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週末休み 1

 乗合馬車は、一定間隔に設置されてる停留所以外でも、降りる事が出来る。

 降りる時は馬車の中にあるベルを鳴らすと御者が停まってくれる。 外の様子は、おおよその有名所や目印としてよく使われる場所等が近づくと御者台に乗っている添乗員が伝えてくれる。


『もうすぐ、貴族街入口だ。繰り返す、もうすぐ、貴族街入口だ』


 貴族街入口は、皇都の観光名所となっている。 


 中央に剣を掲げた男性とその周りにその男性を護るかのように杖や盾等の武具を構える女性達の大きな銅像が立っている。そして、それを囲う噴水。

 だが今は、噴水の池には、水がが張られておらず、近くに寄れないように、柵が立っている。 

 噴水の池の囲いの一部分が破損しているためだ。


 リンがベルを鳴らす。


『停車する。 揺れに注意。 繰り返す。停車する。揺れに注意』


 少し、揺れながら徐々に速度を落としていき、停車する。

 

 思ったよりも揺れが少ない。


「さっ、降りるよ」


 停まったのを確認すると、リンが立ち上がって、一葉の手を引く。 

 リンが先に降りて、一葉を持ち上げて、地面に降ろす。 乗るときもそうだったけど、リンに持ち上げられて乗り降りするのを他の人に見られるのは恥ずかしい。


「ぁ、ありがと」


「ん!」


 馬車を降りて、リンに手を取られて貴族街入口にの門に向かうと、二人いる門番に通せんぼされる。


「これより貴族街だ。 許可証がないと入れることは出来ない!」


 門番の一人が語気を強めて言う。


「っ!」


 一葉は、思わず、リンの手を握る力が強くなり、体が強ばる。


「おい! 女子供を怖がらせてどうするんだ! 済まないね。最近、ここら辺で事件が起こっていてな、アイツ、気が立ってんだ許してやってほしい。 許可証はあるかい?」


「ん。事件のことは聞いてるから気にしないで。 カズハ」

 

「う、うん」

 

 襟元の徽章を見せる。


「うん。 大丈夫だよ。 開けるぞ!」


「チッ!」

 

 一人は顔を背け、舌打ちをしながら、門を開ける。


 態度悪いなぁ。 こんなんが門番で大丈夫かな?


「どうぞ」


 優しい方の門番が貴族街の方に迎え入れる。


「ありがと。 行くよ、カズハ」


「うん」


 リンは礼を行ってから一葉と一緒に、門を潜る。 その時、態度が悪い方の門番を一瞥していく。


 後ろを振り向くと、優しい方の門番が手を合わせていた。


 軽く頭を下げておく。


「マリア様のお屋敷、地味に遠いね。 貴族街には、乗合馬車はないから、少し歩くよ。 疲れたら言ってね」


「うん。 大丈夫、ありがと」


 ゆる〜い坂になっていて、登って行く。 途中、何人かの貴族家の使用人や、学園で、何度かすれ違ったことのある人達と会う。 リンに気付くと挨拶をしに来る人もいた。 

 

 坂を登って行って、屋敷の前に着くとリンは、膝に手を当てて、肩で息をしていた。


「大丈夫? リンお姉ちゃん」


 一葉が、しんぱいそうにリンの顔を覗き込む。


「だ、大丈夫。 カズハは、平気、そう、だ、ね?」

 

「うん。 剣で戦うからね。 体力ないと」

 

「そっか」


 リンが息を整え、起き上がると、屋敷の門を叩く。


 すると、ひとりでに門が開いた。


「あ、開いた。 入って、いいのかな?」


「うん。大丈夫じゃないかな。 行こ、リンお姉ちゃん」

 

 一葉が、少し警戒しているリンの手を取って中に入っていく。


 中に入ると前庭の中央にある、噴水の前まで歩いて行く。


 そこで、屋敷上部のステンドグラスを確認するのだが…


「あれ? 月が出てない」

 

「どういう事?」


「わかんない。 フリーパスなのかな? 右から回って行こ」


 ステンドグラスには城のシンボルしかなかった。


 月は噴水の周りを左右どっちの方向から回るのかを示している。

 そのため、今回はその指示が無いから背の低い植物が植わっている右のルートを選んだ。


「あ、シアお姉ちゃん!」

 

 シアがしゃがみ込んで、土をいじっていた。


「!!」


 一葉の声に顔をフッと上げた。


「カズハ!! おかえりぃぃぇえええええ!? どうしたのその首!! 骨折?! 骨折れたの!?」


「え?」


 シアが、ガバッと立ち上がり一葉に駆け寄って、肩を掴む。


「あ、あの」


「ゴウキ! 地下室に運んで!!」


「承った」


「え? ぇええええ!?」


 急に後ろに現れたゴウキが一葉とリンを脇に抱きかかえ、屋敷の中に突撃していく。


 中に入って、エントランスホール。 そこの床を蹴り壊して地下に降りていく。


 地下にはいくつも部屋があり、そのうちの一室が治療室になっている。


 そこのベッドにリンは投げ捨てられ、一葉は、丸椅子に座らせられる。


「ギブス外すわね、動かないで」


 シアが空間魔法のアイテムボックス(次元倉庫)から剣を取り出し、引き抜いた。


 一閃


 一葉の首に巻かれていたギブスのみを切り裂いた。

 ギブスの下に巻いてあった包帯を丁寧に外していき、患部を診る。


「少し、腫れてるわね。 骨折ではなさそうだけど…」


「もう! 筋を痛めただけだよ、シアお姉ちゃん!」


「あ、そうなの? なら、治癒魔法ですぐに治るじゃない。【ヒール】!」


 一葉の首の腫れが見る見る治まっていく。


「これでよし! もう、痛くないでしょ?」


「お? おお! ありがとう! シアお姉ちゃん!!」


 煩わしかったギブスが取れて、少しの動きでも首に痛みが出ていたのが無くなり、嬉しさで満面の笑みを浮かべた。


「にしても、どうして、こんな簡単な治療なのにギブス固定なんて、時間のかかる治療法にしてたのかしら」


「ああ、多分、ホノカ…医務室の教諭が痛みをこらえてる子の表情が好きだから、かな? よっぽど、酷い怪我じゃないと治癒魔法は使わないって言ってた」


「そんな理由だったの!?」


 そんなくだらない理由で痛みに耐えていた一葉は目を剥く。


「その、教諭はサディストなのかしら?」


「うーん。 腕はいいんだけどね〜。 昔、彼女にも色々あったから…」


 リンは苦虫を噛み潰したよう、顔をしかめる。


「まぁ、痛みをこらるのはなれてるからいいけど…」

 

 パンパン!


「はい!はい! せっかく、帰って来たんだし! 学園での事、聞かせてもらえるかしら?」


「うん!」


「じゃあ、上に戻ろうかしら。 ゴウキ!」


「今度はなんだ?」


「誰か来ても通さないように」


「……了解」


 シアがゴウキの名を呼ぶとシュタッ!と現れては、すぐにいなくなった。


「あ、あの。 さっきから気になっていたのですが、先程の男性は?」


 地上に戻るための階段を登りながら、リンがシアに聞く。

 

「ゴウキの事? アレは、私の使い魔よ。 あなたも一体は使役してるでしょ?」


「ええ。たしかにいますけど…、あの…」


「ああ! 人の身じゃない私が使い魔を使役してることが不思議なのかしら?」


「はい…」


「簡単な事よ。 ゴウキは私に忠誠を誓ったのではないの。 私の魂、在り方に忠誠を誓ったのよ」


「仰っしゃっている意味が少し…」


「うーん、そうねぇ。 使い魔は基本、主人に背く事はできないわ。 でも、アレは違う。 私が、私でなくなった時に私を殺せるようになってる。 今の私は、不安定な状態なの。 私が私でいる間は、私に従ってくれている」


「え? でも、それって…、従魔契約とは少し…」


「ええ、そうね。 従魔契約というよりは、主従契約の方が近いかしらね」


「珍しいですよね。そういうの」


「そうね。 ついたわね。 好きなとこ座っ待っててちょうだい。 すぐにお茶を用意するわ」


 食堂ではなく、客間に案内されてソファーに座る。

 シアは案内を済ませるとすぐにお茶の準備をしに行ってしまった。


「本当に一人で屋敷の管理をしてるんだね」


「うん。 まぁ、この家、よく襲われるし、家の中にも仕掛けが一杯だから、多分、ある程度戦闘経験がないと…」


「え、なにそれ…こわぁ」


 ザルヴァートル邸には、門から入らなかったり、規定のルートを通らないと不審者として、シアが作り出した異界に閉じ込められる。その際に、護身用の武具以外の物を持っていると閉じ込められるだけじゃなく、殲滅用の魔物たちが異界内に解き放たれる。 だが、この異界にも穴がある。 異界に閉じ込められる時に魔法陣が展開される。 その魔法陣の外にいれば、異界に行かなくて済むのだ。 そうしてくぐり抜けた、運のいい人たちは、屋敷の周りに仕掛けてある、機関銃に一斉射撃をくらうことになる。 それでも、くぐり抜ける猛者がいる。 そういった猛者達は、シアやゴウキ。 イオリやヴェイン、ヘレネーが直々に手を下す。 手筈になっていたが、一葉がそのうちのほとんどを誰にも気づかれずに処理をしていた。 血の一滴、髪の毛一本すら残さずに。


「お待たせ」


 シアが台車を引いて応接室に入ってきた。


「改めて、お帰り! カズハ。 まだ、誰も殺してはないかしら? それだけが、不安だわ〜」


「どういう意味!? シアお姉ちゃん、ひどいよ〜」


「あら? でも、あの怪我。 どうせ、決闘かなにかで負った傷でしょう?」


「違いますぅ」


「まぁ、決闘はしてたけど…」


「リンお姉ちゃん!?」


「ほら見なさい。 決闘もしてるじゃない!」


「ちっが…。 戦闘訓練でちょっと、へましただけだもん! 決闘なんて、お遊びに負けるはず無いもん!」


「お遊びって…」「お遊び!?」


 シアが呆れ、リンが驚く。


「だって、イカサマしてたし」


「え? いつやってたの!?」


「机にナイフ刺したでしょ? あのナイフで伏せるカードの図柄を見たんだよ」


「ぁ……」


「ふふふ、ははは! よくもまぁ、そんな手が考えつくものね! しかも、それって、結構技術が要るものよ? 相手にバレないように、場の雰囲気を整えて、ナイフの向き、刺す角度とか、色々計算しないといけないしね」


 さすが、シアお姉ちゃんだね。 よくわかってる。 リンお姉ちゃんは、口が開きっぱになってるね。





拙作を見つけてくださり、ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。

皆様の貴重なお時間を頂いたこと、本当に感謝しております。

もし、よろしければ、下記のいいねや☆☆☆☆☆を押して頂けると幸いです。

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