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第8話:新たな食文化の創造!「洋食」と王宮晩餐会 -1

挿絵(By みてみん)



貧困地区での菓子パンの成功は、王宮内に花子の評価を確固たるものにした。


特に、エルウィンが「聖女フローラ殿の力は、未知の概念を具現化する新たな魔法の形である」と理論立てて説明したことで、花子への疑念は払拭され、彼女は真の「食の聖女」として認識され始めた。


エルウィンの説明は、単なる口頭だけではなかった。彼は、花子が召喚した品々の成分を魔法で解析し、その構造を詳細に記した魔術書を王や貴族たちに提示したのだ。


「これは、単なる幻術や錯覚ではありません。聖女フローラ殿が具現化する物質は、この世界の法則では説明できない、しかし確かに存在する『概念』を伴っています。これは、我々魔術師が長年追い求めてきた、新たな真理への扉を開くものです!」


彼の情熱的な説明は、王宮の識者たちを納得させるに十分だった。


王宮内では、もはや「魔力ゼロの落ちこぼれ」などと陰口を叩く者はいなかった。

皆が花子を見る目は、尊敬と、そしてかすかな畏敬の念に満ちていた。

廊下を歩けば、侍女たちが深々と頭を下げ、騎士たちが敬礼を送る。


その視線は、かつての冷たいものとは全く異なっていた。


(エルウィン様のおかげだ……!)


花子は、エルウィンの協力に心から感謝していた。


彼の知識と理解がなければ、自分の能力が異端として扱われ、最悪の事態になっていたかもしれない。

今では、エルウィンは花子の最も信頼できる協力者であり、友人でもあった。


二人は連日、花子の部屋で、通販サイトの品物を解析し、異世界の素材で再現する方法や、その応用について熱心に議論を交わしていた。


「聖女フローラ殿、この『電子レンジ』とやらは、一体どのような原理で食べ物を温めるのですか? 火を使わずして、これほどの熱を生み出すとは……」


「これはですね、マイクロ波というもので……」


花子は、故郷の科学知識を、エルウィンの理解できる言葉に翻訳して説明した。


時に、エルウィンが魔法で再現を試み、失敗して小さな爆発を起こすこともあったが、二人の探求心は尽きることがなかった。





そんな中、花子に予想外の人物から声がかかった。


王宮料理長、グスタフだった。

彼の表情は、以前のような傲慢さはなく、どこか探るような、しかし真摯な光を宿していた。


厨房で料理の準備をしている花子の元へ、グスタフは深々と頭を下げて現れた。


その姿に、花子は思わず目を見開いた。

グスタフは、これまでの人生で、誰かに頭を下げたことなどほとんどなかっただろう。


彼の背中からは、長年のプライドと、それを打ち破られた悔しさ、そして新たな道への希望が入り混じった複雑な感情が滲み出ていた。


「聖女フローラ殿、少々お時間をいただきたい。他ならぬお願いがあるのだ。」


彼の声は、以前の威圧的な響きとは異なり、どこか遠慮がちに聞こえた。

その声には、長年の経験からくる自信とは異なる、純粋な探求者の響きがあった。


「先の病の一件、そして街での活動……全て、このグスタフの目に焼き付いております。私の浅はかさを恥じるばかり。長年、この王宮の食を司ってきたこの私が、あなたの料理の真価を見抜けなかったとは……。私の料理は、確かに病を癒やすことはできなかった。

 しかし、あなたの料理は、多くの人々の顔に笑顔を取り戻した。それは、私がこれまで追い求めてきた『料理の道』とは、全く異なる、しかし真実の道だと悟りました。どうか、この不肖の老いぼれに、あなたのその……『新たな料理』の道を教えてはいただけませんか!

 弟子として、一から学び直したいのです! この国の食の未来のために、あなたの力が必要なのです!」


その言葉に、花子は驚きを隠せなかった。


かつて、自分の料理を邪道と罵り、毒だとまで言い放った男が、頭を下げて教えを請うている。

彼の料理人としてのプライドを乗り越えた、その真摯な姿勢に、花子は心を打たれた。


彼の目には、長年の経験に裏打ちされた頑固さの中に、新しい知識への純粋な渇望が見て取れた。

その瞳は、まるで初めて料理に出会った少年のように、キラキラと輝いていた。


「もちろんです、グスタフ様! 私でよければ、喜んでお教えいたします!

 むしろ、グスタフ様の豊富な知識と経験があれば、私の料理ももっと進化するはずです!

 異世界の食材と、故郷の調理法を組み合わせれば、きっと誰も想像できないような、素晴らしい料理が生まれるはずです!」


花子は笑顔で答えた。



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