表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/172

武器、換えよっか

 ウィリアムが一葉とシャガルをその視界に収める。


「…ヤバい感じ?」


「ヤバい感じ、だな」


 シャガルは、背筋に冷や汗が流れる。 


「カズハ君、下がってて。 なんとか、抑えてみるよ」


 シャガルが一葉を押しどけて、ウィリアムとの間に入る。

 すると、服の裾を引っ張られる感じがした。


「シャガルお兄さん、僕がやるよ」


「駄目に決まってるだろう!?」


「大丈夫、大丈夫。 たぶん…」


「おい!?」


 一葉の最後の一言にツッコミを入れつつ、後に下げようと押し下げるが、ひょいと避けられて一葉は、ウィリアムに近づいて行ってしまった。


「ぅうぉああああああ!」


 ウィリアムの咆哮が轟かせながら、一葉に襲いかかった。


 首を締めようとしたのか、はたまた頭を掴もうとしたのかは分からないが、ウィリアムは一葉に腕を伸ばし、触れる少し手前で、その動きが止まった。

 伸ばした手は、僅かに痙攣していて、顔に脂汗を滲ませていた。


「落ち着いた? ウィリアムお兄さん」


 一葉が声をかけると伸ばした手を戻していき、震える手のひらを見つめていた。


「あ、うん。 ありがとう、一葉君…」


 ウィリアムの正気が戻ったみたいだ。


 だが、その表情は恐怖の色に染まっていた。 


 次第にアクセル達が起き上がり、ウィリアムと同じく、どこか恐れているかの様に一葉を見ながら近づいてくる。

 ラナは、顔が青ざめ、体が震えていた。 立ち歩くことも困難なのか、ベリーに肩を借りて歩いてくる。

 トアとレキもラナ程ではないが、青ざめた顔をしている。

 この中で、平然としている様に見えるのは、シャガルとベリー、ガイルの3人だけだ。


「カズハ、今のって…」


 ガイルが代表して聞いてきた。


「”気”を当てただけ。 ウィリアムお兄さんだけに当てるようにしたけど、漏れちゃったみたい。 ごめんなさい」


 一葉は頭を下げた。


「……」


 ガイルが無言で一葉に近づき、一葉の頭の上に手を乗せる。


「君は…、その年で…いや、いいや。 見ての通り、気に当てられる事に慣れてないんだ。 気をつけてね」


「はぃ」


「とは言っても、そうも言ってられないよね。 これから、どうなるかわからないし。 それに、”気”に当てられて行動不能になるなんて殺してくださいと言わんばかりだ。 ということでさ、みんな。 殺気に当てられることに慣れようか?」


 一葉から手を離し、みんなの方へ振り向く。


「…え?」 


『ええええええ!?』


 ガイルのとんでもない提案に驚愕する。


「つっても、どうやって慣れるんだよ」


「そこは、アクセル。 ほら、適任がいるじゃん」


 ガイルが一葉に向かって目配せをする。

 一葉以外全員の視線が一葉に集まり、たじろぐ。


 ええ? また気を放つの? アレ、結構疲れるんだけど…


「まぁ、いいけど…」


 それから、一葉の放つ”気”に当てられ、気絶まではしないにしても、血の気が引き、立つのですらやっとの状態になっていた。


「ぁ…。く、首…ぁああ! ある! 良かった…!」


「わ、わたくし…い、今、たしかに斬られ……」


「ひゃっ……! ぅぁ…ああ…」


「………っ。〜ッッ!?」


 それが、下校時間ギリギリまで続き、その頃には、何人かが膝を付いて胃の中の物をぶちまけていた。


 うぅ、こんなこと、やめたい…。 どうして、お兄さん達に殺気を向けないといけないの?


 授業後、この訓練を続けるらしい。 それに平行して、模擬戦も行って行く。

 一葉は、シャガルの戦闘技術を向上させるために、まず、盾を使うのを辞めさせた。 その理由の一つに、シャガルの剣術に、盾の使用を想定していない様に感じられたからだ。 使ったとしても、今、シャガルが持っている、少し屈めば身が隠れてしまう程大きなタワーシールドではなく、もう少し小さな盾、それこそ、腕に付けれるほど小さな盾や腕の長さ位の物だろう。 むしろ、タワーシールドを片手で持ち、多少なりとも扱えるシャガルの膂力に驚かさせる。 ならその膂力を活かして、片手武器を二本持たせて、手数を増やすか、重量武器を持って、ヒットアンドアウェイで戦うか。

 実際に、シャガルに片手剣を二本持たせて、戦って見ると扱いなれてないが、筋は悪くはない。


「っはあ!」


 模擬剣がぶつかり合い、火花が散る。


 シャガルと模擬戦を始めて、初めて剣を打ち合せた。


「やっぱり、速度が上がったね。 盾を持ってる時より、踏み込みも良いし、なにより剣にちゃんと力が乗ってると思う」


「本当か? それは良かった!」


 一葉の評価を聞き、喜ぶ。


「じゃあ、次はこっち」


 一葉が近くに、置いてあったシャガルの身長くらいの大きさの巨大な剣を指さした。


「デカく無い? 俺、185はあるんだが…。刀身だけで、俺の目線まであるんだが!? よく、こんなの有ったね!?」


 シャガルが軽々と持ち上げ、地面に突き立てる。 その大きさに驚き、目を向いた。


「なんとなく、必要になるかな~って思って、リン先生にお願いしておいた」


「おい! あの人も普通に用意するのか…まぁ、いいや」


 剣を抜き、握りの具合を確認して、素振りと、どこに構えた方がしっくり来るか、色々な、構え方をしてみる。


 いや〜、シャガルお兄さんさぁ…。 軽々とその剣振ってるけど、それ、相当な重量だからね…


 若干、引き気味にシャガルを見た。


「じ、じゃあ。 打ち合って見ようか」


「ああ!」


 合図は無い。 十分に離れていたはずの距離に立っていたのにシャガルが振り下ろした巨剣が頭上より迫って来た。

 横に一歩ズレ、避けると地面の上で停止した剣が横に向く。


(うそ!? 途中で方向を変えれるの!?)


 慌てて、その場でジャンプをすると、足の下を巨剣が通る。

 着地したらしたで、いつの間にか、横から更に追い打ちが迫っていた。


(今度は回転斬りか…。 長いから遠心力が乗ってるからかな? スピードがすんごい…)

 

 一葉の腰の高さで巨剣が振られていた為、腰より低い位置まで体を傾けて、シャガルとの距離を詰めていく。

 回転斬りはまだ続き、巨剣が迫る度に、少しずつ、スピードが上がっていく。

 しゃがみ、巨剣の下を通り、下側に巨剣が来たときは飛び跳ねて巨剣を避けていく。

 更に、シャガルに近づくと、回転は終わっていて、一葉の正面を向いていた。

 

 ゾクッ


 不意にいやな予感がして、横に飛び去る。


 一葉が立っていた所に、巨剣が振り下ろされ、地面が大きく抉られていた。


「わぁお」


 ズズズッ


 巨剣がゆっくり、持ち上げられ、ソレを肩に担ぎ、一葉を見据える。


「はぁああ!」


 今度は、振り回す事なく、真正面に普通の長剣と同様に巨剣を振るった。


(どんな、馬鹿力してんの!?)


「でも…」


 重量故に、動きが少し遅く、隙きが大きい。 


 一葉は振り下ろされた巨剣を横にズレて避けると、シャガルが引き戻すより前に、巨剣を上から叩き、地面にめり込ませた。


 巨剣が叩かれ、剣を手放したシャガルは両手を上げホールドアップをする。


「フゥー…フゥー…」


 シャガルは息が上がっていた。 


 やっぱり、負荷が高そうだね。 でも、二刀流よりこっちの方がやりにくかったかな。


「今日はおしまい。 どう? 二刀流とこの巨剣。 どっちがしっくり来た?」


「はぁ…はぁ…。 ふぅうう。 どっちかって、言うと。 はぁ…。巨剣の方かな? でも、もう少し短くて、軽くして欲しいかな」


「そう、だね。 シャガルお兄さん、だいぶ息が上がってるからね。 息、整えてみんなの所に行こ」


 一葉とシャガルは息を整えて、少し休憩してからみんなのところに戻り、例の鍛錬を始める。


 まぁ、直ぐに慣れるとは思わないけど…


 今日も、今日とて、殺気でみんなを気絶させた一葉は起きてくるのを待つ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ