魔力相撲
教室では、アクセルとガイルが魔力鍛錬を行っていた。
アクセルとガイルは互いに右手を突き出し、手のひらを向けて少し離れた場所立っていた。
魔力を手のひらから放出し、魔力で押し合いどちらかを倒すという鍛錬方法だ。 これは、一方向に向かって放つ為の”魔力操作”、拡散させずに魔力を密集させる、”魔力圧縮”を同時に鍛錬出来る、鍛錬方法だ。 それだけじゃない。 相手の魔力を覆い、抑え込む事もできるし、魔力の密度をあげて、相手を吹き飛ばすことも出来る。 この鍛錬一つで、様々な技量を鍛えられる。
「クッ!」「〜っ!」
互いに魔力を出し切り、同時にダウンした。
「勝敗は決まらず、だね。 二人共」
ウィリアムイソイソと準備をしながら、が肩で息をする二人に声を掛ける。
「それより、先生達遅いね〜」
レキがつまらなさそうに机に頰杖を付いて、足をぶらぶらと揺らしていた。
「まったくね。 お茶でもしてるのかしら?」
ラナが、まさか…と、
「それは、いくら何でもないでしょ! と言いたいけど、あの子もいるからね〜。 お茶休憩くらいしてるかも?」
ベリーが突っ込むが、もしかしたら小休憩はしてるかも、と同意する。 すると、微かに甲高い音がした。
「ん? ねえ、ラナ?」
「どうしましたの?」
「今、甲高い音がしなかった?」
「? してませんわ」
ラナは首を傾げた。 その瞬間教室の出入り口から、小剣が飛来した。
「「「!?」」」「え?」「「は!?」」
小剣は、教室にいる全員にその切っ先を向けて対空すると、バチバチと帯電しだした。
バァアン!
落雷と共に、一葉が『身喰いの剣』を二本携え立っていた。
「動くな! って、あらー?」
「ん?」
後ろから、ジンが音もなく教室に侵入して銃剣をこちらに向けていた。
「何事?」
「こっちが知りてぇわ!」
一葉がキョトンと目を丸くして疑問を呟くと、アクセルのツッコミが炸裂した。
◆ ◇ ◆ ◇
事は、一葉が突撃をかます少し前のこと。
「この魔力量、戦闘、喧嘩か?」
ジンが考察を言う。
「でも、戦闘音は聞こえないよ?」
「そこだ! これだけ魔力が巻き散らかされているのに、戦闘音が聞こえない、ということは…」
「制圧された?」
「可能性はある」
姿勢低くして、一葉とジンは教室の前まで足音を立てる事無く忍び寄る。
そぉ〜っと出入り口を少し開けた。
「おい。 ドア開けてどうするんだ!?」
「中の状況、確認する。 ピィィィィ!」
一葉が口笛で、甲高い音。それも、聞き取れるかどうかの音を出した。
一葉は、反響する音に耳を集中させる。
「人数は6人。 うち3人は一番下段にいて。後の3人は椅子に座ってる?」
「ふむ。 状況的に、下の3人が首謀で、椅子に座ってる3人が人質か?」
「たぶん?」
ジンは、目を閉じ、息を大きく吸って、深く吐く。
「突入する」
「なら、僕は先行するね。 みいちゃん」
一葉の右腕がエメラルドブルーの結晶に包まれると、六本の細長い結晶の塊が浮かび上がった。
「やりすぎるなよ」
ジンは右手、中指に嵌められた指輪に触れると、パッと光り、銃剣を握っていた。
「行け!」
「!!」
浮かび上がった結晶が砕けると小剣がそこにあり、開けたドアの隙間から中に飛び入って行く。
一葉の身体から電気が発せられ、やがて、雷と化して、中に入っていく。
おいおい。 ちゃんと、加減しろよ…。 大丈夫か…?
ジンも直ぐに、中に侵入して、一葉のフォローに入るため、銃剣を一番下段にいる奴らに向ける。
そして、現在。
一葉とジンは教卓に座り、こちらを見ているリンを見上げる形で正座をさせられていた。
見上げると、リンのスカートから覗く太ももが艶めかしい。
「ふーん。 それで、剣を持ち出したと?」
「はい…」「ああ…」
「一歩、間違えれば、怪我人ないし、死人が出てたかも知れないよね? そこらへん、どう思う? ジン」
「中の状況が判らない中に、これだけの魔力が巻き散らかされているんだ。 何かあったと判断してもおかしくはない。 その中で、怪我人も無く、事態を収めるのは困難だと思う」
「それを、どうにかするのが貴方でしょう?」
「無茶振りだな!?」
「じゃ、次。 カズハ」
「は、はぃ!」
「ジンはそう判断してた訳だけど、どうして、直ぐに攻撃しなかったの?」
「今までに感じたことない気持ち悪さだったけど、嫌な感じはしなかったから?」
「気持ち悪いけど、嫌な感じじゃない?」
「うん。 うまく、言葉にできないけど…」
「ああ、ね、リン先生?」
「なに?」
「もしかして、なんだが、こいつって、魔力を感じた事無いんだろう? だから、不快感に感じただけなんじゃね?」
「…そうかも。 ま、今回は怪我人もいないし、良しとしましょう」
リンが足を組み替え、判決を出した。
「あ、黒」
一葉が呟いた。
「黒?」
リンは、一葉が感じたイメージか何かかと思ったが、一葉の視線に気付く。
「? 〜〜〜っ!?」
みるみると顔が、赤くなっていき、咄嗟に料手で、スカートの裾を抑えた。
一瞬、しまった!と顔を顰めると、直ぐに教卓から飛び降り、一葉の頬を横に引っ張った。
「いひゃい、いひゃい!」
「リン、先生その体型でく、グハッ!」
ナニカを言いかけたジンに回し蹴りを食らわす。
(((黒か〜…))) (えっろ…)((……))
ベリー達、女子陣は微笑ましい物を見る目でリンを見ていた。ウィリアムとガイルはパッと視線を逸らし、アクセルは、胸の高鳴りを感じていた。
回し蹴りをジンに食らわしたところで、スカートの裾がその勢いで広がり、曝け出した。
リンは、太ももに巻き付けてあった、励起前の魔導銃を引き抜き、魔力を流し込んで励起させる。 銃口をアクセルに向けた。
「今、見た物は忘れて。 自分で忘れられないって人は教えて。 忘れさせてあげるから」
「何で、俺の方を見て言うんだよ…」
「邪な視線を感じた」
「はっ! 年増は範囲外だ! ガッ!! いってぇー!」
リンが銃のグリップでアクセルの頭を殴った。
「次はない。 言葉には気をつけろよ、クソガキ」
リンの可愛らしい声に似つかわしくない荒れた口調。
「すぅ~、はぁ〜」
リンは自分を落ち着かせる為に、深呼吸をして、ポケットから、一発の銃弾を取り出した。 その銃弾を額の前まで持ち上げると、一葉が感じていた気持ち悪さが軽くなっていった。
弾を銃に装填して、教室のドアを開けて、外に向けて発砲した。
「カズハ。これで、楽になった?」
「うん。 今のなに?」
「今のは、周りにある魔力を吸収して、撃つと、弾が通った周辺に拡散させる魔弾だよ。 今感じてた感覚を忘れないで。 ソレが、魔力。」
「今のが魔力なの? 慣れるかな〜?」
「慣れるしかないね。 ジン、暇してるなら、皆の魔力制御を見てあげて。 カズハはこっち。 ここに座って」
「いや、勝手に暇と決めつけるなよ…」
「なに?」
「はぁ…。 わかった。 お前ら、外出ろ。 ここじゃ、暴発したときに危ない。 裏庭、行くぞ」
クラスメイトはジンに返事をして、外に出ていった。
一葉はリンと向かい合って座り、手を握られた。
「付与魔法は、破棄しといたよ。 それと、今から魔力を流すから、その流れを感じて」
「流れ?」
「そう、流れ。 それはの行き着く先は魔力壺だから、それを探して。じゃあ、いくよ」
リンが一葉の手に魔力を流し始めた。




