入学式 兼 始業式
メサイアベルテ学園 入学式の日がやって来た。
学園には、入学式参加する生徒とその親御さんが入り乱れている。
生徒達は希望を胸に活き活きとした表情で、親御さん達は、家柄が関係しているのか、自信に満ちた堂々とした立ち振舞をしている人。こんな、立派な所に自分の子供が通うのかと顔を青くしたり、オドオドと落ち着かない様子をした人がいる。
その中でも異彩を放っていたのが、他でもない、一葉だった。
周りは、学園指定の制服を着ている生徒とセミフォーマルな格好の人しかおらず、完全な私服姿をしている、一葉は異様に目立っていた。その上、一葉の連れ添いが、スピカ皇国でも一際有名なマリアだとより一層注目の的になる。
人の波が滞り、騒ぎになりそうなところで、職員の一人が走ってやって来て、一葉とマリアを一時的に人目のつかない所に避難させる。
「うん。 やっぱり、騒ぎになったね」
「ははは…。 まあ、仕方が無いですよ。 カズハ君、かわいいですから」
「そういう意味じゃない。 どちらかというと、マリアお姉ちゃんが見られてたんじゃ無い? 元だけど、皇女だったし」
「うーん。 それも、あるとは思うけど…」
「「私服は不味かったね」」
「ふふっ」「ははっ」
「笑いどこじゃないんだけど、二人共」
学園長室に案内された二人は、誤魔化すように談笑するが、シャイルがジト目で睨みつけると気まずくなり目を逸らした。
「はぁ…。 まぁ、いいわ。 制服は? 送ったと思うけど」
「来たよ」
「じゃあ、なんで着て来てないのよ」
「いや、だって、ねぇ?」
一葉がマリアに視線を送る。
「先生。その、言いにくいのですが、カズハ君のこと、どういう風に見えます?」
「どういう意味かしら?」
「性別的な意味で」
「そりゃあ、かわいい女の子でしょ」
「「ですよねー」」
「わかってた」
一葉はガクッと肩を落とした。 マリアが一葉の肩をポンポンと叩き慰める。
「先生、カズハ君のデータはよく見ました?」
「データ? ああ、事前調査のね! あれ、殆ど形式的な物だし偽りが多いからあまり見てないわね。 えーっと、たしか…この辺に…。あったあった」
シャイルはマリアから指摘されると、机の引き出しを漁りだし、一つの大きなファイルを取り出した。
「カズハ君の情報はっと………へっ!?」
シャイルは目を見開き素っ頓狂な声を上げた。
目元をグリグリと揉みほぐし、天を仰いで、再び一葉の情報に目を通す。
「あなた…男の子だったの!?」
「うん。 やっぱり、気付いてなかったんだね」
「いや、だって…あなた、その見た目で男の子だなんて…。詐欺よ!」
綺麗な銀髪を腰辺りまで伸ばし、幼さゆえの少しふっくらした、可愛らしい顔立ち。
何処からどう見ても、幼い女の子だった。
「そんなこと言われても…」
「まぁまぁまぁ。 それよりも先生。 そろそろ、お時間では? 私達はいかがすればよろしいでしょうか?」
「ああ、そうね。 マリアはそのまま、保護者用の席に移動して頂戴。 カズハ君は…。そうね、たしか初等部の制服の予備があったと思うから、持って来させるからそれに着替えて頂戴。 後、今からだと、入学式は途中参加になってしまうから、そのまま編入するクラスに案内させるからそこで待ってて」
そう言い終わると、机の上に置いてあった、ベルを鳴らした。
すると、バコッ! と学園長室に飾られている歴代学園長と思われる肖像画のうちの1つが横に開いた。
「お呼びですか!? マスター!!!」
「うわぁ!?」
肖像画の飾ってあった場所から、メイド服を着た女性が飛び出て来た。
「普通に出てきなさい! お客さんが驚いてるじゃない!」
しゃいるの叱責が飛ぶ。
「アハッ! ごめんって」
「本当に反省してるのかしら?」
はぁ〜と大きな溜め息をついて額に手を当てる。
「まぁ、いつもの事だしいいわ。 それより「初等部の制服ですね! 持って来ま〜す!」…はぁ。 人の話を聞いてから行動なさいよ…」
メイドは、しゃいるの話を聞かずに扉までダッシュして、蹴破って行く。
扉は見事破壊され、向かいの壁にぶつかり、ただの木屑と化した。
「「ええ…」」
今の一瞬の流れに一葉達は、戸惑いしかなく、呆気に取られる。
「はぁ…。 騒がしくてごめんなさい。 今のは私の使い魔よ。 そのうち、カズハ君も授業で契約すると思うわ。 私の、あの子みたいにならない様にきちんと教育しなさい。色々と面倒よ」
「う、うん」
ドゴン!
一葉の横を壁の一部だろうか、折れた木や石膏の欠片等が後ろから飛んできた。
飛来した木や欠片等は、学園長室を大いに汚し、散乱させる。
「持って来ましたよー! あいたぁ!」
メイドが、壁を突き破ってしゃいるの前にやって来た。
壁を突き破って来たメイドの頭をしゃいるは杖で叩き、顔を手で掴み、締め上げる。
「イタタタタタ! 割れるっ! 割れちゃいますって、マスター!?」
「あなたは! 何度、言えば理解するのかしらねぇ?! 壁を突き破って来ない! 扉を蹴破らない! なんのための扉かしら!?」
「ごめんなさい、ごめんなさい。 許して、謝ったんだから離してくださいよ〜」
「反省の色が見えないからでしょうが!」
しゃいるはメイドに制裁を加え終えるとゼェゼェ…と息を切らして、ぐったりと疲れの色を濃くする。
「本当にごめんなさい。 カズハ君はこれを着て。 マリアは、そろそろ行きましょうか。 挨拶しないと行けないでしょう?」
しゃいるは、メイドから初等部の制服の予備を受け取り、一葉の身体に合いそうなサイズの物を渡す。
マリアにも、そろそろ、入学式会場に向かう準備をするように促す。
「そうですね。 一応、理事ですので。 カズハ君、最期まで付き添えなくて、ごめんね」
マリアが一葉の目線まで腰を降ろして申し訳無さそうにするが、一葉は頭を横に振る。
「マリアお姉さん、頑張って!」
応援の言葉をすると、マリアは一葉を抱きしめ頭を撫でる。
「ありがと。 じゃあ、またね」
マリアは一葉に手を降って、学園長室からしゃいると一緒に出ていく。
一葉は受け取った制服を広げ、今度は性別が合ったものかを確認する。 確認して、大丈夫そうだったから、それに着替える。
「あなた。 カズハ君でしたか? 本当に男の子なの? 確認していい?」
メイドが疑わしいと目を細めてきた。 一葉の身体を弄り、確認していくと納得したのか、一葉から手を放した。
一葉が着替え終わると、着てきた服を紙袋に詰めてわたしてくれる。 そこから、入学式兼始業式の為、誰もいない校舎を歩いていく。
「それにしても凄いですね」
「ん?」
「その年で飛び級で一気に高等部に編入だなんて、この学園始まって以来の快挙かもしれませんよ」
「そうなの? まあ、勉強は嫌いじゃないから。 でも、一日中、ず〜っと、ほとんど休憩無しでの勉強はもう、勘弁してほしいかな?」
「ははは。 なんですか、それ? 流石に、そんな授業はありませんよ。 一つの授業で50分、休憩10分。 昼休憩50分で。一日多くて6回の授業ですよ。 その後は、研究会等に所属していれば、その活動を行うって感じですね」
「研究会?」
「ええ。 色々とありますよ 剣術研究会に肉体言語研究会。 魔道具研究会。後は、整備科に操縦科。生徒会、風紀委員…。他にも多くの研究会やサークル活動がありますね。 まぁ、総称で、課外活動って言ってますけどね」
「へぇ〜。 それって、絶対に入らないといけない?」
「そうですね。 高等部はいずれかの一つに必ず入らないと行けないですね。 ですが、あなたは免除されるかもしれませんね。 もちろん、入りたいところがあれば、入ればいいと思いますよ」
「うん。 良さそうなのがあればかな?」
「そうしてください。 あ、ここです」
メイドと話しながら歩いていると、一葉がこれから通うことになる教室に着いた。
教室は至ってシンプル。 すり鉢状になっており、最下段に教卓があり、その後ろに、上下左右にスライドする黒板がある。
メイドと一葉は教室に入る。
「好きなところに座って待っててください。 直に、入学式も終わって、クラスメイトとこのクラスの担任が来ると、思いますので」
「分かりました。 ありがとうございます」
ペコリと頭を下げて、メイドを見送る。
「あ。名前、聞き忘れた。ま、いっか」
この教室は入って左側の窓から日の光が射し込んでいる。 中でも最後列の左角の席が一番日が当たっている。
そこに座って見ると、日当たり良好でポカポカしている。
椅子と机は一葉の体格には少し大きい。 足をぷらぷらとさせて、担任とクラスメイトが来るのを待つ。
なかなか、来ないなぁ…。
ふわぁ〜…。
…。……。




