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33 スラムの三人組

 カラーエッグを拾ってから一ヶ月。

 今では僕が食事をする前に【魔力操作】で魔力をカラーエッグへ分け与えることが日課になっている。


 エリザさんが言うには、魔力を与え続けると親和性といって、生まれてくる魔物と最初から仲良くなれる可能性が高くなると教えてくれたのだ。

 その話を聞いた僕は【魔力操作】で魔力をたくさんあげようとして、エリザさんに注意……助言を受けることになった。


「魔力をあげるのはいいけど、あげ過ぎるとまた倒れて、今度こそ身長が大変なことに……」

 その話を聞いてから、僕はエリザさんに魔力のあげ方をしっかりと学ぶことになった……と言っても難しいことではなかった。



【魔力操作】で手元に魔力を移動させて、卵も自分の身体の一部だと思いながら、魔力を少しずつ通す、そんなイメージを持つだけだった。

 最初は全く魔力が減っていく感じはなかったけど、毎日毎食前に魔力をあげていくと、徐々にカラーエッグは魔力を吸ってくれるようになっていった。


 僕は魔法訓練以外で魔力を使うのは【魔力操作】と【魔力循環】の時だけだから、魔力枯渇だけはしないように魔力をカラーエッグにあげていく。

 だからなのか、カラーエッグに魔力をたっぷりあげると、僕はとてもお腹が空いて、今まで以上に食事をいっぱい食べるようになってしまった。


 でも、ゴロリーさんやエリザさんは僕がたくさん食べることが嬉しいみたいで、いつも多めに料理を用意してくれている。

 そんな二人に感謝しながら、未だに【意思疎通】出来ていないカラーエッグが早く成長して、いつかは会話が出来るようになる事を僕は楽しみにしている。


 ……会話が出来なくても、僕の魔力を吸って、ちゃんと生まれてくれれば、それだけでとっても嬉しいだろうなぁ。

 僕はカラーエッグを撫でてから、シークレットスペースへと【収容】した。


 迷宮にいても、今までよりも寂しくないのはきっとこのカラーエッグのおかげだと思う。

 僕はおかしくなってクスッと笑ってから、今日も【意思疎通】に反応してくれないスライムを倒し始めるのだった。



 レベル十を対価としてスキルと交換出来る[固有スキル]エクスチェンジにより、僕はゴロリーさんとエリザさんが勧めてくれたスキルを全て交換し終えているため、今はレベルを三十一まで上げることを目標にしている。

 レベル二十と交換出来るスキルもそこそこ多いのだけれど、そこまでお勧めのスキルがないというのがゴロリーさんとエリザさんの意見だったからだ。


 僕は五歳から六歳になる頃に一度風邪を引いてしまい、何日も熱が下がらない日が続いた。


 その時はエリザさんが看病してくれたんだけど、治ってからもエリザさんの許可が下りるまで、エクスチェンジの使用を禁止されてしまった。

 風邪を引いた時のレベルは十九で、エリザさんの許可が下りた時のレベルは三十手前だった。


 せっかく上げたレベルをリセットするなら、レベル三十と交換出来るスキルを知っておいた方がいいとのことで、三十一まで上げたのだった。

 あの時のことがなかったら、レベル三十一でエクスチェンジを使うことは、まだずっと先のことだったと思う。


 カラーエッグを拾った日から、僕は迷宮に泊まることが出来なくなっているから、今日でようやくレベルが二十五になったところだ。

 前までならレベル三十になっているかどうかだったけど、しょうがないよね。


 スライムを倒して魔石を回収して、そんなことを考えながら、次に交換するスキルのことを考えているといつものように(・・・・・・)スライムとは違う反応が頭に浮かんだ。

「今日も三人で来たんだね……」

 僕は慌てることなく、【隠密】【気配遮断】【魔力遮断】三つのスキルを念じて、三人組みの様子を窺う。


 そして迷宮へと入って来たのは、やっぱりスラムの三人だった。

 スラムの三人はあれから毎日迷宮に潜って来るようになっていて、初めてレベルが上がった日なんかは騒ぎ過ぎて、階段の上から見張りの人が来て“子供が迷宮に入るな”と怒鳴られていた。


 それでも三人は一日も休まないで、迷宮へと入り続けていた。

 最初に見た時はスライム二匹を倒すことでも精いっぱいだったのに、潜ってから十日を過ぎたあたりから、スライムを十匹も倒せるようになっていた。

 それでもそれ以上、決してスライムを倒す数は増やさず、二階層へと降りることもなかった。

 ゴロリーさんにそのことを伝えると“慎重で無理をせず、自分達の力を弁えたパーティーだな”そんな風に褒めていた。


 そんな三人は、既に百個以上のスライムを倒していた筈だけど、あのトーマスというリーダーを含めて、未だに誰も冒険者になれていなかった。

 理由はスラムで誰かに魔石を取られたとか言っていたけど、三人は毎日諦めることなく、スライムを倒している。


 僕はそんな三人の行動をずっと見ている。

 ゴロリーさんからバレないように様子を窺うことで、スキルのレベルが上がると教わったからだ。


 この一か月間、ずっと三人を見張り続けていたのと、スラムの人達から隠れるように生活をしていたら【隠密】【魔力遮断】【気配遮断】が上手くなったと、ゴロリーさんとエリザさんに褒めてもらえた。

 だから今日もこうして三人を見ていると、今戦ったスライムで、いつも倒している十匹を倒し終わったみたいだった。

 だけど三人は帰ろうとしなかった。


 そこへようやく話し声が聞こえてきた。

「それで本当に推薦者がいなくても冒険者になれるのかよトーマス?」

「ああ。しかもスライムの魔石は銅貨三枚の価値があるんだってよ」

「おいおい……それじゃあ俺達、銀貨を持っていても不思議じゃないぞ。くっそ~あいつら~」

 ゴロリーさんがお店に来る常連の冒険者達と新人冒険者については話をするって言ってたのを、うまく三人に聞かせていたみたいだ。

 本当に凄いと思いながら、僕は三人の声を聞く。

 その時にスライムが近寄って来ていないかを確認することも忘れない。


「でも、トーマス、それってどこからの情報だ? 当然ナルサスさんじゃないんだろ?」

「ああ。前に孤児院で炊き出ししていたあの怖い顔のジジィ……ほら、あの残飯の餓鬼の……」

「あ~、結局見つからなかったんだろ? まぁいいや、それで?」

「あのジジィと冒険者のグループで話していたんだ。ナルサスさんが冒険者のクズって言われてて、スラムの大人達と孤児から魔石を奪い取ってるって、しかも……冒険者登録には推薦なんていらないらしいぜ」

 トーマスの声は怒っているようには思えなかった。


「なんだよ。じゃあ俺達冒険者になれるってことか?」

「そういうことなのかよ、トーマス」

 二人は怒った様子でトーマスに説明を求めたけど、トーマスはとても冷静な声で、驚くことを口にした。


「ああ。だけど、盗みとかしている場合はその罰を受けないといけないんだってさ……それで相談だ。冒険者になるか、それともレベルを上げてスラムを乗っ取るか、決めようぜ」

「スラムを乗っ取るって、まさかワーズと戦うって言うのかよ」

「あいつは不味いよ。ナルサスさんの方が強いけど、ワーズは暗殺者じゃないか。俺はそれだったら冒険者になるよ」

「ああ、それに冒険者になってしまえば、この街から出ても暮らしていけるしな」

 トーマス以外の二人は冒険者を選ぶみたいだ。


「はぁ~二人ともワーズと戦う気がねぇ~のかよ……だったら、これからこのまま冒険者ギルドに行くぞ。ナルサスさんは……ナルサスはこの時間、冒険者ギルドにいないからな」

「「おう」」

「罰が辛くても泣き言を言うなよ」

「それはお前だろ」

「そうだよ。いつも愚痴ばっかり言っているだろ」

「じゃあまずはナルサスより強くなろうぜ」

「三人でめちゃくちゃ強くなったら、いつかはワーズを倒してやる」

 そんな会話をして三人は迷宮から出ていった。


 三人はとても楽しそうだったなぁ……。

 いつか僕もフェル……は騎士だから駄目だけど、新しい友達とあんな風に冒険者のパーティーを組めたらいいな。

 少し寂しくなりながらも、スライムを倒し続け、僕はお迎えを待つのだった。


お読みいただきありがとう御座います。


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