バレちった…
翌日。 学園内は騒然としていた。
高等部1年 1組 貴族の子女が集められ、成績も上位人で固められているエリートクラスが担任含めて髪型が変わって、統一されていたのだ。
男子は、全員綺麗に丸められ、坊主頭になっていった。
女子は、肩口辺りで、切り揃えられている。
貴族女性が髪を丸めるのは、修道院送りになる者だけ。 修道院送りになる令嬢は、貴族としてやっていけないと判断された者。つまり、何か問題を起こし、貴族家から追放された者だ。 貴族の責務から逃げ出すために駆け込む者もいるが、それは特殊な例だ。 修道院送りになった者は揃って、死んだ事にされ、家名を名乗る事は許されない。 もし、家名を名乗って事を起こそうものなら………。
そんな理由があって、一葉は女子生徒の髪を丸める事はせず、短く切り揃えるだけに留めた。 まぁ、短くなった事で、思わぬ事件が起こったが、それはまたの話。
そして、授業後。 その1組の男子生徒が一人。
一葉に頭を下げていた。
「え? 稽古を付けて欲しい?」
「ああ。 兄上から、お前に相手をして貰えと。 勿論、君が良ければの話だ」
彼の名前は、シャガル。 シャガル・ジョンソン。 騎士爵家の三男らしい。
「お兄さん?」
「あれ? 会ってると思うけど…。 ヴィルって騎士に聞き覚えは無い?」
「あ。 ゆう兄に負け、戦っていた人だ」
「はははっ。 言い直さなくていいさ。 実際、負けた〜って悔しがってたからね。 それで、どうかな?」
「ああ。 ううん」
一葉は、どうすればいいかわからず、周りを見回す。 アクセル達は、肩を竦めたり、苦笑したりしている。
そこで、リンが声を掛けてきた。
「シャガル」
「はい。 リン先生」
リンに名を呼ばれ、姿勢を正す。
「カズハと模擬戦をする。 それはいい。 でも、これ。 勇者様達や騎士団長様に許可は取ってあるの? カズハは、極力、戦闘に参加させないでほしいって勇者様達からお願いがあるの。 だから、許可が無いなら、模擬戦はさせられない」
「そう、言われると思って、書状を受け取っています」
シャガルが、一枚の丸めた紙をリンに渡す。
リンは封蝋を剥がし、紙を広げ、読んでいく。
「うん。 わかった。 カズハ。 あなたが戦うか決めなさい」
リンが一葉に紙を渡しながら、そう言う。
書状には、騎士ヴィルから依頼があったという事と、一葉は戦いから遠ざけても、向こうからやってくるし、首を突っ込みに行くから、無理に遠ざけることは辞めると。 だが、ただ、怪我は極力しないように気をつけてほしいと書かれていた。
「ん。わかった。 良いよ。 でも、シャガルお兄さんもここの課外活動のサークルに入って」
「ここの?」
「そう。 僕達はいずれ、勇者と肩を並べられるように強くなる事を目標にしてるの。 どうせ、力をつけるなら、高みを目指さない?」
「ククッ。 ハハハ! お前ら、正気か!? 勇者の力は、諸説あるが、どの書物にも人外の力と表現されてる。 それに、肩を並べられるようにだと? 人間辞めるつもりか? クハッ!」
シャガルがおかしそうに笑い転げる。
「良い…良いねぇ。 その話。 俺にも噛ませてくれ」
「決まりだね。 よろしく、シャガルお兄さん。 僕は教えるのはやった事ないけど、模擬戦の相手ならできると思う。 だから、自分で、自分に何が足りないか、何ができるのか、伸ばせるのか。 自分で見つけて」
「分かった。 これから、よろしく頼む」
シャガルは一葉に手を差しのべ、一葉はそれを取る。
「今日からやってく?」
「ああ、いや。 こっちのサークルに転部するまで待っててくれ。 色々と手続きがあるからな」
「そうなの?」
「ああ。 『転部・入部届け』っていう書類に自分の名前とクラス。 どのサークルに入りたいかを記入して、担任と、現在所属しているサークルの顧問。あと、生徒会長のサインを貰って、入りたいサークルの顧問に認可されれば手続き完了だ。 ま、俺の場合、騎士としてもう従事してるから課外活動は免除されてる。 だから、手続きの時間はそこまで掛からないと思う」
「うん。分かった。じゃぁ、それまで待ってるね」
「ああ。 じゃ、俺はこれで」
シャガルがそう言って、教室から出ていった。
「嵐みたいな奴だな、アイツ」
アクセルが呟き、それを聞いていた皆んなが頷く。
「あ。 そういえばリン先生。 どうして、勇者様や国王陛下に許可が必要なんです?」
レキがあごに指を当ててリンに訊ねる。
「あ。 あ~、失言だった…。 忘れ…ることは、出来ないよね。 …分かった。 シャガルはもう知ってるっぽいけど、このサークル内での秘密にしておいて。 もし、漏らしたら…明日には学園に通えなくなるかも?」
『え?!』
「い、いや〜。 そん、そんな話は、聞きたくないかな〜なんて」
「ううん。 良いの。 その内、知れ渡るというより、多分、教えておかないと面倒くさい事になりそうだから」
「聞かなかった事にはできねぇの?」
アクセルが嫌そうにそう聞く。
「絶対に後で疑問に思うだろうから、残念だけど、腹、括ってね」
うへぇとアクセルは舌を出し、レキを睨む。
レキの元に視線が集まると
「ごめんって〜! だって、気になったんだもん! 私は、悪くない!」
「開き直ったな、この愚妹」
「どうどう。 レキちゃん、落ち着いて。 ね?」
「はいはい! じゃれてないでこっちによって」
リンが手を叩き皆んなを近くに寄るように言う。
皆んなが近寄るとリンは魔法銃を取り出し地面に向けて撃ち出した。
すると、地面に魔法陣が浮かび上がった。
「『皆んな、聞こえる? この魔法陣は、防音と魔力遮断、念話の複合付与魔法陣だよ。 一応、防音は付いてるけど、それでも確実じゃないから念話でやり取りをするよ』」
「『相変わらず、先生の付与魔法は規格外過ぎんだろ。 流石、元Sランク冒険者』」
「『ははは…。 まぁ、それはいいとして。 カズハなんだけどね、実は、勇者様達と一緒に召喚されてきたの。いわゆる、迷い人ってやつだね。 それだけなら良かったんだけどね、魔剣所持者でもあるわ』」
「「「「「「『はあ!?』」」」」」」
「『あと、迷い人には珍しく、魔法が使えないわ』」
「『いやっ! ちょっと待って下さい、リンちゃん』」
「『教師をちゃん付けしない』」
リンがベリーにチョップをする。
「『それで?』」
「『うぅ〜。 魔法が使えないのに魔剣所持者になれるもんなんですか?』」
ベリーが頭を抑えて、涙目になりながら聞く。
「『…基本的には、魔法が使えない。魔力が扱えない人は、魔剣所持者にはなれない。 もし、無理矢理使おうものなら、命が危ないわね』」
「『っ!? じゃあ、その子…命を削ってその魔剣を!?』」
「『ううん。 その子は例外中の例外だよ、ラナ。 カズハの魔剣は、かの異名高き魔剣”身喰いの魔剣”よ』」
「『なお悪いわ!』」
アクセルが念話で叫ぶ。
「『それって、封印されているとお聞きしてますが?』」
ガイルがそう尋ねる。
「『封印を解いちゃって、認められちゃったみたいだね。 ま、こんな訳で、その子は機密事項満載だから、気をつけてね。 あ、後見人は、マリア様。公爵家だから、それも一応、念頭に置いといてね。 何かあれば、私か、ジンに報告して』」
「『ああ、カズハ”様”と呼んだ方がいいか?』」
「『普通に、今まで通りで良いよ!?』」
アクセルが頭の後を掻きながらそう聞いてきた。
「『そうか? まぁ、いいか。 了解した。 皆んなも良いな?』」
アクセルが他の人達の顔を見回す。
全員が頷き、了承を得る。
「『ん。 じゃ、お話はおしまい』」
リンが指をパチン!と鳴らすと、魔法陣が硝子が割れる様に崩れていった。
「カズハは昨日と引き続き、魔力壺を探そうか。 他の皆んなは、魔力を指先に集めようか。 こんな風に」
リンが全身から魔力を流さすと、魔力光が身体を覆う。 そこから、人差し指の指先に魔力が集中していき、指先のみ光るようになった。
「これが、出来ないと次の段階に行けないから頑張ってね」
アクセルらが、いきなりできるかぁ!と文句をたれるが、リンは睨みつけ黙殺した。
さて、僕は、僕でまた苦行が始まるなぁ。 はぁ…。




