魔力酔い
一葉は、リンと両手を繋いで、目を瞑っていた。
身体に流れる魔力に全神経を集中させ、その終着点を探る。
うぇ~。気持ち悪い。 頭、痛くなってきた。
「一旦、休憩しよっか」
リンがそう言うと、リンから流されていた魔力が止まった。
「大丈夫? 横になる?」
「うん…。 気持ち悪い」
「ん。 おいで」
リンに促されるまま、リンの膝に頭を乗せる。
リンの手が、首筋に触れ、軽い力で抑えられる。
(ひんやりしてて気持ちいい…)
圧迫される事もなく数十秒。 リンの手が、首筋から離れ、今度は額に。
「少し、脈が速いね。 でも熱はなさそう。 軽い、魔力酔いだね」
「魔力酔い?」
「そう。 魔素の取り込む量が多いと起こる拒否反応よ。 授業で教えたでしょう? 魔力というのは、魔素の塊だって」
「うん…」
「落ち着いたら、再開する? 今日は、もうやめる?」
「あと、一回だけ」
「分かった。 落ち着いたら教えて」
「うん」
リンの手が、一葉頭を撫で、髪を梳く。
数分後、気持ち悪さも無くなり、再開をお願いする。
再び、リンに魔力を流してもらう。
休んでいる間に、ある事を思いついた。
そもそもが、魔法のない世界で造られた人間にこの世界の理が適応できるものなのか?
「リン、先生?」
「うん。 今日はこれまでにしよっか。 あまり、急いで行うもんじゃないしね」
「うん。 ありがとうございました。 あ、リン先生」
「ん?」
「魔無しって、どういう人のことを言うの?」
「ん~。 厳密にこう!って決まってる訳じゃないんだけどね、極端に魔力量が少なかったり、魔力強度が弱い人。 後は、魔力を扱うセンスが壊滅的な人の事をそうやって言うかな。 でも、侮蔑する言葉だから、使わないほうがいいよ」
「うん、分かった! じゃあ、多分、僕、魔法は諦めたほうが良いかも?」
「どうして?」
「魔力量とか、魔力強度って、すてーたす?で見るんだよね? 僕、表記が無しだから」
「どういう事!? ステータス見せてもらってもいい? 勿論、口外はしない」
「うん」
一葉は制服の内ポケットから一枚の金属の板を取り出す。
それを起動して、表示させる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
月城 一葉
種族【人間】
性別【男】
年齢【8】
職業【無し】
レベル【1】
魔力量【―】
魔力強度【―】
称号【異世界人】【継承者】【魔剣所持者】【ζενの弟子】【絶剣の弟子】【剣鬼の弟子】
スキル【トレース】【五行連環】〚同化〛※魔剣所持中のみ発動可能
状態: 魔剣所持(寄生中)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「〜〜〜っ!?」
リンが肩を震わせ、声のない叫び声を上げる。
(ちょっ!? 絶剣って五剣のうちのひとりじゃない!?)
「って、ええ…。 何この表示。 バグ?」
リンは表示が見たことのない表示に戸惑う。
「バグ? 魔力が無い人は、どうやって表示されるの?」
「えっと〜。 何分の何っていう風かな。 私が見てきた人だと、少ない人で最大値が10だったかなぁ」
「ふーん。 10かぁ。 魔法は使えないの?
「ちょっと、10じゃ厳しいかな。 初級魔法一発分あるかないかだね。 日常生活で使う魔道具を使う分には十分だけど」
「そうなんだ。 じゃあ、多分だけど…。 この表記だと魔力が無いというより、適応外?ということになるのかな?」
「どういう事?」
「この棒線って、例えば、何かのチェックをする項目があって、でも、その項目に適応するものが無いとか、確認のしようが無いときに使う事が多い記号なんだよね」
「ええ!? つまり、カズハは魔力が無いんじゃなくて、魔力そのものに適応してないことになるよ!?」
リンは今まで見たことも、聞いたことのない事象に目を剥く。
リンの声が予想外に大きくなり、アクセルらがその声に驚き、リンの方を向く。
指先に集中していたものが注意力が散漫になって、魔力を暴発させる人がチラホラいて後ろに吹き飛ばされ、尻もちをついていた。
「あ、ごめん」
リンがハッとして、バツが悪そうに謝る。
下校時間が近づき、活動を切り上げると帰りの荷物を纏める。
教室から出ると、外から喧騒が聞こえてくる。
「また、騒ぎ…」
リンが呆れて、声を溢す。
「はぁ…。 私は見てくるけど、みんなは騒ぎには関わらずに帰りなさいね」
一葉達は、返事をして寄宿寮に帰っていく。
夕食後、風呂に入ってから一葉は屋根の上に登り、夜空を眺めていた。
(今日も、疲れた…。 結局、僕、魔法使えそうにないなぁ。 なんとか、使えないかなぁ…)
――あら? マスターに魔法は必要無いじゃない。
独りごちると魔剣が念話で話しかけてきた。
(なんで?)
――だって、魔法が無くたって、あの不思議な力があるじゃない。 それに、魔法なら私が使えるしね。どういう魔法が使いたいかと、イメージをくれればそれでいいわよ
(そうなの!? あ、でも…。 みーちゃん、勝手に使うと、怒られる)
――バレなきゃ良いのよ、バレなきゃ。
(うわぁ…)
一葉は魔剣の暴論に呆れ、言葉を失った。
「おーい。 そろそろ、戻ってこーい!」
「あ。はーい!」
風呂から上がってきたアクセルが呼びに来た。
屋根から降りようとすると、寄宿寮の前がチカッと、光った気がした。
目を凝らすと人が一人、立っていた。
「あれは、――――」




