時期外れの編入
「はーい。みんな、席について」
朝の予鈴が鳴り、リンが座るように促す。
5分後、本鈴が鳴り響いた。
「じゃあ、ホームルー厶を始める。 今日は、みんなにお知らせがいくつか。 まずは…、このクラスに新しい仲間が二人来ます」
「……」
騒ぎはしないが、アクセルらは困惑していた。
新学期が始まって数日。 こんな、微妙な時期に編入だなんて、珍しすぎる。
「じゃあ、呼ぶからね。 入って来て!」
リンが入り口に向かって呼びかけると、硬い物で床を突く音と不規則な足音を響かせ、一人の男子生徒が入ってきた。
それと、もう一人。 彼を心配そうに見ながら入ってきた女子生徒。
「「「はぁああ!?」」」「「「「えええ!?」」」」
一葉以外が驚きの余り、声を上げた。
そんな様子に、リンは苦笑して二人を前に立たせた。
「二人共、自己紹介を」
二人は顔を見合わせ、男子生徒が一歩前に出る。
男子生徒は左足をギプスで固定し、杖をついていた。右手もギプスで固定されていて、顔も包帯だらけでなんとも痛ましい。
「今日から、このクラスで学ぶことになった、シャガル・ジョンソンだ。 よろしく頼む」
頭を下げ、後ろに下がろうとすると、まだ、杖をついての生活になれてないせいか、後ろに倒れ込んだ。
「「危ない!」」
リンともう一人の女子生徒がすかさず助けに入って支える。
「ははは…、ごめん。 助かったよ」
「いえ…」
「ん。 怪我人なんだから気をつけて。 じゃあ、次。お願いね」
「は、はぃ」
女子生徒が一歩前に出る。
彼女は、赤髪で肩口辺りで切りそろえられていた。 スカートの前を握りしめて俯き気味になり口を開いた。
「と、トア・シルコットでしゅ! よ、よろしきゅお願いしましゅ!」
噛み噛み過ぎて恥ずかしくなったトアは、顔をみるみる紅くしていき、手で覆ってしまった。
クラス中に衝撃が走った。
こんな、かわいい生徒。同級生にいたっけ?
「はい、ありがとう。 という事で、みんなよろしく。 それと、近々、クラス対抗戦があるから、無理しない程度に頑張ってね」
クラス対抗戦? なに、それ。
「号令! は、今日もいいや。 一限の準備しちゃって良いよ」
一限目は、たしか…戦術訓練だったかな。 着替えないと。
「ほら、肩貸してやるから掴まれ」
アクセルがシャガルに肩を貸していた。
「いやぁ、悪いね」
「いいさ。 お前がこんなにまでなるなんてな、昨日は大捕物だったのか?」
「まぁね。 ちょっと、ヘマしちゃってね」
(嘘だ)
一葉は知っている。 シャガルの怪我は、そんな事で負ったものではない。
それは、昨日の夜の事。
☆
「ん? 今、何かが…人?」
チカッと光った所を見ると人が立っていた。
こちらをジッと見ていて、何か話があるみたいだった。
一葉は、魔剣から弓と文字刻んだ矢を造りだし番える。
風切り音がして、矢は人の立っている所の手前に刺さった。
矢には”少し、後ろに下がって”と刻んであり、それを見た人は、3歩ほど後ろに下る。
矢が刺さった所を目印に瞬間移動をした。
魔剣が呆れていたが気にしないことにした。
「く、空間転移ですか」
どうやら、僕に話があるのはこの人みたいだ。
「ララオス先生!?グムッ!」
口を抑えられた。
「シーッ! 静かになさい。 何時だと思っているんですか!」
声を潜めて、叱責される。
「あぅ。 ごめんなさい」
「いえ。 こんな時間に来た私も悪いですから。 それで、貴方にお願いがあって来ました」
「僕に、ですか?」
「ええ。 今日、シャガルから貴方のところのサークルに入りたいと私の所に来ました。 しかし、タイミングが悪かった。 他の、貴族の生徒らのいる前での時だったのです」
「ん? うん」
「私は、あの子は、あのクラスでは成長は見込めない。逆に、他の生徒から悪影響を受けてしまうと感じていました」
「うん」
「他の生徒はそれを聞いて激怒し、彼を裏切り者と罵り、彼の貴方がたのサークルに入るための条件として決闘という名の集団で暴行するという暴挙に出たのです。 勿論、彼に拒否権はありません」
「どうして、そんな決闘を受理したの!?」
「私が受理するのではないのです。 この間の私達の決闘は貴族としての決闘であり、見届人がして必要です。 あの時は、リン先生ですね。 そして、今回の決闘はこの世界のシステムなんです。 天に「誰それと戦い、雌雄を決します!」ていう風に神々に宣誓をして行います。 勝利条件も宣誓する前に決めておき、宣誓時にそれも一緒に言うのです。 今回は「シャガルが気絶をするまでか、我々が音を上げるまで。 なお、シャガルは反撃禁止」という条件でして」
「つまり、シャガルお兄さんはただ、他の生徒の暴行に耐え続けて、気絶したら負け。 って事?」
「ええ、そうです」
「屑だね。 その人たち」
「ええ。 それは、否定のしようがありません。 結果?あの子は耐えきった。 足を折られ、それでも立ち続け、他の生徒達の気が済むまで続きました。 あの子は才能がある。 もっと、上を目指せるはずです。 だから、どうか、あの子を導いてあげてほしい。 貴方に頼むのもおかしな話ですが、お願いします」
「どうして…。 どうして、そんな風に頭を下げれるのに、あの時はあんな見下すような事を」
「私も一応は貴族の端くれ。 私より身分の高い方々の子女には逆らえないのですよ。 もし、逆らえばクビを切られてしまい露頭を彷徨うことになってしまいますからね…」
「そっか。 分かった。 僕に出来ることなら」
「ありがとう。 幼き勇者に感謝を」
ララオスは再度、頭を深く下げた。
☆
と、まぁ。 こんなやり取りがあったのだ。 どうして、シャガルが彼らを庇うのか判らないけど。
もう一人のトアお姉さんは何があったかわからないけど。 こっちもなんだか、面倒事のような気がする。




