第一話 やめ時を知りたい
学園編と銘打ってみたけれども、私自身、進んで人に話しかけるような性格ではないし、むしろ距離をとるタイプであったからか、二人が転校してからおおよそ一週間は、話すことも進展することも生活が変化することもなかった。
あるとすれば、委員長に露出癖疑惑がついたことと、脱げば凄い疑惑がついたぐらいだ。
ロングロングフィールド――怒鳴夢とコスプレィヤは、見事クラスに混じることには成功したが、やはり、魔法少女に選ばれるような性格をしているだけあって、クラスの中心グループに所属している。
え、魔法少女は教室の端っこにいるような性格ではないか? グループにも入ることもできず、はぐれ者扱いになるのではないか? だって?
まあ確かに。間違ってはない。
でも二人は、性格に難あれども、見た目はいい。
健康的に日に焼けたスポーティー美少女に、西洋人形のような可愛らしい美少女。
話しかけられないはずがなく、肯定的に受け止められないはずがなく。
二人の奇異な発言の数々は「面白ーい」の一言で済まされた。逆に受けてる。やはり人間は中身ではなく外見だ。私があんな発言したら絶対「きもっ」で済まされる。
委員長と怒鳴は二人でよく口喧嘩をしているのを見かける。
ルールを守ることを重んじて、人の評価を気にするタイプの委員長と、ルールを守ることを理解せずに、人の評価を気にしないタイプであろう怒鳴は相性がすこぶる悪いのだと思う。
それでも無視して放置しない辺り、委員長が怒鳴のことを「自分の評価をあげるための存在」として認知しているからだろう。
私としては、委員長からの猛攻が減ったからありがたいばかりである。
その代わりなのか、もう一人の転校生、コスプレィヤがしきりに話しかけてくるようになった。
正直、クラスの中心グループに入っているあんたが、教室の端っこで寝たふりをしている私に離しかけてくんな。という気持ちで一杯なのだが。中心グループの声が痛い。視線が痛い。
あの子暗いからさ、話しても面白くないし、コスプレィヤさんが話しかけても無視しているようなやつだから、話しかける必要ないと思うよ? なんていう陰口が痛い。
しかしそれは間違ってはいないので、私も積極的に無視をし続けていると、一週間もしないうちに話しかけてくることはなくなった。
私は人と仲良くすることが苦手なんだ。
仲良くしないことに、孤高であることにカッコいいと思っているわけではない。私の場合は孤低である。そんな言葉があるのかは知らないけど。
人との会話はうまくいかないし、人との関係を維持し続ける労力というのもない。
うまくいかないのだから、できないのだから、しない。
別にいいだろう。中学校での関係なんて、小学校での関係ぐらい希薄で、クラスが変われば話さなくなる程度のものだし、学校を卒業してしまえば、殆ど、会わなくなるようなものなのだから。
そんなわけで一週間が経過した。
授業と授業の間の五分休憩。
特にやることもすることもしたいこともない私は、いつも通り机に突っ伏して、軽い睡眠をとっていた。ちゃんと寝ていたよ。周りに聞き耳たてて、寝たふりをしていたわけではないからね。
そういうことを繰り返しているうちに、五分休憩の間にきちんと目が覚めるようになった。
目を覚まして顔をあげると、委員長が腕を組んで私の前に立っていた。
……なにごと?
「笛吹さん」
にこり。と委員長は優しく朗らかに笑った。
明らかに外向けの、人向けの良い笑みに、委員長の性格を知っている私は、思わずうへえ。と舌を垂らした。
「なに。委員長。今日はまだ、怒られるようなことは一切していないはずだけど」
「学校生活において、人と仲良くしようという素振りすらみせないのは、怒られるに値する行為だよ。笛吹さん」
バチバチバチ。と私と委員長の目の間で火花が散る。
怒鳴をよく説教しているから、てっきり私のことを放置してくれるのかと思っていたけれども、どうやら、説教する相手が増えただけであって、前の分を放置する。ということではないらしい。
むしろ説教する相手が増えて嬉しいとすら思っていそうだ。私としては、一人に集中して貰っても大丈夫なんだけど。
「それで、なんの用? 怒られること以外なら聞くけど」
「魔法少女について」
委員長は私の耳の横に顔を近づけると、誰にも聞こえないぐらい小さな声で言った。
彼女の制服からは制汗剤の匂いがした。
「それ以外に、あんたに怒る以外に言うことはなにもないでしょ」
***
放課後、使われていない教室に女の子が四人集まれば日常萌え四コマである。
いや、ちょっと待てよ。
日常萌え四コマ漫画にでてくるのは、基本的に女の子ばかりであり、更に言えば全員がきららキラキラした美少女であることは間違っていないはずだ。
おっと、私としたことが失念していた。それでは、私が呼ばれた通りに集合するというのは、間違っているのではないのだろうか。
私に四コマレイアウトの中は、相応しくない。
いやあ、参った。参った。
実直と素直の具現化とすら言われて久しい私にしてみれば、断腸の思いではあるけれども――断盲腸の思いではあるけれども、今回の約束は破らせてもらうことにしよう。
私パース。ギブアーップ。私萌え四コマに入れる器でも見た目でもないから、家に帰りまーす。
そそくさと、自分の立場を弁えて、さっさと逃げようと帰りの会が終わり次第、家に帰ろうとしたのだけれども――担任が通達を終え、クラスメイトたちが帰ろうと動き出したその頃には――既に委員長は私の席の前にやってきた。
「……委員長ってさ、瞬間移動の魔法とか使えたっけ?」
「あんたがさっさと逃げようとしていることぐらいすぐ分かるっての。『へっへ、うまい言い訳が思いついてしまったぜ』みたいな悪い笑顔をずっとしていた癖に」
「ごめん、委員長。盲腸が痛いから家に帰るね!」
「そんな指先をちょっと切っちゃったみたいなノリで動けてたまるか」
回収。連行。収監。
ずるずると引きずられるようにして、私はとある教室の中に投げ捨てられた。
使われていない机とか椅子とかが、乱雑に適当に並べられ、積み重なっている空き教室で、今は、その机や椅子は教室の壁際に追いやられて、理路整然と、ぴしりと綺麗に整頓されている。
教室の真ん中には机が四つだけ、四角形になるように並べられている。
先客の二人が教室の真ん中の机に座っている。
言うまでもなく、語るまでもなく、魔法少女と元魔法少女。
コスプレィヤと怒鳴夢だった。
ぽいと空き教室の中に投げ込まれる。背後でなにかが閉じる音がした。
教室のドアには廊下側に鍵穴のある鍵がある。それを後ろ手で閉じた委員長は、尻もちをついたままの私を見下ろしている。
「わざわざ閉めなくてもいいのに。ここまで来たらもう逃げないって。閉塞感と信用のなさで、胃がキリキリしちゃうよ」
「あんたが閉塞感なんてことを気にできるほど繊細ではないことぐらい分かってるし、使用のされてなさなんて、今に始まったころじゃあないでしょう」
委員長は怒鳴とコスプレィヤが座っている席の方を、あごで指す。
早く座れと。
仕方なく、仕方なしに。私は机の方に移動する。
怒鳴は私のことなんて興味がない。と言わんばかりに、スマホをいじっていたが、目の前まで近づくと、ようやく、私の存在に気づいたみたいで、スマホを下ろして私の顔を見る。
足を机の上に組みながら置いて、椅子は後ろの脚日本だけでバランスを取るようにして座っている。
おお、不良不良。
ギラギラとした、まるでノコギリのような、ギザギザの歯を見せびらかすようににぃっと笑う。
小麦色の肌と、虫歯一つない真っ白い歯のコントラストが実に見事だ。見事すぎて、私と違う人種すぎて生きるのもつらい。
私は怒鳴から目をそらして、コスプレィヤの方を見る。彼女はスマホをいじることもなく、私の方をずっと見ていた。キラキラした目だ。私が来たことがとても嬉しいのだろう。なぜ嬉しいのかさっぱり分からなくて、普通につらい。
二人は向かい合うように席に座っていて、残る席はコスプレィヤの隣か、怒鳴の隣かである。
ええ、どっちか選ばないとダメ? 正直、どっちもどっちで嫌なんだけど……。
暫く逡巡してから、私はコスプレィヤの方を見てため息をついた。そして、彼女の背後にある窓をカラリと開くと、外に飛びだして、足首を掴まれて学校の壁に顔面を叩きつけた。
「いっだあああああ!!」
「ハナ、逃げるのはダメですよ。それに、三階から飛び降りるのは危ないです」
ひりひりする鼻を両手でさすりながら、私の脚を掴んで宙ぶらりんにしているコスプレィヤを睨んだ。
「だからって! 足を急に掴むことはないじゃん!!」
「落ちたらもっと痛いですよ」
「変身すれば、それぐらい痛くも痒くもないし」
というかだ。
ぷらんぷらんと宙吊りで逆さ吊りの状態のまま、私は首を持ち上げて、コスプレィヤの手を見た。
私の右脚の足首を、片手で掴んでいる。
私よりもコスプレィヤの方が背丈は高いとはいえ、それでも、同学年の女子を、女子の頼りない腕力で持ち上げることはできるのだろうか。まさか、細いように見えて実は筋肉質なスポーツマンだったりするのだろうか。ニ十キロのダンベルを軽々と持ち上げれる?
「それは私でも無理ですよ」
「でも持ち上げてんじゃん。40.2キロのダンベル持ち上げてるじゃん」
「ハナが考えたことと同じですよ」
「私が考えたことと?」
「変身しているんですよ。魔法少女に」
魔法少女に? なにを言っているんだ。
とも思ったけれども、しかし、よくよく考えてみれば、こいつは初めて会った時からずっと、この姿だった。
魔法少女に変身するときは、見た目も変わる。
姿形も、別人になる。
だからコスプレィヤの――この金髪碧眼の姿は、彼女の本来の姿ではない。
それなのに私は、彼女のこの姿しか見たことがない。
つまり、彼女は今も、魔法少女に変身したまま。ということだ。
まあ。
よくよく考えてみれば、『私以外の何者かになりたい』コスプレィヤにとって、変身魔法は、手軽に『私以外』になれる願ってもいない魔法なんだから、ずっと使っていても当然なのかもしれないけれども。あれ、ともすると、コスプレィヤ、究極魔法を目指す理由ないじゃん。やった、ライバル減った! 私に魔法力全てよこせ!
「見た目だけじゃあ私が消えないことは分かっています。だから、究極魔法で全てを消すんです。私全てをどこまでも。前にも言いました。ハナ、忘れてたんですか?」
「ぶっちゃけ忘れてた」
「酷いです」
「他人にはすこぶる興味がないし」
「本音を隠さず言えば全て清々しく許されるというわけではありませんよ?」
まあ。でも。とコスプレィヤはにこりと笑った。
「私に興味のない人の方が、私はとても嬉しいのですが」
「コスプレィヤの正体気になるなー素顔超気になる! 笑わないから写真撮って送ってみてよ!」
「ハナ、そんなに私のこと嫌いですか!?」
「興味がないし、正直あんまり話そうとは思わない。ところで、魔法少女に変身しているのに、どうして衣装は制服なの?」
「家で着替えました」
着替えれるんだ。脱げれるんだ。あれ。
それはともかく。
「早く持ち上げてくれない? 正直、スカートがひっくり返ってパンツ丸見えな状態で話すのは、私でもバカらしいということは分かるから」
どうしてスカートを掴んでパンツを隠そうとしないのかと言えば、なんか、人の目を意識しているみたいで、自意識過剰な感じがするから。同じ理由で私は、髪型を弄ったことは一度もないし、服を自分で選んで買ったこともない。
***
持ち上げられて、空き教室の中に戻った私は、殺意が含まれた――というか、殺意の中に目線が含まれているような、委員長の視線におどおどしながら席に座った。
コスプレィヤの隣である。
ここが一番、比較的、他と比べれば、精神的に楽な席だと思ったが、しかし、考えてみれば、残る最後の席――つまり目の前に委員長が座ることになるので、結局、心は休まらなかった。
問題児を見るような目で、一挙手一投足を見張っている。次逃げ出そうとしたら、指一本動かしただけで、腕を掴まれそうだ。
やっぱり、この会議に参加したのが間違いだったか。
嫌だよ。こんな空気がギスギスしている日常系萌え四コマ。
全然萌えられない。
私の目の前に座った委員長は、こほん。と一つセキをすると、私たちを一瞥して、さながら司会者であり、進行役であることを主張するように、真っ先に口を開いた。
「こうして四人集めたわけだけど、顔ぶれを見て、なにか思いつかない?」
「『元魔法少女』とか『転校生』とか『魔法少女』とか、キャラ被りが酷い」
「正解!」
「あんたがスペイン語知っていることに驚いたわ」
「……ああ、そうか。委員長。漫画読まないタイプか」
はて? と小首を傾げる委員長から私は視線を外してこの場にいる四人の顔を一瞥する。
そんなことを言われても、四人に共通することと言えば、クズであることと、魔法少女に関連することの二つぐらいだと思うんだけど。友達でもなんでもないから、詳しい情報は知らないけども。
「そう、それよ。笛吹さん」
「やだなあ、委員長。笛吹さんなんて他人行儀な。他人だと思ってるなら私この場からさっさと立ち去るね。いやあ、残念だなあ」
「待ちなさい笛吹ちゃん」
「やめろ、陰キャラに『ちゃん』づけをするな。自己嫌悪で死ぬ」
私の体は勝手に痙攣をおこしていた。拒絶反応ってやつか。
荒ぶる心臓を掴んで委員長を見る。
「分かりましたよ、長靴ちゃん。ながぐっちゃん。ながちん。ながなが。なーちゃん。ぐっちゃん。ぐっちん。話を聞こうじゃありませんか」
「……………………気持ち悪い」
委員長は机に突っ伏した。
だから人をちゃん付けするなと言ったんだ。
陰キャラはな、ニックネームとか名前呼びとかちゃん付けがキツいんだって。
「話したいことというのは、つまり、五人目の魔法少女についてよ」
復活した委員長は、話が脱線しないように、さっさと話を続けた。
五人目の魔法少女。
未だ詳細の分からない、最後の魔法少女。
それを聞いて、私ははて。と首を傾げる。
いやだって。五人目の魔法少女の正体を探ったところで、なにか意味があるの?
「もしかしたら、そこにいる怒鳴さんみたいなタイプかもしれないでしょ?」
委員長はちらりと怒鳴の方を見た。
怒鳴は話にもう飽きたのか、前髪をくるくるといじって、窓の外を眺めていた。
「怒鳴みたいな……魔法少女を襲う魔法少女である。ってこと?」
私は思わず怒鳴の方を見た。
いや、これ、話している内容的には怒鳴を否定している訳だし、それに怒った不良が襲いかかってきたらやだなあ。とか、そんなこと考えたりしたわけで。
私の視線に気づいたのか、不良、もとい怒鳴は窓の外から私の方へと視線をうつした。
「なんだよ、また私がお前らを襲うとでも考えてんのか? しねえよ、そんな無意味なこと」
魔法少女じゃあなくなったのだから、私の夢は二度と叶わない。
だからもう、どうでもいい。
怒鳴は幼稚園の頃の将来の夢を語るように、呟いた。
夢ではあったけども、今はどうでもいい。
たった一週間のことなのに。
「諦めるの、はやくない?」
「だったら、いつになったら、夢を諦めていいんだ?」
夢を追い続けれるほど人間の寿命は長くねえし。
夢を願い続けれるほど少女の時間は長くねえよ。
言いたいことはもう全部言ったのか、怒鳴は再びスマホの方に視線を動かした。話に混ざるつもりが皆無である。
まあ、こいつのことは苦手なので、それで構わないのだけど。
私は再び委員長の方を向く。
「私はまだ諦めてないからね。私がダメなら、あんたを利用するまでよ。あんたを利用して、私の価値を、私の評価を高めるまでよ」
「まあ、あんたはそういう性格だものね」
こいつの場合は、夢というよりは、野望っていう感じだし。
野望というか、欲望というか。
叶う叶わないでも、願う願わないでもなくて、達成しないといけない呪縛。
こいつもこいつで、大変だなあ。と、他人行儀に思うのだった。
「でも、別にあんたの願いを叶えるつもりは更々ないからね。私は」
「今はね。いつかあんたを改心させて、弱みを握って、性格を捻じ曲げて、心身を掌握して、私の願いを叶えることを至上としてやる」
「なんであんたの評価が高いのかが未だに分からないよ」
「そりゃもう、脳みそを弄りまわして」
「あっあっあっ」
まあ、冗談はともかく。と委員長は一つセキをする。冗談か、やっぱりね……そうだよね?
「それに、あんたが現状、一番究極魔法に近いと考えるのが妥当だし、当然でしょう」
魔法少女二人分の魔法力に、自身が集めた魔法力。
現状、一番魔法力を集めることに躍起になっている魔法少女。
それがどうやら、私のことらしいのである。
やったぜ。
「まあ、あんたが負けたら、五人目を利用するまでなんだけど」
「清々しいまでの策略家」
案外、こういうやつの方が夢を叶えることが出来るのかもしれない。
「でも、そもそも、私たち。五人目のことを全く知りませんよ?」
「私はコスプレィヤのことを全く知らない」
「私に知るだけの価値はありませんよ?」
いつもの流れをしつつ、しかしそこはコスプレィヤの言う通りだ。
五人目、五人目。と、まるで相手を知っているかのように話している私たちだけど、そもそも、相手が誰なのかを、さっぱり知らないのである。
私はバッグの中で両手首と両足を縄で縛って動けなくしてあるテーテを、バッグの中から取りだした。なぜ縛ってるのかと言えば、マスコットが倒されたら困るので、勝手に移動されないようにするためである。
「ねえ、テーテ。あんた本当に、他の魔法少女の情報を知らない?」
「知っていたとしても、こんな待遇で教えたりすると思うのかな!?」
「教えたら待遇良くなるよ。お姉ちゃんのケーキを食べ放題」
「五人目の正体は『雲賀流れる』だよ」
「やっぱ知ってんじゃあねえか」
「冗談冗談! ケーキが食べたくて嘘をつきました! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い縄が腹に食い込んで痛いいいいい!!」
「マスコットは魔法少女に魔法を提供するけど、こういう情報は知らないことばかりですよね」
「そりゃあお前、俺らは別に、マスコット同士情報を共有し合ってるわけじゃあないからな。あくまでも単体で行動だ。それともなんだ、人間は人間同士、情報を当たり前のように共有しているのか?」
「同じマスコット同士というよしみで、助けてくれたりしないんですかジェムペット!!」
「嫌だよ巻き込まれたくない」
縛りに縛ってチャーシューみたいになったテーテを片付けて、私は再び、委員長とコスプレィヤの方を向く。怒鳴はスマホをいじっている。委員長が眉間にしわをよせて、机の上に置かれた足をはたいた。
「机の上に足を置くな。置くところじゃあないぐらい、幼稚園児だって知ってる。ルールを守って正しく生きろ。当然のことでしょう」
「……私、あんたみたいなの嫌いだ」
「私もあんたみたいなのは嫌いよ。だからこそ、改心させてやるって言ってんの」
「もしかしてお前の願いって『自分の評価向上』じゃあなくて『自分の嫌いを全消滅』じゃあねえの?」
「それだと正しくないし、なにより評価が上がらないからダメ」
「めんどくさい奴」
「私だってそれは知ってる」
ふん。と二人はそっぽを向いた。
やはり、水と油。
ともかく。と委員長は怒気を軽く含んだ口調で話を再開させる。
「私たちは五人目について知らないといけない。だから、私たちは協力して相手を捜索するべきだと――」
「あら」
と、声。
知らない声。
四人の声ではなくて――五人目の声。
「気が合いますね。私も、あなた達のことを知りたいと思っていた頃なんですよ」
声のする方。四つの机の丁度真ん中を、私たちは見た。
果たしてそこには――紫色の妖精が立っていた。
「初めまして。こんな姿で失礼します。私、魔法少女『幸せも悲しみも半分こ』というものです」




