特殊詐欺の現場
二人ネタの脚本が欲しいと言われ、1時間ちょっとで書き上げたネタです。
完璧なフィクションです。コメディです。
スマホに耳を当て、話している女性。
「・・・、はい、後ほど、担当の者がお伺いしますので、よろしくお願いします。」
スマホを机に置き、ほっとした表情で、缶コーヒーに手を伸ばした瞬間、
電話の音 ピロピロ・・・
「はい、もしもし、田中です、あっ」
(おっと、急にかかってきたものだから、つい本名を。初日だから緊張しまくり、ほっとした瞬間を狙うなど、卑怯な・・・。)
「もしもし、・・・田中さん、聞いてます?」
「あ、はい。こちらかける方が専門なもので。突然、電話がかかってきてちょっとびっくりしちゃって。」
「健康食品の勧誘でもしてんの?あまりあこぎなことしちゃいけないよ。ばあさんたちってすぐ引っかかるからさ。」
「あこぎなことなんて、してません(・・まだ・・)」
「まあ、ちょうどよかったわ。実は田中さんさ、騙されてない?」
「?(・・・騙されていない、騙しているかもしれないけど。)」
「俺、市警の生活安全課の小林っていうんだけどさ、逮捕した詐欺グループのリストにおたくの通帳の情報と暗証番号が載ってたんだよね。」
(ん?このバイトする際に振込先とか、いろいろ聞かれたけど・・・)
「でさ、確認のためにこれから暗証番号を言うから、違ってたら言って。」
「はい。」
「えーと、最初の2桁は1-2、だよね?」
「全く違います。最初の番号は4です。」
「あれ、おかしいな。・・・あれ、リストの列がずれてたかも。もしかして、最初の2桁は4-5?」
「あってます」
(お~っとビンゴ!確率は10分の1、テンキーの真ん中は5。心理的に5ははずせないんだよなぁ。おれってやっぱ天才!)
「ということは、4-5・・・」
「2-3です。」
「暗証番号は4-5-2-3で間違いないね。なるほど、一致した。」
「ホントに私の個人情報がもれているんですか?」
「おそらく、間違いないだろうね。残念だけど。」
「どうすれば、いいんでしょう。」
「今、通帳とカードはお持ちですか?」
「いえ。カードしかありません。」
「カードだけですか。それは非常に都合が悪いですね。本当に通帳はありませんか。」
「通帳は家のタンスの引き出しの中に置いてあります。」
「そうですか。大変まずいですね。なんとかなるか、聞いてみます。」
「警察に連絡した方がいいでしょうか?」
「あの、私、警察官なのですけど。ちょっとお待ちください。」
受話器の口を押さえ、わざと大きな声で。
「おーい、だれか銀行の口座の凍結について詳しいものいるか~?何々、ふむふむ、そうか、よし、分かった。」
「佐藤さん・・・」
「いえ、田中ですけど。」
「失礼、多くの方の名前がリストにあるもので。」
(・・・)
「で、田中さん。とにかく一刻を争うので、カードだけでもなんとかしてみます。本当は通帳がなければならないところですが、職員一丸となって頑張ります。」
「ありがとうございます。大変心強いです。よろしくお願いいたします。」
「それでですが、緊急を要するので、同僚がお伺いします。その者にカードを渡してください。手続きをいたします。手続きが終わると、そのむね銀行のからも電話があると思いますので、よろしくお願いします。」
「では、カードを用意してお待ちしております。」
「はい、後ほど、担当の者がお伺いしますので、よろしくお願いします。」
(あれ?このデジャブ感って何?)
私は女性警察官、生活安全課、捕まえた犯人のリストに通帳の情報と暗証番号のリストがあった、暗証番号は、番号の一部を示して逆に聞き出す、本当にリストに情報があったように真実味を出し、信用させ、不安にさせる。
助けを求めてきても、一度は無理といい、でもなんとかすると言って信用を引き出す
そして、口座を凍結すると言ってカードを受け取るものを派遣する・・・
「あの」
「なんでしょう?」
「もしかして、あなた、同業者?」
「へ?」
「手元にあるのは、同じマニュアルよ?」
「・・・失礼しました。しかし、このマニュアルって、同業者までだませるんですね。簡単に、年寄りがひっかかる訳だ」
「年寄りで悪かったわね。私も退職後に年金が出るまでのつなぎにこのバイトしてんのよ。まったく、もう嫌な世の中だわ!」
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
脚本の形にしたかったのですが、どうやったらいいか分かりませんでした(笑)
特殊詐欺の撲滅を願って!