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男子学生寮

 リンと共に学園長室に向かうと、そこは、綺麗に直された学園長室になっていた。

 中には、学園長であるシャイルとマリアが待っていた。

 

「お疲れ様です、カズハ君。 とは言っても、今日は、顔合わせと、説明くらいでしょうけど」


 マリアが、一葉を手招きして、近くに寄ってきたカズハの頭を撫でながら労いの言葉をかける。

 それで、と言いづそうに言葉を続ける。


「突然ですが…。カズハ君には今日から、こちらで寮生活をしていただこうと思ってます」


 はい? 


「学園では基本的には寮生活を送る事は、ご存知の事と思います」

 

「え? そうなの?」


 一葉は目を見開き、リンとシャイルに視線を送るが、苦笑で返された。


「え? ご存知なかったんですか!?」


 質問を質問で返された。 


 シアに詰め込まれたのは、この国の成り立ち、文字、言語の文法、算術、後は、魔術議論のさわりだけ。

 学園の事など、一切、全く触れて無かった。


 その事を、マリアに告げると、大きな溜め息をつき、頭を抱えこんでしまった。

 

「ど、どうしましょう? い、一応、説明しておきますね?」


 と、マリアから学園の事について説明を受ける。


 メサイアベルテ学園では、初等部から中等部までは、必ず寮生活を送らないといけない。 入学した生徒達がよっぽどの成績不振や素行不良がない限りは進級するシステムになっている。 そして、親元を離れ、最低限身の回りの事は、自分でこなせる様にするため、不特定多数の人達と協力することで、協調性を身につけるために寮生活を送る、という形態を採用している。 高等部からは任意の進学になるため、寮生活から離れ、実家から通学や、宿暮らしをしていたり、学園内の余った建屋を寄宿舎として、格安で借りれたりと色々な通い方がある。

 一葉は元々、初等部への編入予定だったが、なんやかんやあって、高等部に編入することになった。

 そのため、問題が出てきた。 

 それは……。


「つまり、マリアお姉さん達は、僕が学園で生活をしている間に、ゆう兄達と一緒に各地を回って、魔物達を狩っていく、と。 そのために僕を学園に入学させた。 で、何故か高等部に編入することになったから、寮に入ることは出来ないから、どうしましょう?ってこと?」


「え、ええ。 簡潔に言えばそうなりますね。 でも、まぁ、そのまま、あの家から通ってもいいですけど、ここから、ちょっと離れていますからね。 宿暮らし、でも構いませんが、これは、カズハ君が、安心安全に暮らせるか不安ということで、極力やめて欲しいと。ええ、はい」


 マリアが縮こまってしまった。


「学園長先生? 空いてる部屋はあるのですか?」

 

 すぐ横で、一葉とマリアの様子を伺っていたシャイルに聞く。


「ええ、空いてますよ。 寄宿舎として貸している建屋が男子用も、女子用も」


「じゃあ、男子用入ればいいだけなんじゃないの? どうして、そんなに悩んでるの?」


 カズハの最もな疑問にマリアがおずおずと手を上げる。


「マリアお姉さん?」


「えっと〜。 カズハ君。 自分の容姿はどう思います?」


「容姿? 格好のこと? …特におかしくはないと思うけど?」

 

「格好というよりは、こう…男の子っぽいとか、女の子っぽいとか、そういうことなんですけど…?」


「?」


 言っている意味がよくわからず首を傾げる。その際には、人差し指を顎に添えていたた。


「「それです(よ)!」」


 シャイルとマリアが急に大声で指摘する。


「はぇ?」


「その仕草が男の子っぽくないのです! まぁ、今日までの生活で、女性に囲われて生活していた事が多いから仕方ないかもしれませんが、仕草も女の子みたいなんですよ。 だから、男子寮に入ると他の生徒達が困惑すると思うんです」


「女子寮に入るの? 男だよ?」


「それも、一つの選択肢かと」


「イヤだ! 男なんだから、男子寮に入る!」


 イヤイヤと頭を振って、抗議する。

 カズハの猛抗議に苦笑するしかないマリア達は妥協案を出した。

 それは、一旦、男子寮に入寮して、なにも問題が無ければ、そのまま男子寮で生活をする。 というものだ。


「問題が出たら?」


「うちに来ればいいんじゃない? 宿暮らしは勇者様達が不安がるのでしょう? なら、諦めてうちに来たら?」


 リンが申し出た。


 たしかに、男子寮に居られないとなると、学園外の宿暮らしか、部屋を借りるかのどちらかしか無い。 でも、それは雄一達が反対するだろう。 まだ、10歳の子供が一人暮らし等させられないと言って。

 そうなって来ると、リンの申し出に乗るしかない。 だが、一葉は男の子だ。 その自覚もある。 女性しかいない場所で過ごすのには多少なりとも抵抗がある。


「そもそも…。 そもそも、女子寮に暮らしている人達に意見を聞かなくて良いの?」


「大丈夫大丈夫。女子寮は私含めて、4人しかいないから。 あとの3人は、ベリーとラナとレキだし。 拒否はしないと思うよ? どちらかというと、率先して、自室に連れ込むまである。 勝手に他所から連れ込まれると注意しないといけないけど、同じ寮生なら話は別」


「ええ…。逆に怖いんだけど…」


 連れ込まれると聞いて、一葉は体に悪寒を感じた。


 パン!パン!


 と手が、叩かれる音がした。


「とりあえず、後の事は今考えても仕方ないわ。 カズハ君は男子寮に一旦入寮。 問題があれば、女子寮で保護。 それでいい?」


「うん。 うちはいいよ」


「……はい」


 リンは快く受け入れ、一葉は渋々頷いた。 未だ、女子寮に入る事に抵抗感があるが、背に腹は代えられない。 


 そして、リンに連れられて一葉は男子用宿舎にやって来た。

 リンは男子用宿舎の管理人室の呼び出し鈴を連打していた。 


「おい、なんでリンちゃんがいるんだ?」

「知らねーよ! ってか、あの手ぇ繋いでる子もめっちゃ可愛くね?」

「わかる! うちの学園、女子のレベル高いよな!」

「それな! あの子、リンちゃん親戚の子か? まさか…『サイレント』との子供か!?」

「「イヤイヤ。 そんな訳……ないよな?」」


 リンが呼び鈴を鳴らしていると、学生寮で生活している生徒達が集まって来た。

 いつの間にか、人だかりができていて、多くの人の目に晒され、気恥ずかしくなり、リンにしがみついた。


「おっと。 どうしたの? …ああ」


 突然、一葉にしがみつかれ、驚くと後ろに男子生徒の人だかりができていて、眉を顰める。


「この子が、怖がってるから散って」


 リンが男子生徒に警告する。


「んだ? この人だかりは。 お前達、邪魔。 退け。 道を開けろ」


 男子生徒達の後ろから、聞き覚えのある声がするけど、なんか違和感がある。

 人だかりが左右に裂け、破れ目から気怠げにジンが歩いて来た。


 ちょんちょんとリンの服の裾を引っ張る。


「どうしたの?」


「ジンお兄さん、体調悪い?」


「…ああ。 あれが通常。 カズハが知っている状態は戦闘意識に入っている時のだね」


「そうなの? 落差激しいね」


 一葉がリンにジンのことを聞いていると、ジンが怪訝そうにこちらを見ていた。


「ね、リン先生。 どういった、要件で?  あ、お前ら。 散れ! 女が、来て、舞い上がるのは、良いが…。不快にさせるな!」


 不快そうにしているリンを見ると、男子生徒達に一喝する。


「やっべぇ! 『サイレント』がキレそう! 皆、散れ、散れぇ! ズラかれー!」


 男子生徒の一人がそう叫ぶと、男子生徒達が蜘蛛の子を散らすよう逃げて行った。


「姉さん。 とりあえず、中に入ろ?」


 ジンが管理人室にリンとジンを招き入れる。


 管理人室の中は、酒瓶やパンパンのゴミ袋。袋に入り切らなかったゴミや衣服が散らかり、ゴチャゴチャしていた。


 なんて事はなく、男性の一人暮らしの部屋にしては、やけに綺麗な状態だった。


「そこに座って待ってて。 飲み物の用意するから」


 ジンが丸テーブルが置いてある所を指して言うと、備え付けのキッチンに飲み物の準備をしにいった。


 お盆に3人分の飲み物とお茶菓子を載せて丸テーブルに置くと「それで?」とリンに急の来訪について訪ねた。


「ここで、カズハを預かって」


「おう。 説明」


「この子、高等部に編入したの」


「お? おん」


「それでね、初等部の方には入れないの。 しかも、この子、男の子だから、男子寮がいいって。 だから、ここに入れて上げて? 部屋は余ってるでしょう?」


 リンが手を合わせて、ジンを見上げる様にお願いをする。


「まぁ、余ってるが…。 さっきの、生徒達、見ただろ? 女に飢えてる。 こんなにかわいい女の子ぽい奴が、入ったらと思うと…」


 ジンはサッと視線を逸し、早口になりながら、懸念点を上げてく。


「その点も、考えてある。 なにか問題が発生すれば、カズハはうちで預かる。 だけど、出来るだけカズハの意に沿いたいから、ひとまず入寮を認めて。 駄目なら駄目で、それはしょうがない」


「う~ん…。 わかった。とりあえず、その方向でいこう」

 

「決まり、だね。 カズハ」


「はい」


「聞いていた通りだよ。 今日からこの寮で暮らしてね。 なにか、困った事があればジンの所か私の所に来て」


「うん」


「じゃあ、ジン。 あとはお願い」


「あいよ」


 カズハをひと撫でしていき、リンは帰って行った。


「じゃあ、行くか? カズハでいい?」


「うん」


「じゃ、カズハ。 今から、君の部屋に案内する。 ついて来て」


 そう言われ、ジンの後ろをついていく。


 男子寮は、お世辞にも綺麗とは言えない。物が散乱とまではいかないがまぁ、散らかっている。

 

 どうして、部屋の外に服が落ちてるのだろう?


 「チッ」とジンの舌打ちが聞こえたが、聞かなかった事にした。 やぶ蛇になりそうだったから。


「ここだ」


 ジンが立ち止まり、部屋を指差す。


 中に入ると、「え?」と思わず声が出た。


「ジンお兄さん? 広くない? ここで、合ってるの?」


 そう、想像していた部屋より広いのだ。 一人暮らしの部屋の広さじゃない。 明らかに、複数人が暮らせる位の大きさだ。 

 よく見るとベッドが4つあった。 相部屋?


 どうやら、クラスメイトと同じ部屋らしい。 誰だろう? アクセルさん? ウィリアムさん? もしかして…全員!?

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