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プロローグ 私の苦手なモノ

 我ながら恥ずかしい話なんだけれども、私こと笛吹ふぶきはなは、生涯一度もテストで百点をとったことがない。

 そんな風に言うと、人は「いやいやまさか、そんなはずはない。どんなに馬鹿でも小学校の頃ぐらいなら百点をとったことはあるだろう」と言ってくるだろうけど、しかし、金曜の夜にやっている国民的アニメの主人公だって、小学生のくせに毎回テストはゼロ点ではないか。

 にわかに信じがたいとは思うけど、いるんだ。そういう出来損ないが。神様が人間つくるときに余っちゃったパーツを適当に組み合わせたみたいな奴が。

 勉強ダメ、運動ダメ、交友関係ダメ。

 ダメなところを探せば幾らでもポロポロと出てくるものだから、ダメなところをかき集めたら人の形になっただけの存在が私なのではないか。と最近よく考えている。

 そろそろ『どうしてもっとたくさん努力して皆を見返してやろうとか、そういうことを考えないのかい?』と尋ねられるだろうから、一応補足をしておこう。言い訳をしておこう。

 私は今まで、努力をして皆を見返そうなんて考えたことはない。

 それはまあ、単純な話。私が卑屈で根暗でやる気のない捻くれ人間だから。というのもあるのだけれども、もう一つ大きな理由がある。


 私には、一人の姉がいる。

 笛吹りす。

 疑いようもないほどに私のお姉ちゃんなのだが、しかし、私と違ってお姉ちゃんは、テストで百点満点以外をとったことがない。

 もしもお姉ちゃんが百点以外を取ることがあったならば、それはテストの方が間違っている。

 『才色兼備』『容姿端麗』『天才』という言葉をパソコンで検索をかけたなら、まず真っ先に『もしかして:笛吹りす』と出てくるような異常っぷりの現在高校三年生のお姉ちゃんは、世界大学学術ランキング上位の大学全てから無償での入学を提案されていて、ほぼ毎日学校長からラブコールが飛んでくるほどだ。

 『出来損ない』『搾りかす』『無能』を検索にかけたら『もしかして:笛吹花』と出てきそうな私とは大違いだ。私にはラブコールは来ないけど、どこの高校を受験してもまず不合格だろうね。という先生の現実的な言葉は来ている。

 そんなお姉ちゃんを――毎日欠かさず凄まじい努力をして、自分の持っている才能を一つも欠けることなく利用できるだけ利用しつくしている姉を、私は産まれたときからずっと見ているのだ。


 だから。

 努力すればいつか夢はかなう。とか、才能が全てである。という文言は信じられないのだ。


 いくら努力しても才能がなければ必ず壁にぶつかるし。

 才能があっても努力をしなければ必ず崖から落っこちる。

 お姉ちゃんの存在は、努力の肯定でも、才能の賛美でもなく。

 努力と才能。どっちもないとダメだよね。という、どうしようもない現実を証明している。

 そんな現実を目の前で見せられ続けたんだ。才能なんてない私が、努力なんて、できるはずがない。

 まあ、つまるところ。

 なにが言いたのかといえば。

 私は。

 お姉ちゃんに控えめながら劣等感を抱いていて、少なからず憎々しくも思っていて。

 努力とか才能とか、そういうものがすごく苦手で嫌いで。

 だからこそ。

 『魔法』なんてものに縋ったのだと思う。

 『魔法少女』なんてものになってしまったのだと思う。

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