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一難去ってまた一難

お待たせ致しました!

徐々に更新を再開させていただきます!

 案の定、一葉の相部屋の相手は特化クラスの男子生徒全員だった。

 魔物か動物か分からないが、血痕が体のあちこちに飛び散っていた。

 

 アクセルとウィリアム、ガイルは部屋の中に人がいるとは思わず、しかも「お帰り〜」と声をかけられた事で、持っていた剣を落としてしまう。

 あんぐりと口を上げ、目を見開く。


「なんで、いんの?」


 アクセルが絞り出すように問う。


「ここに入寮したから? これから、お世話になります」


 一葉は膝をついて、頭を下げる。


「だぁー! 意味がわからん! わからんが頭を上げろ! そんでもって、説明しろ! 話はそれからだ!」


「うん。 実はね…カクカクシカジカで」


 一葉は、所々省きながら説明する。


「わかるか、ボケェー!」


 アクセルがウガァーと頭をガシガシと掻きむしる。


「へぇ〜。本来は初等部に編入予定だったけど、何故か高等部に編入することになって、しかも入る寮が無くて、寄宿舎として貸し出せれている、通称男子寮に来たと。 女子寮で暮らすという話もあったけど、男だからそれは嫌だと」


 ガイルが一葉の意を汲んで説明してくれた。


「なんで、わかんだよお前…。 『カクカクシカジカ』でよく通じたな。 え? 俺がおかしいのか?」


 え? え!? と一葉とガイルの顔を見比べる。


「まぁまぁまぁ。 いいじゃん、アクセル。 住まわせてあげようよ」


「いや、まぁ、いいんだがな? というより、その容姿で男って…無理があるだろ」


 「ま、いっか」とアクセル達は考える事をやめた。 アクセル達は妹のような弟が泊まりに来たと思うようにして深くは考えないようにしたのだ。 そうしないと、間違いを犯しそうになるからだ。


 アクセル達は一葉と顔合わせを終わったあとは体にかかった血を洗い流しに浴場に向かっていき、一葉には楽にして待っていれくれと伝えて行く。


 浴場から戻って来たアクセル達に連れられ共用食堂に向かうと、そこには、エプロンをつけたジンがせっせと料理を運んでいた。

 料理は茶色が多く、緑黄色がほとんど無かった。 そう、肉尽くしなのだ。 添えられた野菜はあるにはあるが肉の下に敷かれたレタスやその周りに置かれたトマト数個だけで、栄養バランスもなにもない。 違う、皿にはパンが山のように積まれていた。 その横には寸胴鍋が置いてあって、中身は野菜スープみたいだ。 

 学生寮で暮らす生徒達が続々と集まって来て、配膳を手伝っていたが、一葉は、何もしなくていいから座って待ってろと言われたため、空いてる席に座って、その様子を眺めていた。


 配膳が終わると、一葉の周りにアクセル達がやって来た。

 他の生徒達はそこから少し離れた所に固まっていた。



 あれ? 避けられてる?


「…ああ。いつもの事だし、気にするな」


 アクセルに目配せすると、そう返って来た。


 ジンが料理が載せられたテーブルの前に立つと、一葉を手招きする。

 ジンは一葉を横に立たせると一葉の事を生徒達に紹介する。


「はぁ…。 みんな、聞け。 今日から、ここで一緒に暮らすことになった、カズハだ。 色々と、助けてやってくれ。 異論は、認めん。 問題は起こすな? いいな? 絶対だぞ! 面倒事は御免だからな!?」


「ジンさん」


 男子生徒の一人が、挙手する。


「異論は認めん」


 にべもなく言い放つ。


「お、おう。 もう、食ってもいいか!?」


 よく見ると、男子生徒達はジンと一葉の後ろにある料理に釘付けだ。

 たしかに、お肉の焼いたスパイシーで香ばしい匂いがしている。 食欲を唆る。


「お前らな。はぁ…。 まぁ、いいや。 問題だけは起こさないよに! 野郎共ォ! 食えぇ!」


 ジンがそう言うと男子生徒達がこぞって料理に詰め寄る。 


 一葉をそっと避難させたジンは、一葉に別でよそった料理の載った皿を渡し戻らせる。


「あ、お帰り。 ビックリしただろ? いつもの光景だから今のうちに見慣れておいてね」


「うん。 行かないの?」


 一葉が戻ると、ガイルが若干引いている一葉に声をかけた。

 一葉は、他の生徒達と比べて、じっと席に座っているクラスメイトに聞いた。


「俺達は最後だ」


「なんで?」


「さぁな。 いいから、お前は食え。 折角、ジンさんが別に取り分けてくれたんだからな」


「うん。 いただきます」


 一葉は手を合わせて、そう言うと、食事に手を付けた。

 お皿には、パン一個と分厚いステーキが2枚、レタス数枚、トマト3個が乗っていた。

 この量は、一葉の1食の食事量を遥かに超えていた。そのため、一葉は、ステーキを一口大に切り分けた物を3切れと野菜全て、パンを一口大に千切っ…千切れない!? 硬っ!

 ステーキナイフで切ることもできない位に硬いパンをナイフの刃がついてない方で叩き、砕いて出来た一欠片を四苦八苦しながらなんとか食べきって、手が止まる。

 お茶を飲んで、「ほぅ」と息を付くと横から「全然食べたないじゃん。 いっぱい食べんと大っきくなれんぞ?」 と声がかかった。


「アクセル。 食べれる量は人それぞれだ。 無理に食わす必要は無いよ。 もう、お腹いっぱいなんだよね?」


 ガイルがアクセルを窘め、一葉に聞く。


「うん」


「じゃあ、しょうがないか。 残すのも勿体無いし、俺らで食べようか」


 とアクセルとウィリアムに提案する。


「まぁ、そうだな」


「そうだね」


 ガイル達が一葉の食べ残した料理に手を付けていると後ろから声がかかった。


「おいおい。 お前等がいいもん食ってんじゃねーか! それは、この子のもんだろ! 何たかってんだよ!?」


 一葉の肩をポンポンしながら喚き散らす。


(クッサ! この臭い、お酒?)


 後ろから声をかけてきた男子生徒は行儀悪く、立ち歩きながら、飲み物を飲んでいた。 飲んでいたものは鼻にツンとする臭いの中にほんのりと果汁の匂いがしたため、果実酒かワインなのだろう。

 一葉は消毒液の匂いは嗅ぎなれているがアルコールの臭いはあまり嗅ぎなれていない。 そのため、鼻ツンと抜ける臭いに顔を顰め、後方の男子生徒にその顔を見られない用に少し、顔を逸らした。


 それを見ていた、ガイル達は苦笑して、一葉の後ろに立っている男子生徒に苦言する。


「ああ〜。 悪いんだが、そいつ、酒の臭いは苦手みたいだ。 少し、離れてやってくれないか? それと、この料理はたしかに、そいつに用意された物だ。 少し食べたところで、腹が膨れたみたいでな、俺たちがその残飯処理をしてんだよ」


「はっ! どうせ、お前等が食べたそうに見ていたから遠慮してたんじゃないのか!?」


「んなわけねぇだろがよ…」


「お兄さん、臭い! あっち行って!」


 なおも、ガイル達を悪し様に言おうとする男子生徒に一葉は鼻を摘みながら、叫ぶ。


「なっ! これは、君を思っての「やかましいわ!!」」


 ゴン! とフライパンが男子生徒の頭に落とされた。

 フライパンが振り下ろされた衝撃で焼いていたであろうお肉が宙を舞う。 肉を焼いていたという事はフライパンは熱せられているはず。 次第にフライパンを落とされ、押し付けられている男子生徒の頭からも異臭が放ちだす。


「イッテェー! って、熱っ! ちょっ、ジンさん! やめっ。熱いって、ジンさん!!」


 ジュゥ〜と焼ける音がして、周りのみんなも呆然として、動けないでいた。


「フンッ!」


 フライパンを男子生徒の頭から放し、立ち去って行く。 後ろ手に小瓶を男子生徒に投げ渡した。


「おっとと。 これは、ポーション?」


「ああ、その、なんだ。 早く、頭にかけたらどうだ? やべぇぞ」


 アクセルが男子生徒に頭を指さしながらポーションをかけるように促す。


「お、おう」


 ポーションの蓋を引き抜き、頭にぶっかけると、男子生徒の頭からシュゥ〜と音がして、火傷がミルミル治って行く。


 ジンが焼いた肉が載った大皿を手に持って、厨房から戻って来た。


「ジンさん、それって、さっきの肉か…?」


「そんなわけ無いだろ! きったねぇ! んなもん、食わせられねぇだろがよ。 さっきのは、廃棄だ。 フライパンごと」


「はい! ジンさん! 今の言葉には語弊があると思います!」


 頭を焼かれた男子生徒が挙手してジンに異議を唱える。


「語弊があるって、言われても、なぁ?」


「ちゃんと、風呂も入ってるし、汚くないと思います!」


「風呂に入っていようが、入っていまいが、きったねぇもんはきったねぇだろ。 実際に汚いじゃん、お前。 心が」


「心が!?」


 ブワハハ!


 と笑い声が周りから上がると、男子生徒は顔を赤くして喚き散らかす。


「テメェ等、笑うんじゃねー!」


 そう叫ぶと、一層笑い声が上がる。 一葉もアクセル達もそれにつられて笑い出す。


 そんなこんなで夕食は食べ終わり、各自、部屋に戻って行く。

 

「あ。 カズハ、風呂行って来たら? 俺達は一番最後だけど、カズハは多分この時間でも、大丈夫だよ」


 一葉は、ガイルにそう言われ、喜々としてお風呂セットを持って、浴場に向かって行った。


「おいおい。どんだけ、風呂が好きなんだ?あいつ」


「さあ? っていうかさ。 あの子、場所わかるの?」


 ウィリアムの言葉で空気が氷る。


「「………」」


「………」


「まぁ、なんとかなんだろ。 最悪、他の奴らが、案内するんじゃね?」


「そうかもね。 でも、大丈夫かな?」


「何がだ?」


「あの容姿で、一糸まとわぬ状態になって、濡れそぼるんだよ? ちょっと、想像したくないかな」


「「……」」


 再び、ウィリアムの言葉で沈黙させられる二人。

 そして、サァーっと血の気が引いていって、顔が引き攣る。


「血の海が出来てるんじゃ……」


「ガイルっ! バカ、言うな! フラグを立てんじゃねェ!」


 一方で、浴場ではウィリアム達が想像していたものよりも……。


「やべぇぞ…」 


「…ああ」


「お前ら! 倒れた奴らはもう…手遅れだ!」


「「お、おう!」」


「屍を越え、なんとしてでも生還せよ!」


「おう!」


「誰でもいい。 誰か一人でもいい! 誰か…誰か……どうか、生き残って…助け…を………」


 バタン! と一人、また、一人と血の海に沈んで行く。


 一葉は、身体を洗い終わると、湯船に浸かり、気持ちよさそうに縁にもたれかかりうたた寝をしていた。


 一向に戻ってこない一葉の様子を見に来たガイルは、この、惨状を見て顔を引き攣らせ、ジンを呼びに行った。



 以降、一葉も入浴時間を他の生徒達とずらす事になった。


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