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うたひめ  作者: 赤城康彦
4/9

うたひめ 4

「!!」

 驚きとともに、耳に触れるうたごえとピアノの旋律。

 それは疾駆する馬の蹄を思わせるように激しくたたきつけるように響き、うたごえも疾駆するようにはやく、激しかった。

  

Wer reitet so spat durch Nacht und Wind?

Es ist der Vater mit seinem Kind;

er hat den Knaben wohl in dem Arm,

er fast ihn sicher, er halt ihn warm.


風をつき 闇の

岸走る父と子

子を父はひしと

抱きしめ 温めつ


「シューベルトの魔王!」

 思わずクリスタルは叫んだ。そばでは、マーヴェルが眉をしかめ気まずそうに男の屍骸をながめている。まさか死ねと言ったとたんに、死んでしまうとは。さすがのマーヴェルとて、ほんとに人死にを期待するほどの悪人でもなかった。

 が、よもやうたひめは、一旦退いたと見せて実は自分たちの後をつけていたのか?

 が、かまわず耳に迫るうたごえとピアノの旋律。

 そして、コード。

 みるみるうちにその姿は曲名と同じ、禍々しい角と黒い蝙蝠の翼と蛇の尻尾を持った魔王の姿となり。その肩に、うたひめ。

「糞がッ!」

 リュウは駆け出し、クリスタルはうたひめ向けて銃弾を放った。

 マーヴェルやメンバーは、蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。

 

Mein Sohn, was birgst du so bang dein Gesicht?

Siehst, Vater, du den Erlkonig nicht?

den Erlenkonig mit Kron und Schweif?

Mein Sohn, es ist ein Nebelstreif.


子よ 何におののくや

見ずや 父 魔王を

いかめしき魔王を

子よ それは狭霧さぎり


 ピアノの旋律は、どこから持ち出したのかコードどもがグランドピアノを魔王の後ろでたくみに弾いているではないか。

 魔王の肩のうたひめは、赤い瞳を虚空にむけさも視線の先に魔王でもいるかのように、くうを震わすうたごえを響かす。

 クリスタルのはなった銃弾はうたひめに迫るも、背中の翼がこれを覆い隠し。

 コードのゴム片が飛び散る。

 その足元には、リュウが駆け刃を閃かす。

 鋭い爪をもった足がリュウに蹴りを繰り出す。が、リュウはそのまま駆け頭上にかかげたカタナの刃を振り下ろしながら悪魔の足に突っ込めば、銅線、グラスファイバーもあらわに足は真っ二つに割れてゆく。


Du liebes Kind, komm, geh mit mir!

gar schone Spiele spiel ich mit dir;

manch bunte Blumen sind an dem Strand,

meine Mutter hat manch gulden Gewand.


いとし子 来たれよ

われといざ遊ばん

岸辺には花咲き

わが母 よききぬを持てれば

 

 激しいピアノの旋律。うたひめのうたごえとともにくうを揺るがし、悪魔に魂をふきこむ。

 クリスタルは足を踏ん張り両手を突き出し、2丁拳銃で銃弾をはなちその銃声でうたごえとピアノの旋律を破り。リュウは勢いに乗って悪魔の股をくぐり抜け、もう一本の足を叩き斬ろうとするが。

 ピアノの旋律、うたひめのうたごえはやまず。


Mein Vater, mein Vater, und horest du nicht,

was Erlenkonig mir leise verspricht?


父よ 父よ 聞かずや

魔王のささやくをば


 あの黒いマリオネット同様悪魔も天上面からコードにて吊り下げられ、足が斬られようとも微動だにせず。 

 悪魔は背の翼でうたひめをかばい、じっと銃弾を受けゴム片、銅線とグラスファイバーの破片飛び散る。

 リュウは悪魔の股下をくぐり、もう片方の足のアキレス腱を斬ろうとするが、蛇の尾が咄嗟にリュウ目掛けて振り下ろされる。

 ええい! とリュウは回れ右しながら、勢いをつけて蛇の尾に向け刃を閃かせ、これをぶった斬る。

 うたひめは意に介さず、翼に隠れてうたう。

 

Sei ruhig, bleibe ruhig, mein Kind;

in durren Blattern sauselt der Wind.


わが子よ おののくなかれ

鳴るは 木の葉ずれよ


 マーヴェルは「死にたくねえ」とわめきながら、とうに視界に入らぬところまで逃げ。他のメンバーも、同じようにちりぢりばらばら。

 リュウとクリスタルは置いてけぼりをくらい、助太刀などなかった。それが、レジスタンスの戦い方だった。

「リュウ! 翼を狙って!」

 クリスタルは悪魔の右手方向へと駆けながら叫んだ。うたひめは翼にかくまわれて、銃弾を受け付けない。なら翼をどうにかするしかなかった。

「おうッ!」

 リュウも、心得た! と叩き斬った蛇の尾がコードの盛り合わせにかわるのをほっとき、悪魔の左手方向に回り込み、背の翼の根元を叩き斬ろうとする。 

 反対方向で、銃声がひびいた。

 銃声をくぐりぬけるように、響くうたごえとピアノ。


Willst, feiner Knabe, du mit mir gehn?

meine Tochter sollen dich warten schon;

meine Tochter fuhren den nachtlichen Reihn

und wiegen und tanzen und singen dich ein,

und wiegen und tanzen und singen dich ein.  


いとし子よ ゆかずや

わがむすめらは待ちたり

むすめら連れて舞い遊び

歌おもしろく とぎせん

歌おもしろく 伽せん


Mein Vater, mein Vater, und siehst du nicht dort

Erlkonigs Tochter am dustern Ort?


父よ 父よ 見ずや そこに

魔王のむすめらを


Mein Sohn, mein Sohn, ich seh es genau,

es scheinen die alten Weiden so grau.


子よ 子よ いまそこに

立つは古き柳ぞ


 悪魔は身も翼もまるめ。うたひめをかばう一方で、反撃も無く銃弾を受け。閃く刃には、翼よりのコード一本飛び出し、リュウの顔面に迫る。

「ええい!」

 忌々しくこれを斬りおとせば、まるまった悪魔の身、翼よりコードが湧き出すように一本一本うごめき、リュウとクリスタルに迫る。 

 

Ich liebe dich, mich reizt deine schone Gestalt,

und bist du nicht willig, so brauch ich Gewalt.


いとしや 世にうるわしき子

拒むとも われ連れゆかん


 うじゃうじゃと迫るコード。リュウは忌々しく斬りまくる。クリスタルは拳銃をもちかえ、トンファー代わりに振り回しコードをかわす。


Mein Vater, mein Vater, jetzt fast er mich an!

Erlkonig hat mir ein Leids getan!


父よ 父よ 守りてよ

魔王 われを捕らう


 ピアノの旋律一段と激しくたかまり、うたひめのこえにも一段と力がこもる。

「うるさいんだよッ!」

 リュウはコードをめった斬りにしながら悪魔に迫り、大きく振りかぶってカタナを悪魔に見舞い。

 クリスタルも拳銃をトンファー代わりにふりまわしてコードを叩いてかわし、悪魔に迫り。一瞬の隙をついて拳銃をもちかえ、銃弾をはなてば。

 刃閃くそばからコードはばらけ。銃弾炸裂し、破片弾ける。


Dem Vater grauset's, er reitet geschwind,

er halt in Armen das achzende Kind,

erreicht den Hof mit Muh und Not;

in seinen Armen das Kind war tot.


父 奮い ひたせぬ

悩める子を いだきつつ

家には いたりぬ

そが子はすでに死せり


 ピアノの旋律はぴたりとやみ、うたごえもやんだ。

 ぼろぼろになりつつも、悪魔はうたひめをかばいながら身をまるめていたが。そのまま、音も無くころがった。

 が、クリスタルとリュウは攻めの手をゆるめず。

 中からうたひめを引きずり出し始末せねばと、うたごえやんだ静けさを銃弾破り、刃は風を切る。


つづく・・・。

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