復讐に至る道
真っ黒に染まった視界
暗転する世界
それは唐突に新見涼に突きつけられた現実だった
当時中学2年生だった涼は剣道部に所属し、部員の仲間と青春と言う名の汗を流していた。
涼の実力は中学生相手では敵無しの実力の持ち主で、対戦した事は無いが高校生相手でも勝てるだろうと予想出来る程の剣豪。
身長は165センチと高い部類ではないが、それすらもハンデにならない身体能力を身につけている。
部活を終えた涼は剣道着から制服へと着替えを済ませ、足早に家路へと向かう。
通り道にあるコンビニで飲み物と雑誌を購入し、数分歩き続けると見慣れた建物が視界に入る。
確かに見慣れた建物である自宅ではあったが、普段ならこの時間になると家の明かりが灯っている。
しかし今現在は家の明かりは灯っていはいなく、暗闇に支配されたかの様な静けさを感じていた。
母親の仕事が長引いているのかと疑問に思いながら、ポケットにしまっていたスマホを取り出し、何かしら連絡が来ていないか確認をする。
スマホの画面を人差し指でタッチすると何も表示されていなかった画面が光と共に日付と現時刻が浮かび上がる。
涼は慣れた手つきでスマホのロックを解除し、メールや着信が届いていないか確認するが、そういった履歴は1つも存在しなかった。
不思議に思いながらも家の鍵を取り出し、ドアの施錠を解除しようと鍵を回す。
するとカチッと鳴るはずの音がしない。
その答えを表すかの様にドアノブを回しながら手前に引くと、キィィッと静かな音を立てながらドアが開いた。
「…鍵の締め忘れか?」
そう思いながら家の中に入り、玄関のスイッチをパチリと押すと家の中に暖かさを感じる明かりが灯る。
靴を脱ぎ玄関からリビングへと続く廊下を歩く。
リビングのドアを開けて、壁に設置されている照明のスイッチをパチリと押す。
しかしその照明が照らしたのは、床に倒れ血に染まった母親の姿だった。
一瞬何が起きているのか理解が出来なかった。
今見ている光景は現実なのか、幻なのか。
それすら理解が出来なかったのだ。
ただ、ピクリとも動かない血に染まった母親が涼の眼前に映っている事実。
1秒1秒時間が過ぎていくと、涼の視界が世界が暗転した。
そして、それは暗転から烈火の如く憎しみの炎が暗き世界を真紅の憎悪に染めていく。
「…一体誰が何の為に母さんを……」
憎しみの言葉が口から漏れ始める。
「…許さない。…絶対に許さない…」
両手を力一杯握り締め、怒りを露わにする。
すると後ろからドスっと何かが涼の背中に衝撃が走る。
視線を下げるとポタポタと赤い血が涼の足元に滴り落ち、それと共に背中から激しい痛みを感じた。
「…ガハッッ!!」
咳と共に口から血が吐き出される。
「…あんた…は……ッ…」
痛みを堪えながらゆっくりと振り返る。
そこには見知った顔が存在していた。
その瞬間視界が歪み、力なく床へと自由落下する。
「………ッ……かあさ……」
言い切る前に涼の意識はプツリと音をたてながら途絶する。