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序章

はじめまして。

文学は初めて挑戦します。


枝垂桜の薄桃色の花弁が、風に舞う風景が、今は凄く物悲しく感じる。

4月25日。

俺、ひいらぎ 龍櫻りゅうおう、の爺さんが、天に還ってから49日が経っていた。


今日は49日法要。

午前中のうちに、親族一同が爺さんの家に集合し、そして会食を含めた簡単な法要を行っている。それも、午後の早い段階で終わる。


正直な話、一族が一同に会して、亡くなった爺さんを弔う気持ちで溢れているのなら、俺は最後まで法要の場にいただろうが、爺さんが資産家であったがゆえに、今は、遺産分けで亡くなった人間のことをあげつらっている人間たちしかいない場に、居ようとも思わなかった。


だから、母屋のほかに離れを二棟、そして、蔵が一つある、広い爺さんの家の敷地の中、俺が幼いころからずっと好きだった場所に、俺は一人で佇んでいた。


蔵のそば、日当たりのいい場所にどっしりと根を下ろした枝垂桜の真下。

夏になれば柔らかな下草が生えて、最高に気持ちのいい昼寝の場所になる大切な場所。

今は、満開の花を咲かせて、風に揺れている。

時に、花弁を風に舞わせながら。


…りゅう…


風に、爺さんの言葉が重なる。


…蔵に入るといい…


ふぅ。

やっぱり、聞こえてくるんだな。


…りゅう。蔵で「ことだま」を拾うんだ…


俺は、簡単に言えば、草木の囁きを言葉として認識したり、死者の魂の言葉を聴いたりと、あまり他人にはいえない感覚を備えている。それは、常に聞こえるものでもなく、聞こうと思って聞こえるものではないから、俺自身、たまにそういう感覚があることを忘れそうになる。


ただ、今回は、100%聞こえるだろうとそう確信していた。


それは、この場所…枝垂桜の下…が俺にとっても、爺さんにとっても大切な場所だからだ。


まぁ、蔵に入れと言われるとは思ってなかったけれど。


「わかったよ、爺さん。見せたいものがあるんだろ?」

生前の爺さんが、

「お前が大学に合格したら、蔵に入ってもいいぞ。何でも見てもかまわんぞ。」

と、無邪気に笑っていた顔が鮮明に思い出せる。


大学合格の通知をもらったその日。

そんな大切な日に、突然爺さんは亡くなった。

でも、見ていたんだろうな。


「合格祝い、見せてもらうよ、爺さん。」


俺は、なぜか鍵が壊れていた2階建ての大きな蔵に足を踏み入れた。



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