠れる卑怯者』呼ばわりされたくないし。

 それに。

 お姉ちゃんにはこれ以上の負荷と重みはかけたくない。

 だから私は慌ててお姉ちゃんに言い返す。


「ホントだよ。そこの曲がり角で電柱に顔をぶつけたぐらいでおおげさだなあ」

「コケたんじゃあなかったの?」

「あれ?」

 そうだっけ。そうだったっけ?

 じゃあ私はなんて嘘をついたんだっけ?

 咄嗟についた嘘だったものだから、ちょっと思いだせない。


「やっぱりそれ、ただのケガじゃあないんじゃあ」

「だ、大丈夫。大丈夫だから!」

 心配を隠そうともしないお姉ちゃんに、私は何度もそう言って、お姉ちゃんを押しのけながら家に入った。階段をあがって、お姉ちゃんの追求から逃げようとする。

 お姉ちゃんは階段を昇ってきたりはしなかったけど、下の方から声をあげた。


「はなちゃーん」

「なにっ! なんでもないって言ってるじゃん!」

「今日の夕飯、ハンバーグにしようと思うんだけど」

「チーズ入れて!」

 お姉ちゃんの料理は絶品だ。

 その中でも私は、チーズ入りのハンバーグが好きだ。

 肉汁滴るハンバーグの中から、熱でとろりと溶けたチーズがあふれるそれは、想像しただけでもお腹が空く。

 うへへ……。口の端から溢れそうになったよだれを拭って、ハッとする。

 あれ、もしかしてのせられた?

 一階にいるであろうお姉ちゃんを見下ろしてみると、さっきまでの不安そうな表情は消えて、嬉しそうな朗らかな笑みを浮かべていた。


「本当、元気そう。大丈夫みたいね。チーズはたくさん入れておくから楽しみにしててねー」

 ひらひらと手を振って、お姉ちゃんは居間の方へ向かっていった。多分これから夕飯の用意でもするのだろう。

 ぬぐ、なんだろう。なぜか負けた気分だ。

 恥ずかしさで頬が熱い。多分、真っ赤になっていると思う。

 お姉ちゃんを出し抜ける日は来るのだろうか。

 多分、どっちかが死ぬか、世界が終わるまでなさそうだ。

 お姉ちゃんなら、世界の終わりだって、どうにかしてしまいそうだし。

 ああ。そうだ。鼻血止めないと。このまま歩いていたら家の中に赤い点をつけてしまう。お父さんとお母さんとの思い出の家を汚すわけにはいかない。

 お父さんとお母さんは、私とお姉ちゃんを比べたりしなかった唯一の大人だ。

 私は二人が大好きだった。だから、思い出は大切にしたい。


「……って、あれ?」

 今気づいた。

 鼻血は止まっていた。

 なんか、鼻の中に綿みたいなのが入っていて、曲がっていた鼻も元に戻っている。

「あ、そうそう。鼻のケガは治しておいたからねー。もうケガして帰ってきたりしないでね」

 一階からお姉ちゃんのそんな声が聞こえてきた。

 い、いつのまに……。

 なんていうか、なんというか。お姉ちゃんに勝つにはそれこそ魔法とか奇跡とか、そういうものが必要な気がしてきた。

 あはは。と口から笑いが漏れた。


***


 本当に治っている(というか、本当にどうやって治したんだ? 絶対鼻の骨折れてると思ったんだけど)鼻をこすりながら、自分の部屋に向かう。

 うちはそこそこお金持ちだったので、家はちょっと広いのだ。二人で使うにはちょっと大きいぐらい。


「くっそう。くっそう。私だって一応は女子なのに思いっきりぶん殴ってきやがって……」

「どうして殴られたの?」

「そりゃあ、うちに親がいないこととか、お姉ちゃんにおんぶにだっこだってあいつらがバカにしてくるから、ついぶん殴っちゃって──」

 自然と言い返してから。

 はた、と気づく。

 あれ、今の声誰だ?

 聞き覚えのない声だった。

 この家には私とお姉ちゃんしか住んでいないはずだ。

 お父さんとお母さんは、もう、いない。


「ふんふんなるほどなるほど。確かにそんな情報があったね。

 小学生の頃、結婚記念日の旅行の最中に事故に遭い、母は行方不明で父は死亡。その後、既に溢れんばかりの才能を開花していた姉に育てられる。

 姉はいわゆる『天才』。中学生にして小学生の妹を育てて、生計を立てることができる程度の稼ぎを得ていた。無論、中学生と小学生の二人暮らしなんて、本来なら誰も認めてはくれないだろう。

 ひとえに、天才である姉の人望と、ハナが知らないところでの彼女の多大な努力が実を結んだ結果とみて、間違いはない。

 姉は天才だ。天才とは姉のことだ。

 自分はそんな才能のある姉の足かせになっているのではないか。という引け目と負い目。そしてそんな姉と比べられているという、わずかながらの劣等感を感じている。

 目つきは悪く、性格も悪い。ついつい手が出てしまうタイプで、学校では孤立気味。というか普通にイジメられている。

 歳は十四歳。中学二年生。身長は146センチメートル。逆立ち中学校二年C組。出席番号は24番。女子。利き手は左手――」

「なっ、なっ、ななっ!?」

 体が震えて、声も震える。

 聞き覚えのない声は花の個人情報をつらつらと話す。

 どこの中学だとか、どこのクラスだとか身長だとか──明らかに異常ではあるけれども、調べようはある情報ならまだ分かる。

 けれど。

 どうして今まで誰にでも話したことのない私のコンプレックス(・・・・・・・・・)までこいつは知っているんだ!?


「嘘をつくことが多い。本人は誰にも勘付かれていないと思い込んでいるが、生来の嘘の下手さから大体の人にバレている」

「えっ!?」

「車に轢かれたことがある。傷は残っていない。白い車が嫌い。好きな人は」「わあ、わあ、わあ、わあああああああああ!!」

 コンプレックスは不気味だったが、好きな人はただひたすら恥ずかしかった。

 私はミナミコアリクイの威嚇のポーズみたいに両手を持ち上げながら、声のする方に向けて走った。声の位置はすぐに分かった。

 私の部屋だった。

 私の部屋に不審者がいる!

 なんで、普通、お姉ちゃんの部屋じゃあないの!? (お姉ちゃんの部屋には、お姉ちゃんのストーカーもといファンがたまに侵入して、お姉ちゃん自作の不審者捕獲用罠にひっかかっていることがある)

 私の部屋に忍び込んで、私の個人情報を読み上げている不審者。

 ここは、警察に電話するべきではないのだろうか。もしくはお姉ちゃんに……いや、うん。大丈夫。不審者の一人ぐらい、お姉ちゃんの手を借りなくても、私一人でなんとかできる。はず!

 私はそろりと扉を開いて、自分の部屋の中に入った。

 部屋の内装は至ってシンプルだ。

 ぬいぐるみとかカーペットとか、必需ってほどでもない装飾品は一つとしてなく、ベッドと小さな丸テーブルとタンスと姿見、それと本棚が一つあるだけだ。

 姿見に私の姿が映りこむ。

 短めの黒髪。クマのある目つきの悪い目。ぶっきらぼうな表情。

 クラスの奴らから「私たちを馬鹿にしてるの?」「人を見下してて楽しい?」と殊更に言われる(実際馬鹿にしているし、見下している)目は、ニュースに出てくる犯罪者にそっくりだ。

 隠れれる場所は殆どない。

 さっきまで聞こえていた声は聞こえなくなっていた。私は、部屋の隅から隅までを探して回る。


 …………。

 誰もいない。

 見覚えのないものは……ある。

 ベッドの上に置かれているぬいぐるみだ。

 前述のとおり、私の部屋にはぬいぐるみの類は置かれていない。

 少ないながらもお小遣いは貰っている。貯金もしているから、買おうと思えば買えるんだけど、買ったことは一度もない。

 私が買っていいのかな。なんて思ったりもするのだ。

 だから今まで、欲しくても買ってはいなかったのだけど、どういうわけか、ベッドの上に置いてある。

 もしかして、お姉ちゃんからのプレゼント。とか?

 ぬいぐるみが欲しいと思っていたことは隠していたつもりだったけれども、もしかしたらバレていたのかもしれない。

 ぬいぐるみを手にとってみる。

 白いうさぎのぬいぐるみだ。

 丸っこい頭と体に、小さな手足。

 耳は少し短めで、頭の上には小さな王冠を被っている。

 例えるなら「雪だるまのうさぎ」といった感じである。

 触り心地はとても柔らかい。ついつい触ってしまう。

 ふに。

 ふにふにふに。

 ふにふにふにふにふにふに。


「えへへへへ……」

 ふにふにふにふにぐにっ!

「ぐえっ!」

「うわっ!」

 腹の位置に指がずぼっとはまった瞬間、ぬいぐるみはぐもった声をもらした。

 さっきの、知らない声――幼稚園男児のような声だった。


「こ、高性能内臓スピーカー!?」

「どうしたの花ちゃん。急に大声をあげて」

 叫んで驚いていると、お姉ちゃんがやってきた。

 扉は開けっ放しだったのに、律儀にノックをした・

 落ち着きのある地味な色合いの部屋着の上に白いエプロンを着ていて、なんだかもう「お母さん」って感じだった。

 お母さんが若いころはこんな感じだったのかもしれない。

 私は放り投げたぬいぐるみを指さす。


「あれ買ったのお姉ちゃん!?」

 お姉ちゃんはぬいぐるみを見て、不思議そうに小首を傾げた。

「知らないけど……お小遣いためて買ったの?」

「部屋に戻ってみたらあったんだ。だからてっきりお姉ちゃんが買ってきたのかなって……これ、内臓スピーカーで喋るみたいだよ」

「へえ、おもしろーい」

「はは。内臓スピーカー? そんなものじゃあないよ」

 ベッドの上に倒れていたぬいぐるみは、その短い手で体を起こしながら言った。

 その口は声に合わせて動いていた──否、その声は確かに動いている口から発せられていた。


「こ――高性能ロボット!」

「花ちゃん。違うと思う……」

 少し呆れたような声を漏らしたお姉ちゃんは、私の隣を横切ってぬいぐるみの前に座り込んだ。


「はじめまして。私は笛吹りす。あっちにいるのは花ちゃん。私の妹」

 話すぬいぐるみに自己紹介を始めた。

 え、え。もっと他にないの? 驚くとか悲鳴をあげるとかそういうのはないの?

 どうしてそんな普通のことのように受け入れてるの?


「どういう原理かは分からないけど、話すことができて意思があるのは事実だからね。挨拶して、コミュニケーションを取った方がいいと、私は考えただけだよ」

 確かにそうかもしれないけど、でもやっぱりその状況適応能力の高さはおかしいよお姉ちゃん……。


「それに、もし仮にこれが中にスピーカーが搭載された爆弾だったとしても、これぐらいの大きさの爆発ぐらいなら回避できるし」

「確かに」

「納得しちゃうんだ!?」

 ぬいぐるみは驚いたように声を荒げた。

 納得しちゃうんだもなにも、お姉ちゃんは二年ぐらい前に爆弾処理をしたこともある。

 ショッピングセンターに仕掛けられた五つの爆弾を解除して、どうしても制限時間以内に解除できそうになかった最後の爆弾は人がいない場所まで向かって爆破したという逸話がある。爆風の中から咳をしながらでてきたお姉ちゃんを見ている人たちの「この人は実はフィクションの存在なのではなかろうか」という呆然とした姿には私自身、同意をせざるを得なかった。でもお姉ちゃんだから。


「さ、さすがだね。笛吹りす。笛吹花の情報の中に『数多の才能を(やれば)持った努力家(できる子)』とされているだけある」

「あはは。そうでもないよ。私のできることなんて、誰だってできることだから」

「一つ一つはね。でも、それを沢山できるから、異常なのさ」

 だからこそ、きみは選ばれなかった。素質があるゆえに、素質がなかった。とぬいぐるみは言った。

 お姉ちゃんが、選ばれなかった?

 なにを。なんのことを言っているんだこのぬいぐるみは。

 お姉ちゃんに素質がないものなんて、あるはずがないじゃあないか。

 でも、それがもしあったとしたら、それなら、私でも勝つことができるのだろうか……?


「それに、高校生の時点でこんな大きな家を管理して、中学生ひとりを育てることができている時点で、充分すごいよ。謙遜すべきではないぐらいに」

「この家はお父さんとお母さんとの思い出だしね。まあ、でも花ちゃんには不自由で不十分で不都合だらけの生活をさせちゃってるけどねえ」

 お姉ちゃんは少し恥ずかしそうに、申し訳なさそうに頭をかいた。

 そんなことはない。私は今の生活に充分に満足している。私がなにかをねだらないのは、なにか欲しいものがあるわけでもないからだ。

 そう言おうとした。言いよどんだ。

 そうしている間に、ぬいぐるみが口を開いた。


「確かに不都合は発生しているね。この家の環境を知っている子から悪口を言われたり、それが原因でケンカをしたりしているよねいたいいたいいたいいたい目が痛い! ぬいぐるみ特有のくりっとした目が痛いいぃぃ!!」

 ぬいぐるみだから痛くないだろうに。硬いぞそのくりっとした目。

 秘密にしていることをさらっと暴露しようとしやがったぬいぐるみに、私は咄嗟に飛びかかった。

 しかし、考えてみれば。この慌てようはむしろぬいぐるみが言ったことを事実だと認めているようにも見える。

 そのことに気づいたときは時すでに遅く、お姉ちゃんは私の両肩を掴むと、ぐわんぐわんと体を揺らした。


「今の話、本当?」

「うそ」

「鼻血はもしかして?」

「人とぶつかったの」

「さっきと言ってること違うけど?」

「あれ?」

「突発的な嘘の内容って、嘘をついた本人は覚えていなかったりするよねー」

 ぬいぐるみは宙に浮きながら、口の前に両手を添えてぷぷぷーと笑った。

 浮いてるっ!?

 驚いた。まさかこの高性能ぬいぐるみ。飛ぶこともできるのか。エンジン音は聞こえない。ドローンみたいなものなのだろうか。しかしプロペラは見当たらない。


「ねえ、花ちゃん。鼻のケガは結局なにが理由なの? 本当に、大丈夫なの?」

「そ、そんなことよりっ!」

 お姉ちゃんの顔が、鼻先同士がぶつかるぐらいに近づいてくる。

 とことん追求する気満々っていう感じだ。

 私は慌てて、話をそらすべく、お姉ちゃんの後ろでふわふわと浮いているぬいぐるみを指さした。


「あいつ! あいつがなんなのかを調べる方が先だと思うんだけど!」

「ん。あいつとは失礼だね。僕にだって名前のひとつやふたつ」

 ぬいぐるみは小さな手を腰にあてて、不服そうに言う。


「僕の名前はテーテポット・マーガリン。テーテでいいよ」

 えっへん。と胸を張る。

 どうして名乗るだけでそんなに偉そうにできるのだろうか。


「テーテポット」

「テーテでいいよ」

「マーガリン」

「テーテだって」

「テーテポット・マーガリン」

「待って。どうして頑なにテーテって言わないの?」

「自分で自分のニックネームを決めている奴って、私嫌いだから」

「おお。すごく友達がいなさそうな発言。実際友達いないらしいけど」

「それはともかく」

 お姉ちゃんからの追求から逃れるべく、私はテーテ(仕方ない。そう呼んでやろう。感謝するがいい)との話を矢継ぎ早に進める。

 無論、お姉ちゃんは私の浅知恵には気づいてはいるようで、私の顔をじろりと睨んでいる。うう、冷や汗が。


「それで、テーテ」

 それでも気づいていないふりをして、話を続ける。

「あんたがロボットか生き物かどうかはこの際置いておくとして」

「使い魔だよ。マスコットキャラクターといってもいいね」

「……この際置いといて!」

 これに一々反応するのも面倒くさい。


「なにをしに、ここに来たの?」

「あれ、言ってなかったっけ?」

「聞いてない」

「そうだった。それじゃあ」

 びしっと。

 テーテは私の顔を小さな手で指さしながら、こう言った。


「笛吹花。魔法少女になってみないかい?」

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