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家庭的な女の子はそれだけでポイントが高い――2

「じゃあ、帰るか」

「うん!」


 残った俺と萌花は昇降口へ向かい、靴を履き替えて帰路につく。


 校門を出たところで、萌花が俺の手を取ってきた。


「萌花?」

「その、さ? ふたりきりだし、美風ちゃんと詩織ちゃんには悪いけど、蓮弥くんを(ひと)()めしたいなー、なんて思っちゃいました」


 うつむきながら、萌花が小声でそう言った。期待するように、キャラメル色の瞳をチラチラと向けてくる萌花。その頬は赤く色づいている。


 可愛すぎるだろ、俺の嫁!


 愛らしい仕草に身悶えしつつ、俺は萌花の手を握り返した。


「た、たまにはいいんじゃないか? 俺は嬉しいよ」

「う、うん……ありがとう、蓮弥くん」


 俺たちの周りにはまだ生徒がいる。俺と萌花の仲は、きっと噂されるだろう。明日、今日よりも激しく質問攻めにされるのは確定だ。


 それでも、萌花の手を離す気にはならなかった。





 萌花とふたりでお喋りしながら通りを歩く。もちろん、俺たちの手は繋がれたままだ。


「今日の晩ご飯は、みんなが好きなものを作ろうと思うんだ」

「それは楽しみだな。朝ご飯もメチャクチャ美味しかったし、期待してるよ」

「うん! お父さんにいっぱい教わったから、楽しみにしててね!」


 萌花がフンスと鼻息を荒くする。気合を入れているようだが、可愛さしかない。思わず、クスリと笑みを漏らしてしまった。


 料理研究家のお父さんの影響で、萌花は子供のころから料理を(たしな)んでいる。そのため、俺たちの同棲生活における炊事は、萌花が一手に(にな)うことになった。ちなみに、そのほかの家事は、俺・美風・詩織が分担して行うことになっている。


 確約されたな。今日の夕飯は間違いなく美味しい。


 鼻歌を奏でたい気分になっていると、萌花が十字路で立ち止まり、道のひとつを指さした。


「わたし、あっちの道から帰るね」

「え? そっちは遠回りじゃないか?」

「あの道の先にあるスーパー、今日が特売日らしいの」


 俺の疑問に、萌花が笑顔で答える。


「みんなのお父さんとお母さんから、充分な生活費をもらっているけれど、節約はちゃんとしたいんだ」

「そっか。萌花はしっかり者だな」

「えへへへ。ありがとう」


 繋いでいないほうの手でつやつやの髪を撫でると、萌花がふにゃりと頬を緩めた。いつまでも眺めていたいほど可愛い。


「じゃあ、行こう」

「え? 蓮弥くんもついてきてくれるの?」


 ここでお別れと思っていたらしく、萌花が目を丸くする。


 俺はポリポリと頬を()いた。


「手、もっと繋いでいたいからさ」

「そ、そっか……じゃあ、一緒に行こっか」


 照れくさいセリフだけど、口にしてよかった。頬を朱に染めながら、萌花が幸せそうに微笑んだから。

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