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5組 装備科

 シャッ シャッ シャッ


 夜も深まった頃、刃を研ぐ音が響く。


 シャッ シャッ ジャリッッ 


「あ…」


 砥石が摩耗し面が平らじゃなくなり、砥げなくなった。


「お~い。 そろそろ、寝ろよー」


 アクセルが心配そうに声をかけてきた。


「うーん! 砥石駄目になったからもう寝る」


 砥石と研ぎ途中の刀を片付け、手を洗いに手洗い場に向う。

 作業着を脱いで、洗い物の籠に入れて、洗面台の水を出す。


「それにしても、全然砥げないなぁ…。 ふぁ~」

 

 手を洗い終わると、欠伸を噛み殺しながら、部屋に戻る。


 途中、他の住人にすれ違い、なにか叫んでいたが、半分寝かかっている一葉の耳には届かない。


 部屋に戻ると、寝間着を着てベッドに入る。


「なぁ。外が騷しかったがお前、なんかしたのか?」


「ええ? 特には?」


「そうか。なら、いいんだが…」


 アクセルはどこか釈然としていないが自分のベッドに戻っていった。


 授業もつつがなく終わり、授業後。 いつも通り活動を始める前に、刃を研ぐ砥石が欲しいから外出したいと伝える。


「砥石? なら、5組に行ったらあるんじゃない?」


 とベリーが言う。


「5組?」


「そ。 あれ? 知らなかったの? 5組は鍛冶とかの武具整備に特化した授業を受けているんだよ」


「え? そうなの?」


 1組 貴族科

 2組 騎士科

 3組 魔術師科


 この3つのクラスを総称で貴族クラスと呼んでいる。


 4組 冒険科

 5組 装備科

 6組 商業科

 7組 総合科 ← 一葉達のクラス


 と残りの3クラスが平民ないし准貴族が通う。 そして最後に7組があるのだが、総合科というのは、今年度から新設されたクラスで、ある一点に突出している者や素行不良の者、協調性のない者等、いい意味でも悪い意味でも問題のある生徒を集めたクラスだ。 総称は掃き溜めクラス。 落ちこぼれ集団…等など、ひどい言われようのクラスだ。 更には、若く可愛らしいリン先生が担任ということで、嫉妬されたりもしている。


「へぇ〜、知らなかった。 じゃあ、そこに行ってきていい?」


「良いよ、行ってきなよ」

 

 ベリーが快く了承し、他のみんなも許してくれた。


「あ、俺も行くよ。 剣の新調もしたいし」


 シャガルも5組に用があるらしく、一緒に行くことになった。


「剣って?」


「盾持ちを辞めようかなって」


「そっか。 やっぱり、大剣?」


「そうだなぁ…。迷ってるんだよね〜。 手数を増やすか、重量級の武器で一撃必殺を狙うかで」


「うーん。 それ、組み合わせられないかな?」


「…へぇ。 詳しく聞いていい?」


「うん。 片刃の直剣でバスターソードで鍔の先の剣身が拳一個分くらい丸く切り取られてる感じの物。 もう片方は、こっちも片刃の直剣で、こう…剣身に柄が埋めてある? 峰についてる感じの…」


「ああ…、なんとなく想像付いた。 それで峰同士が重なるように合わせると両刃の両手剣になると…」


「うん」


「いいかも…。 2個目の剣の柄がリカッソの役目になって取り回し易いだろうしね」


 シャガルと新しい武器の構想を練りながら歩き続け、ようやく、5組のクラスにたどり着いた。 クラス…? 


「えっ、ここ?」


 どう見たって、倉庫というか、工場なんだけど…


「そうだよ。 ここで学園の備品の剣とか、学生のオーダーメイド品を作ってるんだ」


 シャガルが扉に手をかける。


「っ!? てめぇらァア! 『破壊騎士』が来たぞォ!」


 中からなんか物騒な名前が聞こえた。


 シャガルを見ると、嫌そうに顔を歪めていた。

 

 扉を開けて入ると、スパナやレンチ、ハンマーなどが投げられて来た。


「うわっ!」


 一葉は、慌ててしゃがみ込む。 横を見ると、一葉に当たりそうな物と、自分に当たりそうな物を掴み取っているシャガルの姿が見えた。


「ったく。 おいコラ! 危ないだろが!」


 中にいる人達に怒鳴り込んで行った。


「アアン! んだとォ!? 『破壊騎士』様よぉ。 もう、壊したのか? ああ? 直ぐに壊れんように素材をふんだんに使ったっていうのによ」


「まだ、壊してない!」


「まだ!? まだってことは壊す予定があるって事か!?」


「あの〜」


 シャガルと髭を生やし、無造作に伸ばされた髪の強面のオジサンがカウンターを挟んで言い合っていた。


「ああ? なんだ、このチンチクリンは。 ここは、ガキの遊び場じゃないぞ」


 オジサンがシャガルの顔を押しのけて、一葉を覗き込む。


「いや、違くて、砥石が欲しいの」


「砥石ぃ? 嬢ちゃんが使うのか?」


「うん。 刀、研いでる。 だけど…砥石が駄目になちゃって……」


「…砥石はある。 だが、その砥石持ってきてるか?」


「うん」


「どれ、見せてみろ。 まだ、使えるかもしれんぞ」


 一葉は、魔剣にしまってある砥石を取り出して渡す。


時限倉庫(アイテムボックス)持ちか!?」


 聞き耳を立てていた他の人達も手を止めて一斉に一葉に向く。


「ッと、悪い。 ……面を直せばまだ使えるな」


 オジサンは、一葉が渡した砥石を見回し、査定する。


「いい砥石だ。 だが、これ、荒砥だろ? 刀一本じゃ、ここまで摩耗することはない筈だ。 普通の刀ならな?」


 オジサンの眼光が一葉を射抜く。


「コレなんだけど…」


 観念して、研ぎ途中の刀を渡す。


「ほう…。 こっちで、研いでみてもいいか? 研ぐだけならそう時間はかからん」


「うん。 お願いします」


 ペコリと頭を下げる。


「よし、来た! 誰か! 研いでやれ!」


 ゾロゾロとたくさんの人達が集まって来て、刀に群がった。


「それと、面直しだ。 ネイ! お前、やってやれ」


「ええ! わたしぃ? 私も、あの刀、見たいんだけど!!」


「お前が、一番丁寧な仕上げをするんだ。 やってやりな」


「はぁ…、わかったよ」

  

 ネイと呼ばれた作業着姿の女子生徒がオジサンから一葉の砥石を受け取り作業場に戻っていった。


 それで? お前は何しに来たんだ? とでも言うかのように、シャガルに顎で示す。


「とりあえず、コレ、返すよ」


 指輪をカウンターの上に置いた。


「お前…、本当に壊してないだろうな?」


 懐疑的な視線をシャガルに向ける。


「壊してないって」


「ねぇ、シャガルお兄さん。 それは?」


 会話を遮ったみたいで、申し訳ないが、どうしても気になったためシャガルに聞く。


「コレ? コレはあのタワーシールドだよ。 持ち運びしやすい様にこうやって、指輪型になるように『形態変化』の魔法がかけられてるんだ。 ほら、この学園に通ってる生徒達って基本的に武器を持ち歩いてないでしょ?」


 そういえば…そうだね。 でも…


「ウチのクラスは別だよ。 7組は、戦闘特化のクラスだからね。 常日頃、武器を携行して直ぐに抜けるようにするという意味合いで普通に持ち歩いてるんだ。 それに…」


「『形態変化』の付与は高い!」


 オジサンがシャガルに続き発言する。


 高いんだ…


「ま、そういう事。 それで、オックス。 剣の新調をしたい」


「ほぉう…。 武器種は?」


 オジサン…もといオックスが目を細める。


「基本は双剣なんだけど…」


「ほう…。 これが、こうなると…」


「そう。 出来そう?」


「はっ! おもしれぇ。 やってやるよ!」


 シャガルとオックスが手を握り、ニヤリと笑う。


「何だこれはっ!?」


 カウンターの奥、一葉の刀を研いでる辺りから、驚きの声が上がった。 

 そして、幾人の人が刀を眺め、砥石に擦っていくが、直ぐに落胆し項垂れていった。 

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