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帰宅

 朝、目が覚めると、アリスの部屋ではなく、自分の部屋のベッドの上にいた。


 姿見で服の乱れを直し、寝癖が無いか確認する。


 部屋別出て、食堂に向かうと、ちょうど、リンも起きてきたみたいだ。食堂の前でかち合う。


「おはよう、リンお姉ちゃん。 あ、あの…」


「おはよう、カズハ。 鍛冶は順調?」


「う、うん。 あのね! 昨日はごめんなさい。 心配かけたよね?」


 リンはキョトンと目を丸くして、次の瞬間、笑い出した。


「たしかに、心配はしたよ。 でも、謝る事じゃないよ。 怪我もなかったみたいだしね」


 と、リンは言うが、それでも心配をかけたことに変わりな

い。 

 申し訳ない気持ちで一杯で俯いていると、顔を手で挟まれた。


「そんな顔しないの。 ね? 次、気をつければ良いんだよ? だから、朝ごはん食べよ」


「うん…。 ごめんなさい」


 朝食を食べた後は、昨日の続きだ。


 刀身に塗った焼刃土は完全に乾いていた。


 炉に火を入れる。


 炭を入れて、温度を上げていく。


 パチ。パチ


 炭が弾ける音がしだした。


 刀身を炉のに入れて、工房の明かりを消す。


 刀身を焼いていくのだが、刃全体に均等に、入れないといけない。 鞴を吹きながら、何度も、何度も位置をずらし、熱した炭を刀身に乗せる。


 徐々に、刀身が赤熱してきた。


「シアお姉ちゃん、赤熱してきた」


「ええ。 でも、まだみたいよ」


 今日は、シアが同伴している。


 刀身の焼入れは、見極めが難しく、一葉には判断ができないため、シアに助言をお願いしたのだ。 シアには、オモイカネがいる。 元戦友で鍛治屋の息子だったオモイカネはありとあらゆる武具を打ってきた。 その、オモイカネの意思を持つ妖刀と意思疎通を交わすシアが、助言を一葉に伝えるのだ。


 赤熱してきてからどれくらい経っただろう? 刀身の状態を見るのに集中しすぎて、時間が分らない。


「今よ!」


 シアの合図に反応して、炉から刀身を取り出し、水に投入する。


 ジュァアアアアアアアアア!


 水が蒸発する音と共に蒸気が上がる。


 真っ暗の中でも赤く輝く光が徐々に失われていく。


 光が完全になくなっても、まだ、熱い為、手で触れる位の温度になるまで水に浸しておく。

 

 水から取り出し、水気を取る。


 研ぎをしようとしたところで、シアから待ったがかかった。


「待ちなさい、カズハ」


「え?」


「あなた、そろそろ帰る準備をしなさい。 もう少しでお昼よ。 今日、帰るのでしょう?」


「えっ。 もう、そんな時間?」

 

「そうよ。 お風呂に入って、さっぱりしてきなさい。 片付けはしておくから。 くれぐれも、寝ないようにね!」


「うん! って、寝ないよ!?」


「本当かしら? 前科があるからね〜」


 ははは!と笑うシアに、後の事はお願いして、お風呂に、直行する。

 お湯を頭から被り、髪の毛についた煤や灰を流していく。

 風呂桶にお湯は貯めずに、頭と体をササッと洗って、すぐにお風呂から上がり、いつの間にか用意されていた学園の制服に着替える。


 エントランスには、もう、リンとシアが待っていた。


「お待たせ〜…。リンお姉ちゃん…?」


 リンは来た時と同じ格好で待っていたけど、大きなバックパックを背負っていた。 そのバックパックからは、瓶の蓋らしきものが飛び出て見えていた。

 

 一体、何本の酒瓶が入っているんだろう…


「慌てなくても良いのに」 


「あら? 早いわねカズハ。 はい、これはカズハが打った刀。 こっちの鞄には、砥石が各種入っているわ」


 シアが布に包んだ刀と、各種粗さの砥石の入った鞄を用意して、持ってきてくれた。

 

「ありがとう、シアお姉ちゃん」


「お世話になりました、シアさん」

 

 リンがシアに頭を下げてお礼を言う。


「良いのよ。 また、いつでも遊びに来なさい。 クラスの子達も連れてきても構わないわ」


 とシアは言うが、勝手にそんな事を行ってもいいのだろうか。

 一応、このお屋敷って、シアお姉ちゃんのではなく、マリアお姉ちゃんのだよね?


 一葉は、不安そうな顔で、シアを見つめる。


「大丈夫よ。 マリアには話も通しておくし、断らないんじゃないかしらね。 むしろ、喜ぶんじゃない?」


「うーん…、どうだろ?」


「ううん。 絶対に喜ぶわ。 あの子達もね」


「うん…。 じゃぁ、またね」


 一葉はシアに抱きつく。


 優しく受け止めたシアは一葉の頭を撫でて落ち着かせる。


「さっ。 お行きなさい。 また、来週には会えるわ」


「うん! 行って来ます!」


 シアから離れ、先に、門の方へ行ったリンを追いかけていった。


「ん? 来たね。 行こっか」


 追ってきた一葉に気づき、声をかけた。


「うん」


 門を出て振り向くと、門が閉まっていく隙間からシア学園手を振って見送っているのが見えた。 屋根の上には腕を組んでこちらを見ているゴウキの姿もあった。


 貴族街を抜け、乗合馬車の停留所に向かってい歩いていると横から、ガチャガチャ瓶のぶつかる音が聞こえてくる。 それは、もう、煩わしいほどに耳元で鳴っていた。


「ねぇ、リンお姉ちゃん?」


「ん?」


「何本に貰ってきたの?」


「え? どうだろ…、20本辺りから数えてないかも」


「はぇ? 20本!? 持ってきすぎじゃ…っていうより、そんなに飲むの?」


「まあ…、うん」


 気まずそうに視線を逸らされた。


 一葉は絶句し、何も言えない。


 停留所に着くと、ちょうど馬車が来たみたいだから、その馬車に乗り込んで、学園近くまで乗って行く。


 馬車の中で、リンと一葉は姉弟と間違えられているのかご年配の御婦人に話しかけられ、会話を楽しんだりして、時間が過ぎるのが早かった。


「ふぅ〜。 流石に疲れてきた…」


 そりゃ、酒瓶20本以上入った鞄を背負っていたら、そうなるでしょうよ。

 息を切らせながも坂を登って、学園まであるき続けた。

 坂を登りきり、その場で座り込むリンに学園の門番の2人いる内の1人が駆け寄って来た。


「大丈夫ですか!? 気分でも悪くなってしまったのですか?」


「大丈夫。 大丈夫だから。 少し、疲れただけ」


 門番にそう伝えると、もう片方のの門番がリンを見てなにかを悟った。


「リン先生? もしかしてなんですが、そのバックパックの中って…」


 リンはサッと顔を逸し、無言を貫いた。


 門番はそれを見て、ため息をついていた。


「おい。 リン先生のバックパック運んでやれ」


「え? でも」


「いいから行って来い」


「はい!」


 リンから申し訳無さそうに渡されたバックパックを持って、目を見開いた。


「おっッッッも!!」


 受け取った門番はその重さに驚き、落としそうになったが、踏ん張って、なんとか持ちこたえた。


「あ~、荷車がそこの用具室にあったろ? それ使っていいぞ。 ってか、使え。 怪我する前にな」


「うす!」

 

 台車を門入ってすぐの所にある用具室から荷車を引っ張って来た。


 あれ? 台車あるじゃん。


「よっっこいしょぉ!」


 ドスン!とバックパックを荷車に置き、荷車に縛って固定する。


「女子寄宿寮でいいんすよね?」


「うん。 ごめんね、お願い」


 リンがお礼とお願いをすると、門番のお兄さんは、笑顔で運んで行った。


「お帰りなさい。 リンせんせ。 そっちのお嬢ちゃんも」


「うん。 ただいま。 ごめんね、仕事の邪魔しちゃったよね? あと、この子こんな見た目だけど、男の子だよ」


「……そうか。 すまんな、ボク」


「ううん。 もう、慣れた。 ただいま」


 門番に挨拶を交わして、リンに男子寄宿寮に送り届けられる。


「ありがと、リンお姉ちゃん。 あ、もうリン先生だね」


「ふふっ。 明日から気をつければ良いよ。 じゃあ、お休みね。 ちゃんと、寝なよ?」


 一葉と別れ、歩き出す前に、振り返ってちゃんと寝るように念を押す。


 わかってるよぅ。 さすがに、寝ずに研ぎはしないよ!



拙作を見つけてくださり、ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。

皆様の貴重なお時間を頂いたこと、本当に感謝しております。

もし、よろしければ、下記のいいねや☆☆☆☆☆を押して頂けると幸いです。

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