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教皇の元へ。


「……やってくれたな。ロティアナと示し合わせて、随分と大胆なことを」


 数ヶ月後。


 教皇を拘束したというリザルドは、再会した途端に厳しい表情でクレッサを睨みつけて来た。


 横でロティアナが申し訳なさそうに肩を縮こめたので、『しっかりしろ』と背中を叩く。


 彼女とクレッサは、総本山で合流した。

 そして、アルテやこちらの味方だった枢機卿らの力を借りて、どうにか教会の長として立つ体制を整えた後、改めて王都に赴いていた。

 

「結果的に上手く行ったから良かったようなものの、民衆を敵に回したらどうするつもりだったのだ」

「それはお互い様でしょう?」


 クレッサは、ふん、と鼻を鳴らして、両手を腰に当てて胸を逸らす。


「そっちこそ勝手なことして、血気に逸った軍勢が、無血開城に納得しなかったらどうするつもりだったの?」


 アルテに報告された時、実際、教会の人々とこちらの軍勢は一触即発だったのだ。

 こちら側はクレッサが、隣国側ではアルテが信頼を得ていたことで、どうにか納得はしてくれて事なきを得たものの、少々混乱はしたのである。


 そうして睨み合っていると、アルテが横から苦笑と共に割り込んで来る。


「結果的に誰も傷つかなかったんだし、それで良いんじゃないかな?」

「甘いわね」


 そう悪態をつきながらも、クレッサは引き下がった。

 今回の二度目の来訪も、目的あってのことだ。


 クレッサとロティアナが、正式に聖女として教会の権力を引き継ぐ為の儀式と……拘束された教皇への面会である。


 彼は既に、処刑されることが決まっている。


 仕方のないことだとは分かっていた。

 顔も見たことがない彼の行いによって、多くの人々が死に追いやられたのである。


 生涯幽閉では、済まない……何処かで、民衆の目に見える形で決着をつけなければならないのだ。


 だからせめて、一度面会をと望んだ。

 一体どういうつもりでそんな事をしたのか、問い糺したかったのだ。

 

「じゃ、行きましょうか」

「休まなくて良いのかい?」


 アルテの問いかけに、クレッサは首を横に振った。


「あたしのワガママで、処刑を待って貰ってるのよ。……これ以上、引き延ばせないわ」


 人を殺すこと。


 それがどのような形であっても、そこにどのような事情であっても、クレッサ自身の忌避感は拭えない。

 自分が直接手を下す訳ではなくとも、確実に、クレッサ達の行動によって教皇は死ぬことになったのだ。


 きっとそれは、生涯に渡って、クレッサの心を苛むだろう。

 

 人の感情というのは、理屈ではないのだ。

 恨む人々が彼の処刑を望むのと同じように、どんな悪人でも死なせたくないという、クレッサの気持ちも。


 それでも、やらなければならないのなら、いつまでも躊躇っていることは出来ない。


 リザルドの案内を受けて、クレッサ達は、教皇の元へと赴いた。

 

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