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何も変わらない世界
16歳の夏、双子の姉は死んだ。
「一緒に来る?」姉が言った最期の言葉だ。
自殺だった。ひとがひとり、死んだ。
それでも僕には次の日が来た。
姉は病気だった。
心の病気だった。
傷ついた手首を見ても、あの頃の僕は何も感じなかった。
姉が髪の毛を抜き始める。
姉の髪の毛がなくなった。
丸坊主になった姉を見て母親が涙を流す。
それでも僕は、何も感じることは無かった。
姉が嫌いだった。
姉も、僕のことが嫌いだった。
一年たった今、僕は姉と同じ病気にかかっている。
この病気は姉からの贈り物だ。
あの頃、姉がどれほど苦しかったか今ならわかる気がしている。