週末休み 2
お茶を飲みながら学園での事を話していると、昼時になっていた。
「そろそろ、いい時間ね。 お昼食べてくでしょ? 用意するわ」
「う、うん」
「あ、私も手伝います!」
「え? お客様にそんな事させられないわ」
シアはリンの申し出を断ろうとするが一葉の懇願する視線を向けられて、「わかった。 じゃあ、お願いするわね」と受け入れてくれた。
「あ、そうだ。カズハ、まだ、制服じゃない。 部屋着に着替えて来たら?」
シアが一葉の格好を見て促す。
「そうだね。 着替えてくる〜」
一葉はそう言うと自室に走って行く。
「ははは! 走って行く程、あの服は嫌なのね! まぁ、固っ苦しいからしょうがないか」
「そうですね。 それで、なにかお話があるのですか?」
「察しが良いわね。 あの子、聞いてる話の限りだと、結構、騒ぎを起こしてそうじゃない? だから、特定の生徒だけに気にかけるのは難しいかもしれないけど、気にかけてあげてほしいのよ」
「ふふっ。 大丈夫ですよ。 クラスのみんなもあの子のこと気にかけてるみたいだし、よく、可愛がってあげてることをよく見かけます。 他の先生達も、やっぱり、飛び級で入って、一際、若い子だから気にかけてるみたいですよ。 さっき上がった決闘相手の先生も、煽るような事は言いますが、生徒想いのいい先生ですし」
「そう。 それを聞いて安心したわ」
リンとシアは歓談しながら、調理をしていく。
まずは、オークの肉を一口サイズにカット。 次に、フライパンにバターを入れてカットしたオーク肉を投入し火を入れていく。塩コショウを振り、火が入ったら、赤ワインを入れて強火で煮詰める。 入れた赤ワインが半分位まで減ったら、砂糖、トマトケチャップ、コンソメ、ローリエ、水を入れて、弱火で煮込む。
それと、平行して、違うフライパンで野菜を炒めていく。
フライパンにサラダ油を引いて、にんにくを炒める。 匂いが立って来たら玉ねぎを加えて、少し柔らかくなってきたら、にんじん、じゃがいもを入れて、炒めていく。 玉ねぎが飴色になるまで炒めたあと、煮込んでいるお肉に炒めた野菜を投入して、さらに煮込んで行く。
最後に、フライパンでソースを作っていく。
フライパンにバターを入れて溶かし、小麦粉を入れる。 ダマにならないように気をつけながらかき混ぜ、茶色く色が付くまで火を通していく。
出来たら、肉や野菜が入ったフライパンにソースを加え、十分煮込む。
皿に盛り付け、生クリームを細い線を描くように垂らして完成!
食堂に運びに行くと、一葉が椅子に座って、足をブラブラと揺らしながら待っていた。
「ごめんね、お待たせ!」
「うんうん。 ありがとうリンお姉ちゃん、シアお姉ちゃん」
シアとリンが料理を並べていき、シアがバゲットをナイフで切り分けて、魔法で焼いていく。
「えっ? シア様?!」
「どうしたの? リン。 それと、『様』は付けなくていいわよ」
シアが、急に声を大きく出したリンに驚く。
「何やってるんですか!? パン焼くなら、キッチンにトースターあったじゃないですか!」
なんて事を…ととんでもない暴挙を目撃し驚くと共に、キッチンにトースターがあった事を指摘する。
「嫌よ、面倒くさい。 こっちの方が早いし焼き加減も調整しやすいわ」
面倒くさいの一言で済ませたシアにリンは言葉も出なくなった。
「〜〜っ!! はぁ…(カズハがワイルドだって言ってた理由がわかった…)」
あ…。諦めた。 一葉は遠い目をしながら二人のやり取りを見ていた。
〜 〜 〜 〜 〜 〜
食事が終わり、お茶を飲んで一息ついていると。
「これから、どうする? 夜には戻るのかしら」
「あ~ッと…」
一葉が言いにくそうにリンに視線を向ける。
「? 好きにしていいよ」
リンが不思議そうにしながら一葉に伝える。
「あのね、剣をね、打ちたい」
「「剣?」」
二人が不思議そうにしながら声を揃えた。
「剣って、カズハ。あなた魔剣を持ってるじゃない。 護身用にナイフと、鉄扇も持ってたわよね? まだ、いるの?」
「だって、学園で魔剣使えないし…。それに、ナイフだと、つい癖でヤッちゃいそう…、それに…」
「…っ。それはちょっと…勘弁してほしいね。それに?」
リンは一葉のヤッちゃいそうに絶句するがすぐに立ち直る。
「もうすぐ、クラス対抗戦?があるんだよね? 僕も出たいし、シャガルと模擬戦もやるし、剣があったほうがいいかなって」
「ああ…そういえば、それもあったね。 模擬戦なら、学園に模擬剣があるから、それを使えばいいと思うけど…。そうね、クラス対抗戦は魔法あり、剣ありだしね。 ナイフは…たしか、使っても大丈夫だけど、大体の生徒が剣を使うから、リーチ的には不利に、なる…かな?」
「どうして、そこで疑問形なのよ。 わからなくもないけど…。 市販のじゃだめなのかしら?」
「僕が欲しいの剣というより刀だし…。 市販じゃ、刀は売ってるとこ少ないって、聞くよ? オーダーメイドだと時間もかかるしお金も…」
「お金なら、マリアが出してくれると思うわよ? でも、たしかに時間もかかるし…カズハ、マリアにお金出してもらうのを気にしてるのでしょ?」
「うん…」
「気にしなくて良いと思うけどね〜。 まあ、好きにすると、良いわ。 炉と鎚、あと、金床が必要かしらね。 すぐに、用意するわね」
「あ、うんうん。 アリスお姉ちゃんの工房使っちゃ駄目?」
「アリスの? 良いとは思うけど、聞いてみないと勝手に個人ルームに入るのもね…。私は掃除するために入りはするけど。 聞いてみる?」
「え?」
「はい」
いや、はいって渡されても…なにこれ? 鉄の板? 鉄にしては軽いし、アルミ?
「えーと、たしか…ここを、こうだったかしら?」
シアが一葉に渡した物をポチポチと押していくと、押していた面全体が光だして音が鳴り出した。
プルルルッ。プルルルッ。
『もしもし、アリスです。シアさん?』
「うぇ!? アリスお姉ちゃんの声が?!」
一葉の手元の板からアリスの声が聞こえてきた。
…微かに銃声と怒号が聞こえる
『その声…一葉君!?』
アリスが驚いていた。
《アリス! このくっそ面倒な時にナニ電話してんだ!?》
正義お兄ちゃん?
『セイギうるさい! 取り込み中だよ!』
《取り込み中なのは、こっちだろ!?ったく、手短に済ませよ。 おい! 左翼弾幕足んねぇーぞ! 何やってんの!?》
『ごめんね〜一葉君。 それで、どうしたの?』
「あのね、工房使っても良い?」
『工房?』
アリスの驚く声が聞こえてくる。
「うん。 学園でね、クラス対抗戦?ってのがあるんだけどね、僕、魔剣しか持ってないでしょ?」
『うん』
「あの魔剣ね、使っちゃ駄目なんだって。 だからね、普通の剣が欲しいな〜って…」
『ああ…。うーん…』
《バババッ! ドォン! パァン!パァン!》
銃声と爆破音がアリスの近くで響く。
戦場? 大丈夫なの?
『……良いよ。 でも、あまり無茶はしない事! あと、先生の言う事はちゃんと聞くこと! いい?』
「うん!」
『じゃあ、好きに使って。インゴット…というよりは玉鋼だけどね。 それも好きなだけ使っていいからね。あ、怪我には気をつけてね』
「うん! ありがとう、アリスお姉ちゃん!」
『もし、あれだったら、ベッドも使っていいから。 徹夜で作業はしないこと。 いいね?』
「はーい!」
『よろしい! じゃあ、来週には帰れると思うから楽しみにしておくよ。 ばいばい』
「うん!」
プツッ!という音がしてツー、ツーと鳴り出して、光が消えると音もしなくなった。
「使ってもいいって!」
一葉はニッコニコしながらシアに伝える。
「ええ、聞いていたわ。 よっかたわね〜」
シアは一葉の頭を撫でて一緒に喜んだ。
「あなたはどうする? 客室も開いてるし、泊まっていく?」
シアがリンに聞く。
「え? えーっと…」
リンが困っていると
「リンお姉ちゃん、帰っちゃうの…?」
一葉が悲しそうな不安そうな顔をして見つめていた。
ウッ…!と詰まり、このあとの予定を思い浮かべて、特に何もなかった事に気付く。
「わかった。 シアさん、お世話になります」
「ええ! 歓迎するわ。 遊戯室も開けておくから、自由に遊んでいいわよ。 相手がほしいのならゴウキを呼べば相手をしてくれるわ。 私も、手が開けば行くわ」
「いいんですか? ありがとうございます。 ちなみに、何が…?」
「ビリヤードにダーツ。ピンボールがあるわね。 後は、ルーレットもあるわよ?もちろん、カードも」
「どこのカジノですか!? まぁ、でも…久しぶりにダーツかな」
リンは矢を投げる仕草をする。
「ええ、わかったわ。 着替えは持ってきて無さそうね、用意しておくわね。 後は、カズハにはコレね。 アリスの部屋のカギと工房のカギ。 ゴウキはリンを遊戯室に案内してあげて。 あ、お酒はいるのかしら? いるならそれも用意させるわ」
「お酒までいいんですか!?じゃぁ、お願いしようかな」
「ゴウキに用意させるわ。 飲みたいものがあればゴウキに言ってね」
「はい!」
リンがお酒まで用意してくれると聞き、表情はあまり変わらないけど、目が輝いていた。
どんだけ、お酒飲みたかったんですか…
じゃぁ、僕は工房に行こっかな
「じゃぁ、僕、工房に行くね? しばらくは出てこないと思うから」
じゃ! と右手をあげて、足早にアリスの部屋に行く。
「ええ。 晩御飯外出来たら呼びに行くわ〜って、聞いてないわねアレ…」
「ははは…」
「俺たちも行くか? 遊戯室はこっちだ」
ゴウキがリンに話しかけ、こっちだと指を指しながら案内する。
「あ、はい。 お願いします」
「楽しんで来なさい。 後で、私も向かうわ」
「あ、はい〜」
声が遠くなりながらも返事をしてきたリンにシアは、何故か笑みがこぼれた。
「さてと、あの子の泊まる部屋の掃除と着替えを用意しますかっ」
シアは腕を捲り掃除道具を手に取る。
拙作を見つけてくださり、ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
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