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苦手な方はご注意ください。

PPAP※リンゴとパイナポーの淡い恋

作者: ほろるん

現代社会における高齢化社会の成れの果て、ネオオールドラブストーリーのはじまりはじまり

ビリーとおじいさん(PPAPシリーズ)


第一章

時は古きよき亜米利加、老夫婦の元に一通の手紙が届いた。

3年前に家を飛び出て行った、カウボーイで生計を立てているビリー・ジャックからだった。

「おばあさん、おじいちゃん、元気ですか」

「ビリーは元気です」

「昨今の不景気もなんとか乗り切り、豆まきの事業もやっと起動にのってきました」

「もしよければ、一度この大都会に遊びにきませんか」

「二人分の航空チケット同封します」

親愛なるビリーより。

手紙の隅には、彼女と思われる女子と一緒に写っているプリクラも貼っています。

婆さん、とんでビックリ!!

急いで農作業をしている爺さんの元に走って駆け寄り、手紙を渡す。

爺さん「ほぉ~、、、あいつ、彼女できたのか」

婆さん首を横に振り

「そこじゃないよ、あいつ遣りおった、青年実業家として遣り遂げおった~。」

といった表情をした。

さてはて爺さんと婆さんは、生まれて初めての飛行機に乗って、大都会へと旅立つのでした。



第二章

爺さん、噴水前のベンチに腰掛け休んでいます。

「戦士の休息じゃわい」

スズメがちゅんちゅんと爺さんの周りを取り囲んでいます。

「たけや~、さおざけ~」

「2本で千円です」

「10年前のお値段です」

ぼーっと春の陽気についウトウト

「ハッ!!!」

気付くと、なぁんと目の前に

ハイカラな着こなしをしたお嬢様が。

令嬢はクルクルと日傘を回しながら、ブロードウェイ方面から聞こえるニューミュージックに合わせ、手拍子をしているじゃありませんか。

爺さん、思わず目を擦り一言。

「な、、、何しているんじゃ、婆さん!!、、、惚れ直したわい」

「ところでその衣装は何処で?」

婆さん、ブロードウェイの方角をアゴで示す。

目の先には「貸衣装屋」

「なぁんじゃ、わしもタキシードの身を固めて、婆さんをチークタイムに誘うかのぉ」

爺さん、いきいきと貸衣装屋に向かう


10分後

爺さん、とぼとぼと貸衣装屋から出てくる。。

「わし、金持ってなかったわい」



第三章

大都会に疲れ果てた老夫婦

背中を押されてきたかのように、目の前に現れるは海に映える夕日。

爺さん、太陽に叫びたい気持ちを押し殺し、黙々と歩く。

婆さんも爺さんに続き、海岸越しをテクテクと歩む。

もうどのくらい歩いただろうか。

しばらく歩くと目の前に大きな旅客船が停泊していた。

ここで爺さん映画のワンシーンを、どうしてもしてみたくなった。

船の先端にて両手を広げる、例のアレである。

「わしゃ船乗りじゃ、デカプリオになるんじゃ」

爺さんに迷いはない。

婆さんも、爺さんの手を握り後に続く。

旅客船の入り口目の前あと一歩というところで、立ちはだかるべきベルボーイが現れた。

「チケットの拝見を」

「、、、」

「どうなされましたかな、男爵殿」

爺さん「なんだか最近、尿意が近くてのぉ、、ボウコウが爆発しそうじゃわい」

紳士的に話を進める爺さん

婆さんも貴婦人らしく、下を俯き気品に満ち溢れた笑みを浮かべながら、一連の流れを見守っている。

爺さんとベルボーイの交渉は続く。

その話術に見惚れる婆さん。

夕日に映える老夫婦とベルボーイの影。

小波の音色があたりを優しく包み込む。

どのくらい交渉をしていたのだろう。

そんな一連のやり取りを目視していた婆さん、爺さんの肩を叩き、無言で笑みを浮かべながら首を横に振った。

ベルボーイのお兄さんも、己の立場上この老夫婦の力になれないのがとてもやるおせないらしく、

「少しだけお待ちください」といい、千鳥足で船内に入って行った。


小一時間後

ベルボーイが戻ってきた。

お力にはなれないのですが、あなた方にコレをと支配人が。

渡されたものは船の先端から取られた夜景の綺麗に写っている一枚の写真だった。

婆さん、その写真を見ながらそっと目を閉じ、この上から見えるであろう景色を想像し空想に浸る。

そんな一人の女性が幸せに浸る姿を上の運転席から見下ろす支配人。

爺さん、ベルボーイの顔を無言で、情け眉毛な表情で見返し、夕日に溶ける海の方に目を向ける。

ベルボーイも夕日を見張る、そして支配人も。


あたりは、男として使命を遂げた者だけが得られる優越感を祝福するような海風が、優しく包み込んでいた。



第四章。

婆さん、よっぽど気に入ったのか先ほど支配人からもらった写真を眺めながら歩く。

爺さんも、婆さんの小幅にあわせゆっくりと緩やかな丘を上がっていく。

「はっ!!」

その時婆さん、気付く。

愛しいビリーから送られてきた地図がないことに。

せわしなくポケットの中、ウエストポーチの中を必死に探す婆さん。

爺さん、思わず「大事な写真は右手に持っているじゃろ」

爺さんの的確なアドバイスをまったく聞いていないのか、婆さんの白い肌がよりいっそう白さを増していった。

しばらく経って婆さん諦めたのか、爺さんに申し訳なさそうに目で訴える。

「ビリーの手紙、落とした。」と。

爺さんは婆さんを攻めなかった。

「いいんだよ!!」

婆さんは泣いた。落とした事への言い訳のため泣いているのではない。

爺さんの器量の偉大さへの涙だった。

丘の上まで行くと、はるか海の向こうに飛行場が見える、子供達の社交場というべき触れ合いと憩いのスペース、公園があった。



第5章

飛行機が飛びたち、飛行機が降り立つ。

どのくらいの時間を過ごしたのか。

夕日はとうに消え、夜空には満天な星空が顔を出した。

岡の下に広がる町並みの街灯。

優しげな夜風が昼の疲れを冷ます。

婆さんすっかり疲れ果てたのか、すやすやと爺さんの腕の中で眠りについていた。

夢の中へと消えてゆく桃源郷のような風景。

ずっとこの世界に浸っていたい気持ちを押し殺し、爺さんの重い口が開いた。

「婆さん、わしゃウソを付いていた。」

実は手紙は爺さんが差し出したものだった。

婆さんのウエストポーチから手紙を抜き取ったのも、爺さんだった。

「全部わしの作り話なんじゃ」

爺さんのつぶらなな瞳から大粒の涙が零れ落ちた。

「こうするほかなかったんじゃ、jl;あ:sj・@い;_;」

爺さんの顔はもうくしゃくしゃで、何を言っているのか聞き取るのも難しいくらいです。

そんな爺さんの心境をいたわってくれているのか、夜風はそよそよと老夫婦を包み込んでは、闇の中へと消えてゆくのでした。



第六章

婆さんの頭がどんどんおかしくなっていくのを、拒むのでなく素直に受け止めた結果だった。

親愛なる婆さんが喜ぶようにと。

ここは空気の悪い東京のど真ん中で亜米利加ではありません。

もちろんビリーではなく秀則という立派な名前がついています。

そして、老夫婦の息子はとっくに他界しました。

すべてにおいて、婆さんの世界をコバねるのでなく直球で受け止めた結果だったのです。

「これでいいんじゃわい」


爺さんの心は、この満天の星空、大宇宙に負けないくらい晴れ渡り澄みきっているのでした。



胸のトキメキは老若男女変わらないという事をこの作品で証明したのではないでしょうか。

少し哲学的に表現し過ぎた事が反省点です。

次回作は今流行りのラヴコメにチャレンジしますので楽しみに待っていて下さい。

ほろるん

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― 新着の感想 ―
[良い点] 情景描写が凄い 世界観に引き込まれる内容 今年読んだ中で一番良い [気になる点] 話が短すぎる [一言] 将来大物になる予感 是非、ライトノベルに挑戦して貰いたい
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