リップクリーム
リップクリームを捨てたんだ
まだ半分も使っていない
彼女がわたしに相応しくないのか
わたしが彼女に相応しくないのか
濃い色のリップが主張した
「あたしが悪いって言うのかしら!?」
「どうしてあたしが捨てられるのよ!」
「恥ずかしいのはあなたなのに!」
ああ許してくれ愛しいリップ
化粧品が合うかどうかは
使うまで分からないものなんだ
それはきみも知っているだろう
リップクリームを捨てたんだ
実は三分の一のみ使用
騙すようにして捨てたんだ
淡いリップが囁いた
「あたしもあなたも悪くないわ」
「どうしてか上手くいかないだけ」
「次の子とは仲良くやってね...」
ああ!私を責めてくれよリップ
今からあなたの行くところは
あなたが輝くわけがないんだ
リップクリームを捨てたんだ
ホントは二、三回使っただけ
優しく美しい彼女たちが
どうか天国にいきますように