表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/172

お見送り

「じゃあ、俺らは行って来るぞ」


「うん。 行ってらっしゃい! 気をつけてね!」


 革鎧に身を包めた、アクセル、ガイル、ウィリアムを笑顔で見送る。

 3人は、眩しい物を見たかのように、顔を手で覆い、わずかに視線をそらす。


「カズハも、気をつけてね。 たしか、リン先生が迎えに来るんだよね」


 ガイルが一葉に視線を合わせて言う。


「うん」


 一葉が返事をすると、3人とも、頭を撫でたり、肩をポンポンしたりして、出掛けていく。 ウィリアムがドアの向こう側で手を降ってたから、一葉も振り返し、笑顔を向ける。


「神様が本当にいるかどうかは、分らないけど…。 どうか、あの人たちが、無事に帰って来ますように」


 ドアを締め、アクセル達が無事に帰って来るように、祈る。



 朝食は食べたし、部屋の掃除も終わった。 後は…洗濯しないといけないけど、時間が無いな。 ナイフの手入れでもするか…。

 まずは、持参したバタフライナイフから。

 柄を外して…、揉んで柔らかくした、チリ紙で刃を挟み込むようにして、上下に動かし、油を拭う。 次に、打ち粉と呼ばれる粉を打つ。刀身にうっすらと付着するくらい。そこから、もう一度、よく揉んだチリ紙を使って刀身を横から挟み込むように持って、打ち粉を拭う。 布に刀剣用の油を染み込ませ、下から上に向かって薄く、均等に拡げて行く。 最後に、外した柄の固定金具にも薄く油を塗って、刀身に柄を組み付けていく。

 

 クルッ、ヒュン! カチャッ!


(うん。 動きも悪くない)


 これで、一葉が持ち込んだナイフの手入れが終わった。

 学園から支給される儀礼用ナイフは、刃こぼれや手入れが容易になるように、魔法が付与されているらしく、手入れも先程、ナイフに塗った油を広げ塗るだけでいいらしい。


 儀礼用ナイフに油を塗り終わり、鞘にしまうと、すぐ目の前にリンがいて、一葉を感心したように見つめていた。


「うわぁ!?」


「あ、やっと気付いた」


 リンは、いつものローブ姿ではなく、私服だった。

 白を基調としたフワッとしたシャツとスカート。 髪は、いつも後ろで一本に縛っているけど、今日は、ウェーブを効かせて下ろしている。


「授業してる時も思ったけど、集中力すごいね」


「……あぅ」


 一葉は、顔を紅潮させる。返事をしようとするが、リンの姿を見ると、言葉に詰まり俯いてしまった。


「どうしたの? 顔が赤いね。 熱でもある?」


 リンは、一葉の額に手を当てて、前を向かせつつ髪を上げる。 

 額同士をくっつけると一葉は、口をパクパクさせ、瞼に涙が溜まっていた。


「熱は無いね。 大丈夫? 今日はやめとく?」


「だ、だい、大丈夫、ですぅ~!」


 さっと立ち上がり、出かけれるように、直ぐに準備を始める。


(ぅううー! 時間はまだ大丈夫だと思ったのに〜! あぅ。 今日のリン先生、凄いキレイ…)

 

 胸がドキドキして、無意識にチラチラとリンの方へ視線が行ってしまう。

 視線が合うとリンは微笑みを向けてくる。


 パパっと寝間着から制服に着替えて、手入れをしたバタフライナイフをジャケットのポケットに、学園支給のナイフを内ポケットに入れる。

 魔剣の不思議能力の”アイテムボックス”的な能力からチェーンで引っ掛けた指輪を取り出そうと、魔剣に触れる。 左手が、結晶に包まれ、パリンッ!と割れると、握りこぶしの中から、チェーンと指輪が出てくる。 それを首に掛け、ジャケットの内側に入れる。

 後は、一葉に与えられた、収納スペースの中から、小物入れを取り出した。 中には、貴族街に入るための徽章が入っていた。 一葉はそれを胸ポケットの上部に付けた。


「よしっ! リン先生、準備出来ました!」


「ん。 ん? 制服なの? 私服は?」


 リンは、一葉の格好を見て首を傾げる。


「無いよ?」


 あるにはあるが、持って来て無いのだ。 ザルヴァートル邸では、基本的に着流しを着ていた。 

 学生寮で過ごすにあたって、一人だけ、異国風の格好だと浮くだろうと、正義(まさよし)らが持っていくのを止めさせた。 その際に、私服を買う事を提案したが、一葉が断固として拒否したのだ。

 

「ええ!? もったいない! 少し、街も見てく?」


「うんうん。 普段は、学園指定の服があればいいから、いらない」


「そう? まぁ、それでいいなら、いいけど…。 じゃあ、行こっか」


「うん!」


 戸締まりをして、寄宿寮から出て、校門まで歩いていく。


「お疲れ様」


 リンが門番に声をかける。


「リン先生? おはようございます。 お出かけ…、です…か?」

 

 門番の男性が振り向くと、リンに見惚れて、言葉が尻すぼみになっていく。


「うん。 いつも、ウチの子らが迷惑かけてるみたいだね。 ごめんね」


 リンは手を合わせて、門番に頭を下げる。


「いえいえ! あの子らの事情も知っていますので気にしないで下さい。 あ、そうだ。 リン先生、ちょっとこちらへ」


 門番が一葉から見えない、学園の外壁の陰にリンを呼ぶ。


「うん? どうしたの?」


 リンは呼ばれたまま、門番についていく。


「実は…、今朝届いた情報で、街に『辻斬り』が現れるそうです。 被害者は全員、年若い男女だそうです。 昼夜問わずに被害が出てるらしいので気をつけて下さい」


「辻斬り? ん。 わかった。 気を付ける。 あの子達には?」


「大丈夫です。 言ってあります」


「そう。 ありがとう」


 簡単な情報共有が終わると、二人は一葉の元に戻っていく。


「おまたせ」


「ううん。 大丈夫。 もういいの?」


「うん。 じゃあ、私達は行くね」


 門番にそう告げてあるき出す。


「行ってらっしゃい。 道中お気をつけて」


 門番が心配げにリンを見ながら、見送った。

拙作を見つけてくださり、ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。

皆様の貴重なお時間を頂いたこと、本当に感謝しております。

もし、よろしければ、下記のいいねや☆☆☆☆☆を押して頂けると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ