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貴族クラス

2023/4/8 後書き追加しました。

「――け――!」

「――――――――――――」

「―――だ!」

「――こ――――い―――」


 うるさいなぁ。


「んうぅ?」


 温かく、柔らかいものに顔を擦り付ける。


(ん? 柔らかい、甘い匂い?)


「んっ。ちょっ、待って…」


「ん~~」


「『ん~~』じゃないよ。 ……起きた?」


「ぅん? リンせんせぇ?」


「ん。 よく寝てたね。 そのまま、ジットしてて。 面倒な人がいるから」


「? うん」


 一葉は寝たふりをしながら、言い合いをしている方に視線を向ける。


「何故お前等の様な下等階級の奴らが高等部にまで進学しているのか、全く理解が出来ない。 ここは、エリートが通う学校だ」


 一葉達とデザインは同じだが色違いの制服に身を包んだ男子生徒が胸を張り、手を広げながら大仰に言う。

 その後ろから、同じ色の制服を着た生徒らがガヤを飛ばす。


「あ? エリート? お前が? 親の威光に縋ってるだけだろ?」


「フハっ!」


 アクセルが大層驚いた風に煽り、ウィリアムが失笑する。


「アクセル。 やめてあげなよ」


「ガイル?」


「だって。 ここに通ってる貴族の生徒って、次男坊とかだろ? 家を相続出来ない奴らの箔付けの意味でこの学校に通ってるって話じゃん。 自分の無聊を慰める為に、俺達をいびりたいんだよ。 ここは、大人として我慢してあげようよ」


 朗らかに笑って、アクセルに提案していた。


(うわぁ…)


「〜っ! 貴様らぁ!」


「辞めなさい! みっともない!」


 自称貴族の生徒らの後ろから、上等な、シンプルだけど風格を感じる服を着た、男性が歩いて来た。


「そう、怒るものではありませんよ。 カイルくん」


「ラライオス先生。 すみません。頭に血が上ってました」


 冷静さを取り戻したカイルがラライオスに謝る。


「良いのですよ。 さて、アクセルくんだったかな?」


「へぇ? 落ちこぼれクラスの俺の名前まで知ってるんだな」


 アクセルは意外だなと感心する。


「ええ。 一応、ここの教師なので。 ある程度実力のある生徒は覚えていますよ。 そっちの、ウィリアムくん、ガイルくん。 それと、ベリー嬢、ラナ嬢、レキ嬢。 リン先生の背で眠っているのは、例の子でしょう?」


「はははっ! 俺達全員の名前を覚えてるとか、あんた、物好きだな」


「お褒めに預かり光栄です。 ですが…、平民如きが貴族に楯突くとはいただけませんねぇ?」


「はっ! そいつ等が喧嘩吹っ掛けてきただけだが?」


「そんな些末な事は関係ないのですよ。 無礼ですねぇ、あなた」


「ライオス」


 見かねたリンがラライオスに声をかけた。


「なんですかぁ? リン先生ぇ」


 ねっとりとした口調で鳥肌が立つ。


「後で、言い聞かせておくから、今回は見逃してあげて」


「それは、それは…」


「………」


 視線を交わし合い、ラライオスの口が醜く釣り上がる。


「出来ない相談ですねぇ。 なんたって、エリートである我々を侮辱する発言をいくつもしていたわけですからねぇ。 まぁ、リン先生が()()()していただけるのであれば、考えますがねぇ」


「っ!? …はぁ」

(それが狙いか…。 ゲスめ)


 リンが息を飲むのが聞こえた。


「ラライオス先生! それには、勿論我々にも?」


「ええ! 良いですとも! なんたって、私達エリートを侮辱したわけですからねぇ!」


 ラライオス達が下卑た笑い声を上げる。


「ねぇ、リン先生。 エリートってなぁに?」


「しっ! 黙ってて。 私がなんとかするから!」


 一葉が小声でリンに聞くと、リンは同じく小声で一葉に語気を強めて言う。


「…わ、もご!?」


 リンがラライオスの提案に了承しようと言葉を発しようとしたところで、口を塞がれた。


「もが!?(かずは!?)」


「ねぇ、おにいさん」


「おや? お目覚めですか? お嬢さん」


「…うん」

(男なんだけどなぁ。 まあ、いいや)


「それで? 如何なさいましたか?」


「エリートってどういう意味?」


「……はははっ! 高等部に飛び級で編入しておきながら、そんなこともわからないのですね! 『エリート』というのは、我々の様に選ばれた血筋の優秀な人のことを言うのですよ!」


「……?」


 一葉はラライオスの言う事が理解出来ず首を傾げる。


「理解できませんか? わ「わかった! 下衆のエリートなんだね!」」


 一葉は理解できたとラライオスに報告する。


「…下衆? 我々を…、私を下衆…と…?」


 ラライオスは俯き、肩をワナワナと震わす。

 左手に嵌めていた手袋を外すと投げてきた。


 一葉はリンの口から手を離すと、投げられた手袋に手を向けて指を鳴らす。

 手袋が炎に包まれ、灰も残さず燃えつきた。


「な!?」


「カズハ!? なんてことを…っ!? ライオス! 貴方もそれの意味が判ってるの?!」


「ええ! 判っていますとも。 むしろ、理解していないのはそちらのお嬢さんでは?」


「〜っ! カズハ、手袋を投げ渡すというのは決闘を申し込む意味を持つの! しかも、あなたは受け取らずに燃やした! コレの意味するところは、『お前じゃ話しにならないから出直してこい!』っていう事よ」


 リンは一葉を背から降ろすと一葉に目線を合わせ、肩を揺する。


「うわあ、おぅわぁ、あう」


 一葉は肩を揺らされ、言葉をうまく喋れない。

 揺らされるのが止まるとようやく話せるようになった。


「だって、決闘なんて、意味ないじゃん。 やるまでもないよ」


「そうじゃないの! 貴族から平民に決闘を申込んだら拒否はできないの! 今あなたは、貴族に無礼討ちっていう私刑で殺されるかも知れない! その条件を満たしてしまったの!」


「ええ…。 面倒くさい。 うん、分かった。 その、決闘受ける」


「〜っ?!!!」


 リンが頭を抱えて声もなく叫ぶ。


「ふふっ。ふハハハは! 決闘は受理された! さて…、どのような内容にしますか?」


「…?」


 再び一葉は首を傾げる。


「はぁ…。 カズハ、私は、この件ではこれ以上庇えないよ。 決闘は、受け手が決闘内容を決めるの。 勝負内容と勝った時の賞品も含めて」


「ふーん。 じゃあ…。あ、ここってトランプある?」


「トランプ? カードゲームの?」


「うん」


「あるけど…」


「じゃあ、カード当てで。 おにいさん、ラライオス先生?がカードを選んで、僕がそれを当てる。 不正は無し。僕が勝ったら、みんなに不当な扱いをしないようにしてほしい。あと、他の生徒や教師、講師にもそう働きかけて。 それともう一つ。 みんなに誠意ある謝罪を」


「いいでしょう。 それと、不正とは?」


「魔法、魔術。それに準ずる力の利用禁止。 勿論、魔道具も」


「なるほど。 いいでしょう」


「そっちの勝った時は?」


「そうですね…。 では、あなたとリン先生には、我々のお相手をしてもらいましょうか」


「お相手?」


「ええ」


「うーん。まぁ、良いけど。 なんで、リン先生も?」


「監督不行き届きで連帯責任」


 チラッとリンを見ると頷いていた。


「分かった」


「では、遊戯室に行きましょうか」


 ラライオスの後を付いて行って遊戯室に向かう。


 向かってる途中でリンにお相手の意味を聞くと、それも理解しずに了承したの!?と驚かれた。 意味はまだ早いということで教えて貰えなかった。 


 遊戯室は、チェスやビリヤード、カードゲームで遊べる部屋だ。 貴族の嗜みとして、一部のクラスには授業として取り入れられている。


「こちらに来なさい」


 ラライオスがカードゲーム用のテーブル前で一葉を呼び寄せる。

 テーブルは細長く扇を描いたようなテーブル。


「私が選んだカードをあなたが選ぶ。 それで、いいんですね?」


「うん」


 ラライオスはトランプをテーブルの下から取り出し、数多くあるカードの中からジョーカーのみ取り出し、テーブルに置く。


 ダン!


 一葉が制服の内ポケットからナイフを取り出しラライオスの前に突き下ろした。


「!? これは…?」


「誠意ある謝罪に、必要でしょう?」


「はあ?」


「丸坊主。 誠意ある謝罪では当たり前でしょ?」

 

「ッ! い、いいでしょう!」


 カードのをラライオスから見て左側に、選んだカードをその山と一葉が突き刺したナイフの間に伏せて置く。


「さあ、選びましたよ。 質問は3回まで。 いいですね?」

 

「フッ。 必要ない」


 一葉は人差し指を立てラライオスに向ける。


「一回。 一回で十分」


「〜!? ど、どこまでも馬鹿にするくそ餓鬼ですねぇ! よろしい! では、一つ以上の質問はあなたの負けです!」


「そう、言ってるじゃん」


 ラライオスは怒り心頭という風に顔を真っ赤に染めて、一葉を睨みつける。


「質問はァ?!」


「あなた、嫌な奴でしょ?」


「はあ? それが、質問ですか? それを聞いて、なんの意味があるのです?」


「早く答え…、いや。 やっぱ、良いや。 ねぇ、先生」


「なんですか!」


「一つ。 良いことを教えてあげる」

 

「はあ!? アナタが?私に? 巫山戯るのも大概になさい!」


「勝負とは、戦う前に始まっているんだよ? そして、その時にもう決着している。 先生がしていたようにね」


「なんのことなのか、さっぱりですね! ですが、貴方の言うことには同意しますよ」


「じゃあ、答え合わせといこっか。 先生がなんで最初にジョーカーを抜いたか。 これは、どの絵柄、どの数字に当てはまらない。 だから、こういう勝負事では向かない。 だから、抜いた」


「ほう?」


「と普通なら思うはず。 不思議だったよ。 どうしてそんな、僕にわかりやすくするのか。 でも、それはフェイクだ」


 一葉がラライオスが選んだカードに手を伸ばす。


「『ジョーカー』。 ラライオス先生が選んだのはそれだ」


 一葉が伏せていたカードの種類宣言する。


「待って、カズハ」


 伏せてあるカードをひっくり返そうとするとリンから待ったと声がかかった。


「トランプにジョーカーは2枚しかないはず。 その2枚は、除けられてる」


「リン先生。 言ったでしょう。 ()()()()()()()()()()()()()んだよ」


 一葉がカードをひっくり返した。


 カードは………


     ”ジョーカー”



「え?」


 観戦していた誰かの声がした。


「どうして…どうして分かった?! あり得んだろ! たったの一回の質問! それの回答すら聞かずに当てるなんて! そ、そうだ! 不正だ! 不正をしたんだな! 無効だ! この勝負は無効だ、お前の負けだ!」


 ラライオスが喚き散らかす。


「クッ。はははっ! 無効? 不正? どっちが!」


 一葉が怒鳴り返した。


「なんだと!?」


「じゃあ、聞くけど。 どうして、ジョーカーが3枚もあるの? いや〜、単純な人で良かったよ! 絶対に何か細工してくると読んでいたからね! ありがとう、ラライオスせんせ」


「〜っ!?」

 

「騒がしいわね」


 遊戯室に一人入ってきた。


「!! 学園長…!?」


 リンが振り向くとシャイルが腕を組んで歩いてきていた。


「事情は知っています。 見ていましたから。 さて、ラライオス」


「…はい」


「敗者は誠意ある謝罪だったわね」


「私は負けてなどいない! その餓鬼が不正をしたんだ!」


「不正、ねぇ。 ジョーカーを3枚用意するのは不正じゃないのかしら?」


「そ、それは…たまたま、たまたま偶然3枚入っていたんだ! そうだ、そうに違いない!」


「見苦しいわね。 不正してなお、貴方は負けたのよ。 潔く、腹を括りなさい」


 シャイルがはそう言うと、ラライオスの額を小突く。 すると、バタンとテーブルの上に倒れ込んだ。


「これで、静かになったわね。 さて、カズハ君。 今の内にやっちゃいなさい」


「うん!」


 一葉はナイフを引っこ抜き、ラライオスの髪を刈り取って行く。


「こんなもんかな?」


 ラライオスは髪を全部刈り取られ禿頭(とくとう)になっていた。


「じゃあ、次」


 ラライオスの後ろに控えてい貴族の子女らに視線を向ける。

 彼らは青ざめ、一歩後ろに下るが、その先は壁があった。


 遊戯室に悲鳴が響いた。


 抵抗する者はシャイルによって動きを封じられた。

 男子生徒の髪を狩り終わると、女子生徒の方に進む。

 女子生徒は顔を引き攣らせ、僅かに身体が震えていた。仕舞には泣き出してしまった。


 泣いて謝るくらいなら、最初から人を貶めたり下げずんだりしなければいいのに。

 

※ アクセル:ア  カズハ:カ


ア「ところで、実際はどうやってわかったんだ? あんだけの情報じゃ、推理も出来んだろ?」

カ「あ~、あれ?」

ア「ん? さっきのナイフか…って支給された儀礼用のナイフじゃねえか!」

カ「そ。 これをいい感じにテーブルに刺して、剣身に反射したのを盗み見たんだよ」

ア「イカサマじゃねえかよ!」

カ「向こうが先に仕掛けてきたし、そもそもルールには触れてないよ」

ア「どういう事だ?」

カ「ルールで決めたのは『魔法、魔術。それ準ずる魔道具の使用の禁止』だよ。 それ以外は指定してない。 だから、向こうも、魔法とかを使わずにカードを一枚増やしたんだよ。ジョーカーを2枚ぬけば、もう、ジョーカーは除外されると思わせる為にね」

ア「お、おぅ…そうか」 (結局、どっちもイカサマしてんじゃん!!)



 カード当ての真相でした。



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