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愉快な呪い

作者: 小雨川蛙

 

 ある大悪党が自分にとって目の上のたんこぶであった女盗賊を殺した。

 苦悶の表情をしたままに死んだ相手に唾を吐き捨てて大悪党は言った。

「思い知ったか」

 最も厄介だった相手を殺し、大悪党は満足気に眠りについた。


 翌日。

 大悪党の下に殺したはずの女盗賊が現れた。

「馬鹿な……」

 呆然とした大悪党の隙を付き女盗賊は大悪党を殺した。

「仕返しだよ。この間抜け!」

 女盗賊もまた最も強大な相手を殺し、満足気に眠りについた。


 翌日。

 今度は大悪党が女盗賊のもとに現れた。

「馬鹿な……まさか、アンタ!」

「そのまさかだこの野郎!」

 そう言って大悪党は女盗賊を殺した。

 再び宿敵を殺した大悪党は今度こそ満足げに眠りについた。


 その翌日。

 女盗賊がまた復活して大悪党を殺しに来て大悪党を殺した。


 そして、翌日。

 今度は大悪党が……。


 さらに翌日。

 今度は女盗賊が……。


 ところ変わって、ここは地獄。

 悪魔が大悪党と女盗賊の滑稽な殺し合いを見て大笑いをしていた。

 こんなにも愉快なことはない。

 何せ、この二人、とある呪いがかけられているのだ。

 それは『一方が他方を殺した時、必ず殺された方が翌日に復活する』というもの。

 これは先に地獄へやってきた女盗賊が悔しさのあまりに言った「甦ってあいつを殺してやりたい」という呪詛が始まりだった。

 悪魔は女盗賊を不憫に思い完全なる善意から女盗賊を甦らせてやったのだ。

 先述の呪いは伏せたままに。

 そして、その結果がご覧の有様と言うわけだ。

 二人はこうして永遠に互いを殺し合うことだろう。

「馬鹿な奴らだ。殺した相手が翌日には全回復だぞ? 一生殺し合ってろ。大馬鹿どもが」

 悪魔は涙を流すほどに笑いながら言った。

「まぁ、殺した時の状態に戻るんだからお前らには寿命もないんだがな」

 ・

 ・

 ・

 後に呪いのカラクリに気づいた二人が手を組み『不死身の冒険者』などと名乗って互いを最良のパートナーとして世界を荒らしまわるのだが、それはまた別の話。


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