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魔力感知

 一日の授業がつつがなく終わり、放課後。

 一葉は、リンに連れられて、購買部に来ていた。


 購買部は、学園生活に必要なものなら何でも売っている。教科書はもちろんの事、参考書や、図鑑。 筆記具から制服。魔術の触媒等など。 そして驚く事に、これだけの品揃えで、たったの一人で販売している。 店員は一葉のよく、は知らないけど、知っている人物だ。


「なにやってるの? ヘレネーお姉ちゃん」


「あら、カズハ君じゃない。 どうしたの?」


「ヘレネー。 高等部の教科書一式用意してむぐゅっ!?」


「あら〜! リンじゃない! 相変わらず、ちんまくてかわいい!!!」


 ヘレネーがリンに仕事そっちのけで、カウンターを飛び越えて抱き着いた。 

 リンはヘレネーの胸に埋もれ、ジタバタと藻掻き、やっとの事、呼吸出来るように顔をヘレネーの胸から抜け出した。


「はぁ、はぁ、はぁ…。 ヘレネー、抱きつくのは辞めてって、いつも、言ってるじゃん。 死ぬかと思った…」


「はははっ。 んな、大袈裟な」


「はぁ…。お願いだから、仕事して」


 ポンポンとヘレネーの背を叩いて、離してもらったリンは、ヘレネーに再度お願いをする。


「は~い。 それで? 高等部の教科書一式だっけ。 …重いけど、持てる?」


 と、ヘレネーが一葉に訪ねるとリンが答えた。


「私も持つから大丈夫」


「そう。 じゃぁ、ちょっと待ってて、持ってくるから」


 カウンターをまた、飛び越えて行く。 そして、カウンター奥の部屋の中に入って行き、数分後、教科書の山を抱えて、戻って来た。


「お、おう…。 リン先生? コレ全部?」


「うん。 そうだよ」


「多くない?」


「まあ、中等部からの繰り上がりだと、ここまで、多くないけどね。 コレの3分の1くらいは、中等部、高等部で共用してるし。 だから、まあ、諦めて」


「台車とか無いの? 流石に、これは持ちきれないよ」

 

「”台車”? なに、それ。 どういうの?」


「え?」


 嘘か本当かわからないが、この世界には、台車という物がないらしい。 重たいものをどうやって、運んでいるのか気になるが、とりあえず台車の概要をヘレネーとリンに説明をする。


「どう、ヘレネー」


「造れるわ。 たしかに、これがあれば、多少重たい物も力の弱い人でも運べる」


 一葉が説明の為に、紙に書いた台車のイラストを見て、リンとヘレネーは二人で考えこんだ。


「ま、マリア様に具申しておくわ。 それより、カズハ君、寮生活はどう? やっていけそう?」


「ああ…うん。 まあ…」


 チラッとリンを見るとリンは顔を逸らした。


「あら〜? なにかあったの? あ、私も運ぶの手伝うわ」


「ありがと、ヘレネー。 お願い。 初日から、浴場に血溜まりが出来たらしい」


「…どういう状況!? 意味がわからないんだけど?!」


「思春期男児の入っている浴場に、ロリっ娘が入って行った末に起きた事件よ」


「なにそれ! おもしろ!」


 はははっ。と、おかしそうに、ヘレネーは笑いだした。

 それに、とリンの話しは続いていく。


「今日の朝も、迷子になっていたらしいわ。 男子寮はそれで、朝から大騒動。 寮生、全員で大捜索をしてた」


「うわぁ…。 ん? でも、迷子って言っても屋根の上とかにいたんじゃない?」


「なんでわかったの? 公爵家に居たときもあったの?」


「あったわね~。 カズハ君が見当たらないって、カレンさん。 勇者様のご友人の娘なんだけどね、『カズハ君が居なくなっちゃった!』って言い出して、屋敷を探し回って居るときに、上から降りて来たのよ」


「常習犯」


「あはは…。 星を見るのが好きみたいでね。 よく見える、屋根の上に登ってたんだって。 今回のもそうなんじゃない?」


「そうなの?」


「うん」


「そう。 でも、あそこの屋根。斜面になってるから危ないからね? ジンにこってり怒られたからわかっているとは思うけど、これからは登っちゃ駄目だよ」


「はーい。 あ、ついた」


 一葉達は、喋りながら歩いていると、いつの間にか男子寮まで辿り着いた。


「ん? お帰り、カズハ。 姉さんに…、ヘレネーさん?」


 ジンが男子寮の前を箒を手に掃き掃除をしていた。


「久しぶり、ジン君。 流石、掃き掃除が様になってるね! 成績は優秀だったけど、問題ばかり起こしてたから、罰則でやってた掃き掃除は、お手の物かな?」


「やめてくれ…。 こんなのを褒められても、嬉しくない!」


「ふふふ」


「運んでいるのは…、教科書類か。 言ってくれれば、運ぶの手伝ったのに」


「いや、そこまで暇じゃないでしょ、ジンは。 課外活動の指導はいいの?」


「ああ。 全員、伸びてる」


 親指を立て、寮の方を指差す。


「かわいそうに。 もうちょっと、手加減してあげなさいよ」


「いやいやいや。 目隠しして片腕縛って、両足縛って、これ以上どうハンデをつけろと?」


「攻撃無し」


「模擬戦の意味、無くないか?それ」


 箒を寮の壁に立て掛け、一葉が持っていた教科書類を持つ。


「あ。 ありがとうございます」


 一葉が両手で持っていた物を片手で軽々と持ったジンは、一葉の頭にポンポンと手を置く。


「部屋に運んどくから、手、洗ってな。 食堂にお菓子とかもあるから、好きに食べとくといい」


「うん!」


 お菓子と聞いて、一葉は髪を揺らし、パタパタと寮の中に消えていく。


「「甘い」わね〜」


「ガキは、あんなもんでいいんですよ。 よく食べて、よく寝て。 よく遊び、よく学ぶ。 それで、いい」


 リンとヘレネーは顔を見合わせると「ふふふっ」とおかしそうに笑う。


「なんだよ」


「べっつにー」


「ねー!」


「「フフッ!」」


 カズハの借りている部屋に入ると、リンは感心した。

 カズハはそこまで、私物は持っていなさそうだが、他の生徒達。アクセル達もきちんと、整理整頓ができているし、掃除も行き届いていた。


「へえ~。 綺麗な部屋じゃん。 他の子たちと相部屋なんでしょう? その子達もきちんとしてるんだね!」


「う〜ん。 どうなんだろ? 案外、そこのクローゼットの中に押し込んでいるのかも?」


「姉さん達、あまり、詮索しないでやってくれ。 あれでも、多感な年頃なんだから…」


「わかってる。 それに、課外活動の面倒も見ないといけないし、これ置いたら戻るよ」


「私も、仕事放って来てるし、直ぐに戻らないと」


「いや、ヘレネーさん。 ちゃんと仕事してくださいよ!」


「あははっ。 ま、大丈夫でしょ! だって、ほとんど、誰も買いに来ないしっと、ここでいい?」


「ああ。そこに固めて置いとけばわかるだろう」


「っし。 戻ろっか。 あ、カズハも連れてかないと。 ジン、暇してるならあの子抱えて、学園まで連れてってあげて」


「は!? いや、いいけどさ。 アイツ、おやつタイム中じゃね?」


「うーん。 どうだろ? ま、行ってみればわかるよ」


 リンはそう言うと食堂の方に足を向けた。 ジンとヘレネーもそれに続いた。


 食堂に着くと、一葉は椅子に座ってコップについだ飲み物を、ちびちびと飲んでいた。


「あ、お帰り。 ありがとうございました」


「どういたしまして。 さ、戻るよカズハ君」


「はい?」


 リンの言葉に一葉は飲み物を飲む手が、止まった。


「課外活動」


「ああ…。 うん、わかった」


 残っていた飲み物を一気飲みして、コップに水を注いでシンクの中に置いた。


 そこから、学園に戻るのだが、一葉は身体強化魔法が使えない。 学園に戻るのに時間が少しかかるということで、ジンに運んでもらうことになった。


「おんぶと前抱き、どっちがいい? 俺的には、前抱きの方が、振り落とす心配が無くなるから、そっちの方が、いいんだが」


「じゃぁ、そっちで。 でも、いいの? 僕、走るのも速いよ?」


「ああ、構わん。 流石に、子供の走るスピードより、大人が走った方が速いからね。 そのまま、じっとしてろよっと」


 一葉の膝の内側に手を入れて、掬い上げる。 ジンの身体の前に横抱きで抱えられた。


「なんか、傍から見ると、親子みたい?」


「もしくは、誘拐?」


「おい!!」


「「はははっ」」


「ほら! 行くんだろ!? 場所はカズハのクラスでいいのか?」


「うん」


「じゃ、先行く」


 ジンは、一葉を抱えながら、姿勢を低くし、足に魔力を集中させる。

 踏み込み、地面を蹴る瞬間に魔力を爆発させて、驚異的な瞬発力を得る。

 花壇等を飛び越え、人が極力いないルートを選びながら、突き進んでいく。 壁を蹴り二階に飛び上がり、渡り廊下に降り立ち、一葉を降ろす。


「ここで、良いだろう。 ここから自分のクラスまで、行けるか?」


「……どこ、ここ?」


「マジか…」


 ガクッと項垂れるジンに申し訳なく思う一葉だったが、あんなにも無茶苦茶なルートで移動され、慣れてない場所で、現在地がわかるわけがない。

 ジンはもう一度、一葉を抱えるか迷ったが手を引いて歩いていく事にした。


「ほら、こっちだ」


「あ…」


 一葉はなされるがまま、ジンに手を引かれ、付いて行く。 すると、校舎に入って、少し歩くと見覚えのある廊下に出る。


 背中に付与された魔法陣が疼いた。


(あ、気持ち悪い…)


 足取りが重くなり、ジンの引く手が止まった。


「どうした?」


「気持ち悪い…」


「は!? 大丈夫か? 医務室、行くか?」


 一葉は、フルフルと顔を横に降る。


「背中、嫌な感じする」


「背中? これは…!? 姉さんの付与魔法か?」 


「うん。 魔法を一時的に使えるようにするものって」


「ということは、多分、一葉が感じてるそれは、魔力だ。 だが、おかしいな。 俺は、何も感じないが」


「そうなの?」


「ああ。 どうする? もう、教室は目の前だけど、行くか?」


「うん。 でも…」


「掴まれ」


 ジンがしゃがみ込み、背を向けた。

 一葉はジンの首に手を回し、背に捕まった。


「無理そうだったら、直ぐに言えよ」


「うん」


 教室に一歩進むごとに、疼きが強くなっていく。


「あ~。 今、魔力感じた。 コレは、やべぇわ。 アイツ等、何やってんだ? 教室で出す量の魔力じゃねえ!」


 ジンも魔力を感じ取ったみたいで、呆れ半分。怒り半分といった様子だった。

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