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うたひめ  作者: 赤城康彦
3/9

うたひめ 3

 レジスタンス。

 いつのころからか、うたひめの暴走がはじまり、それにあらがう者たちのことを、そう呼ぶようになった。

 うたひめは、人々の心をうるおし癒すアンドロイドであったのが、戦争がはじまってまもないころ、突如として暴走しはじめ。

 海底都市に配線されたコードを意のままに操り、破壊を繰り広げるようになった。

 無論、人もたくさん死んだ。

 なぜうたひめが暴走したのかは、わからない。

 故障なのか、ハッキングおよびクラッキングによる人為的なものなのか。

 憶測が飛び交うものの、それ以上に破壊の黒い影が跋扈した。

 人々は原因の究明よりも、うたひめと戦うことを強いられた。

 

 海底都市は半径250メートルのドーム形状。

 そこに、2000人もの人々が暮らしていた。

 限られたスペースを有効に使うため、ドームの天井面にまで伸びるタワーが林立し、そこに人々がひしめき合っていた。

 ドームは網目に組まれた鉄骨で形勢されそこに強化樹脂の殻を被せていた。

 ドーム、海底都市は、色は白を基調とし。LEDもふんだん使われ、暗い海底での生活に少しでも光りや明るさを組み入れるなど、工夫もこらされていた。

 戦争前、人々は海底都市を別名、白い竜宮城と呼んでいた。

 が、それも過去の話。

 今は、破壊と闇が海の水圧とともに海底都市に押し寄せていた。

 

「ここから逃げ出すってもよ、うたひめをなんとかせにゃあ話にならねえ」

 マーヴェルはアジトへ向かいながらひとりごちた。何度も何度も、つぶやいた。

 万が一のための脱出手段はもちろん用意されてはいるのだが、うたひめから逃げたり戦ったりするのに精一杯でなかなか海底都市から出ることはかなわなかった。

 うたひめもいやらしいもので、緊急用潜水艇などには、いっさい手をつけていない。

 隙を見て潜水艇に駆け込もうとする人もあったが、これことごとくうたひめのうたごえにつつまれながら、コードの餌食となり、そのシャレコウベは潜水艇への通路を飾るオブジェにされてしまった。

 だから誰も近づけない。

 逃げる手段を得るため、まずは、うたひめを始末せねばならない。

 が、かつて竜宮城とまで言われた近代的な海底都市は破壊が拡散し瓦礫ばかり。人も、500人近くにまで減った。

「うたひめって、えげつないわね。海底都市を崩そうと思えば崩せるのに。」

 クリスタルは網目の鉄骨の天上面をみあげてつぶやく。

 LEDが星空のようにぽつりぽつりと閃く天上面は海の水圧に耐えている。

「まあー、てめえもつぶれちまうからな」

 とリュウがこたえる。

 そのとうりなのかどうか。うたひめは、居住区は破壊しても支柱には手を出さない。

「皆殺しを楽しんでいるのさ」

 とマーヴェル。

 そっちの方が、一番近い答えに思えた。

 一体なぜ?

 わからない。

 が、戦わねばならない。

 誰だって、理由も無く抵抗し、殺されるのはいやなものだ。しかし、それが現実に問答無用に迫ってくる。

 

 しばらく歩けばアジトについた。

 アジトといっても鉄屑などを使ったほったて小屋だ。

 が、その中には刀鍛冶をするための設備、拳銃を整備・保持するための設備があった。

 うたひめの破壊からどうにか守り抜いている、最後の砦だ。

 棚には数振りのカタナ。数十丁の拳銃。

 白人の若い男が、棚の拳銃をチェックしていたがうっかり落としてしまった。

「ボケが! この、白が!」

 と怒鳴るマーヴェルの蹴りがその尻に飛んで、男は転んでしまった。

「おめえなんかうたひめに殺されちまえ!」

 首根っこを掴んで、ソーリーソーリーと謝る男をつまみ出す。

「あいかわらず短気だな」

 とリュウは呆れるように言った。マーヴェルは腕のたつ武器屋で、カタナの鍛冶、拳銃の組み立て・整備はお手の物だが、人柄はいいとは、ちょっと、言いがたい。

 他の人間たち、レジスタンスのメンバーは、まただ、と言いたげに事の成り行きを見守っている。

 クリスタルは拳銃をメンバーに手渡し、棚の拳銃を物色し。リュウもまた刃こぼれしたカタナをメンバーに渡し、刀掛けのカタナを物色する。

「けッ! あんな馬鹿な白のせいで、死ぬなんてごめんだからな。なら先に死ね、ってんだ」

 と言った途端。

「AAAAAHHHHHH!!!!!」

 という悲鳴が響く。

 すわや! とリュウとクリスタルは得物をつかんで掛けてみれば。

 さっきつまみ出された白人の男が血まみれでたおれて、死んでいる。

 その周囲には、コード。


つづく・・・。

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