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レベルリセッター ~クリスと迷宮の秘密~  作者: ブロッコリーライオン
3章 飛躍 十歳冒険者見習い編
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64 暗殺者ワーズ

お待たせして申し訳ありません。

 暗殺者だと思われる男はゴブリンパーティーには目もくれず、どこかゆったりとした動きでジュリスさんがいる方向へと歩き出した。

 もしかすると僕達の視線と意識がゴブリンパーティーに集中するのを待っていたのかもしれない。


 ジュリスさんも暗殺者に気付かず、ゴブリンパーティーへと視線を向けているし、僕が見えてジュリスさんに見えないってことは、暗殺者の【隠密】のスキルレベルが高いというより、暗殺者の[固有スキル]だって考えるべきだろう……。

 暗殺者の狙いはたぶんジュリスさんが守っている扉の先へ行くことだと思うけど、どちらにしても暗殺者が扉へ向かう進路上にいるジュリスさんはとても危険な状態だってことになる。

 何で僕だけに暗殺者が見えるのかは分からないけど、今は暗殺者が見える僕が何とかするしかないんだ。

 そう思った時だった。

 久しぶりに頭にズキッっとした痛みが走ると、自分が今できるかもしれない最善の方法を閃いた。

 これがうまくいけば暗殺者もきっと捕らえられる。そんな確信があった。


 僕はいつもホーちゃんへ語り掛ける時に使用している【意思疎通】を念じながら、心の中でゴロリーさんに話し掛けてみたのだ。 

 すると驚いた表情をしてゴロリーさんがこちらへと視線を向けた。


 どれぐらいのことが伝わっているのかは分からない……だけどそれでも【意思疎通】で僕の声が少しは届いたのかもしれない。

 だからもう一度ゴロリーさんに、今度はもっと【意思疎通】を強く念じて、注意を引き付けてくれるように心の中でお願いしてみた。

 するとゴロリーさんが微かに頷き、声を上げた。

「シュナイデル、そちらのゴブリンパーティーは任せるぞ。こちらのゴブリンパーティーは俺が倒そう」

「分かりました。よろしくお願いします」

 左の通路から現れたゴブリンパーティーをシュナイデルさんが対応して、右通路から来たゴブリンパーティーをゴロリーさんが対応するみたいだ。


「ジュリス、暗殺者がまだこの階層にいるなら、この隙をついてくる可能性が高い。その場で暗殺者を【索敵】して警戒しておくんだ」 

「ゴロリーさん、それは名案ですね。隊長、私の分までキリキリ働いてください」

「ジュリス、作戦が終わったら覚えていろ!」

「奢ってくれるんですね。ありがとう御座います」

「くっ、暗殺者を捕まえることが出来たらの話だからな」

「おおっ。やる気が出てきました」

「何故最初からやる気がないのだ」

 良かった。 シュナイデルさんとジュリスさんがいつもの雰囲気に戻ってくれた。 

 しかし僕が安心したのもつかの間、暗殺者はゴロリーさんに狙いを見透かされたからなのか、ジュリスさんの方向へ歩くのを止めた暗殺者は忌々しそうな顔をしながらゴロリーさんを睨みつけて、懐からか短剣を取り出した次の瞬間――。


「なっ!?」

 驚愕の声とともに暗殺者の短剣で暗・殺・者・の鮮血が飛び散った。

 もちろん驚愕の声を上げたのも暗殺者だった。

 そして暗殺者を攻撃したのは僕だった。


 ゴロリーさんが大きな声で指示を出して注意を引き付けてもらっている隙に、僕は闇魔法の【シャドウ】を発動、さらに【隠密】【魔力遮断】【気配遮断】を念じて暗殺者から存在感を消した。

 そしてもしもの時の為に、シュナイデルさんの足元に転がった短剣を拾い上げていた。

 暗殺者が短剣を取り出すのを見て、このままだと不味いと感じた僕は、拾っていた暗殺者の短剣を暗殺者の太ももを狙い投擲したのだ。

 短剣は太ももの中心からは外れてしまったものの、確実にダメージを与えたことに間違いはなかった。


 しかしそれでも暗殺者の姿は見えないままらしく、ジュリスさんは声のした方向を警戒するだけに止とどまったままだった。

 するとジュリスさんは僕の名前は呼ばずに、まるで他の騎士と話すように声を上げる。

「暗殺者はこの場にいる。見えているならもう一度攻撃するのよ」

 でもジュリスさんの声に反応したのは僕だけではなかった。


 暗殺者は僕のことが既に見えているらしく、こちらへ向けて短剣を投擲する動作に入っていた。

 ただ助かったことに僕と暗殺者には距離があり、短剣を投擲しようとしている姿がしっかりと見えているので、短剣を盾で弾くことだけに【集中】するだけで良かった。

 カァンと高い音が短剣を弾いた音が迷宮に響く。

 すると驚くことに暗殺者は少しずつ動きながら、僕に話し掛けてきた。


「お前にはやっぱり俺の姿が見えているんだな。その小さい背丈に顔を隠すようなローブを纏っているってことは“レッドクロウ”の報告に合った冒険者か?」

「……」

 フードを目深に被っていて良かった。

 もしフードがなかったら、きっと動揺してしまったのがバレてしまうところだった。

 暗殺者は僕だけしか見えていないことが分かっているのか、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。

 僕は剣と盾を構えていつでも動けるように準備に入る。


 暗殺者との距離が五メートル程になり、ようやく暗殺者がその足を止めると、まるで世間話をするように話し掛けてくる。

「その身長で騎士達と一緒にいるってことはドワーフやハーフリングの冒険者なんだろ?」

「……」

「人族が多いこの街で亜人種は暮らしにくいだろ?」

「……」

 グランさん達も鉄が入手しにくい時期はあったけど、暮らしにくいということを聞いたことがなかったので少し首を傾げた。

 すると反応があったからなのか、暗殺者は笑みを浮かべながらさらに語り掛けてくる。

「今回だって人族だけにしかなれない騎士様の肉壁要員として雇われているんだろ?」

「……」

 僕が首を振ると、今度は小声で話し掛けてくる。

「あ~騎士がいるから話せないか。別に今はあんたと戦おうとは思っていない。ただ今回は見逃してくれるだけでいい。そうすれば旨味のある話を回すぜ」

「……」

 僕は首を傾げた。


「今とある中堅冒険者と冒険者ギルドの受付嬢と組んで金儲けをしているんだ」

 やっぱり冒険者と冒険者ギルドの受付をしている人がやっぱりグルだったんだ。

 どおりで騎士団の耳に届くのが遅かったはずだよ。

 マリアンさんに冒険者が近づかなくなったのも、この暗殺者と中堅冒険者が噂を流したからだろうし許せない。

「……」

「俺の[固有スキル]が効かないってことはあんたも珍しいスキルを保有しているんだろ? “レッドクロウ”のことは許すから、あんた俺達の仲間になれよ」

 暗殺者が言った思い当たるスキルは【心眼】だけど、今は見える幸運に感謝して暗殺者に剣を向ける

 まさか暗殺者に誘われるとは思わなかったな……。


「剣の構えを解け……あ、そうだな。まずは金の話しあ先だったな。ここから逃げ出すことが出来たら、まずは金貨三枚払おう。あとの契約に関してはまた会った時でいいだろ?」 

「……」

 しかし僕は動かくことなく、剣を構え続ける。

「信用出来ないのか? それともこの場だけの約束だと思っているのか?」

「……」

 俺は肯定するように頷いた。


「なるほど、ただの馬鹿でもなさそうだ。俺の名はワーズ。まずは冒険者達に俺の名前を……」

 暗殺者は喋っている途中で、ゴッという鈍い音を残し、右通路からかなりの速度で飛来したゴブリンと一緒に吹っ飛んでいった。

 ゴブリンが飛来してきた右側の通路では、僕に見えるようにゴロリーさんが拳を高々と上げてから、残りのゴブリンパーティーとの戦闘に戻った。


 そして吹っ飛んだ影響なのか、それとも暗殺者が気絶してしまったのか、暗殺者の姿を消す[固有スキル]は解除されたらしく、ジュリスさんが暗殺者を捕縛するために動き出したので、僕も【シークレットスペース】からロープを取り出し、警戒しながら暗殺者の元へと向かった。


 その後、直ぐにゴブリンパーティーを殲滅したゴロリーさんとシュナイデルさんが合流し、やはり気を失っていた暗殺者をロープでぐるぐる巻きにしている途中で、騎士さん達とも合流することが出来た。

 暗殺者を捕まえた僕達は直ぐに迷宮から脱出するべく、一階層へと向かうことになった。


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