表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/172

入学式 兼 始業式

 メサイアベルテ学園 入学式の日がやって来た。


 学園には、入学式参加する生徒とその親御さんが入り乱れている。

 生徒達は希望を胸に活き活きとした表情で、親御さん達は、家柄が関係しているのか、自信に満ちた堂々とした立ち振舞をしている人。こんな、立派な所に自分の子供が通うのかと顔を青くしたり、オドオドと落ち着かない様子をした人がいる。


 その中でも異彩を放っていたのが、他でもない、一葉だった。


 周りは、学園指定の制服を着ている生徒とセミフォーマルな格好の人しかおらず、完全な私服姿をしている、一葉は異様に目立っていた。その上、一葉の連れ添いが、スピカ皇国でも一際有名なマリアだとより一層注目の的になる。


 人の波が滞り、騒ぎになりそうなところで、職員の一人が走ってやって来て、一葉とマリアを一時的に人目のつかない所に避難させる。


「うん。 やっぱり、騒ぎになったね」


「ははは…。 まあ、仕方が無いですよ。 カズハ君、かわいいですから」


「そういう意味じゃない。 どちらかというと、マリアお姉ちゃんが見られてたんじゃ無い? 元だけど、皇女だったし」


「うーん。 それも、あるとは思うけど…」


「「私服は不味かったね」」


「ふふっ」「ははっ」


「笑いどこじゃないんだけど、二人共」


 学園長室に案内された二人は、誤魔化すように談笑するが、シャイルがジト目で睨みつけると気まずくなり目を逸らした。


「はぁ…。 まぁ、いいわ。 制服は? 送ったと思うけど」


「来たよ」


「じゃあ、なんで着て来てないのよ」


「いや、だって、ねぇ?」


 一葉がマリアに視線を送る。


「先生。その、言いにくいのですが、カズハ君のこと、どういう風に見えます?」


「どういう意味かしら?」


「性別的な意味で」


「そりゃあ、かわいい女の子でしょ」


「「ですよねー」」


「わかってた」


 一葉はガクッと肩を落とした。 マリアが一葉の肩をポンポンと叩き慰める。


「先生、カズハ君のデータはよく見ました?」


「データ? ああ、事前調査のね! あれ、殆ど形式的な物だし偽りが多いからあまり見てないわね。 えーっと、たしか…この辺に…。あったあった」


 シャイルはマリアから指摘されると、机の引き出しを漁りだし、一つの大きなファイルを取り出した。


「カズハ君の情報はっと………へっ!?」


 シャイルは目を見開き素っ頓狂な声を上げた。

 目元をグリグリと揉みほぐし、天を仰いで、再び一葉の情報に目を通す。


「あなた…男の子だったの!?」


「うん。 やっぱり、気付いてなかったんだね」


「いや、だって…あなた、その見た目で男の子だなんて…。詐欺よ!」


 ()()()()()を腰辺りまで伸ばし、幼さゆえの少しふっくらした、可愛らしい顔立ち。 

 何処からどう見ても、幼い女の子だった。


「そんなこと言われても…」


「まぁまぁまぁ。 それよりも先生。 そろそろ、お時間では? 私達はいかがすればよろしいでしょうか?」


「ああ、そうね。 マリアはそのまま、保護者用の席に移動して頂戴。 カズハ君は…。そうね、たしか初等部の制服の予備があったと思うから、持って来させるからそれに着替えて頂戴。 後、今からだと、入学式は途中参加になってしまうから、そのまま編入するクラスに案内させるからそこで待ってて」


 そう言い終わると、机の上に置いてあった、ベルを鳴らした。

 

 すると、バコッ! と学園長室に飾られている歴代学園長と思われる肖像画のうちの1つが横に開いた。


「お呼びですか!? マスター!!!」


「うわぁ!?」


 肖像画の飾ってあった場所から、メイド服を着た女性が飛び出て来た。


「普通に出てきなさい! お客さんが驚いてるじゃない!」


 しゃいるの叱責が飛ぶ。


「アハッ! ごめんって」


「本当に反省してるのかしら?」


 はぁ〜と大きな溜め息をついて額に手を当てる。


「まぁ、いつもの事だしいいわ。 それより「初等部の制服ですね! 持って来ま〜す!」…はぁ。 人の話を聞いてから行動なさいよ…」


 メイドは、しゃいるの話を聞かずに扉までダッシュして、蹴破って行く。

 扉は見事破壊され、向かいの壁にぶつかり、ただの木屑と化した。


「「ええ…」」


 今の一瞬の流れに一葉達は、戸惑いしかなく、呆気に取られる。


「はぁ…。 騒がしくてごめんなさい。 今のは私の使い魔よ。 そのうち、カズハ君も授業で契約すると思うわ。 私の、あの子みたいにならない様にきちんと教育しなさい。色々と面倒よ」 


「う、うん」


 ドゴン!


 一葉の横を壁の一部だろうか、折れた木や石膏の欠片等が後ろから飛んできた。

 飛来した木や欠片等は、学園長室を大いに汚し、散乱させる。


「持って来ましたよー! あいたぁ!」


 メイドが、壁を突き破ってしゃいるの前にやって来た。

 壁を突き破って来たメイドの頭をしゃいるは杖で叩き、顔を手で掴み、締め上げる。


「イタタタタタ! 割れるっ! 割れちゃいますって、マスター!?」


「あなたは! 何度、言えば理解するのかしらねぇ?! 壁を突き破って来ない! 扉を蹴破らない! なんのための扉かしら!?」


「ごめんなさい、ごめんなさい。 許して、謝ったんだから離してくださいよ〜」


「反省の色が見えないからでしょうが!」

 

 しゃいるはメイドに制裁を加え終えるとゼェゼェ…と息を切らして、ぐったりと疲れの色を濃くする。


「本当にごめんなさい。 カズハ君はこれを着て。 マリアは、そろそろ行きましょうか。 挨拶しないと行けないでしょう?」


 しゃいるは、メイドから初等部の制服の予備を受け取り、一葉の身体に合いそうなサイズの物を渡す。

 マリアにも、そろそろ、入学式会場に向かう準備をするように促す。


「そうですね。 一応、理事ですので。 カズハ君、最期まで付き添えなくて、ごめんね」


 マリアが一葉の目線まで腰を降ろして申し訳無さそうにするが、一葉は頭を横に振る。


「マリアお姉さん、頑張って!」


 応援の言葉をすると、マリアは一葉を抱きしめ頭を撫でる。


「ありがと。 じゃあ、またね」


 マリアは一葉に手を降って、学園長室からしゃいると一緒に出ていく。


 一葉は受け取った制服を広げ、今度は性別が合ったものかを確認する。 確認して、大丈夫そうだったから、それに着替える。


「あなた。 カズハ君でしたか? 本当に男の子なの? 確認していい?」


 メイドが疑わしいと目を細めてきた。 一葉の身体を弄り、確認していくと納得したのか、一葉から手を放した。


 一葉が着替え終わると、着てきた服を紙袋に詰めてわたしてくれる。 そこから、入学式兼始業式の為、誰もいない校舎を歩いていく。

 

「それにしても凄いですね」


「ん?」


「その年で飛び級で一気に高等部に編入だなんて、この学園始まって以来の快挙かもしれませんよ」


「そうなの? まあ、勉強は嫌いじゃないから。 でも、一日中、ず〜っと、ほとんど休憩無しでの勉強はもう、勘弁してほしいかな?」

 


「ははは。 なんですか、それ? 流石に、そんな授業はありませんよ。 一つの授業で50分、休憩10分。 昼休憩50分で。一日多くて6回の授業ですよ。 その後は、研究会等に所属していれば、その活動を行うって感じですね」


「研究会?」


「ええ。 色々とありますよ 剣術研究会に肉体言語研究会。 魔道具研究会。後は、整備科に操縦科。生徒会、風紀委員…。他にも多くの研究会やサークル活動がありますね。 まぁ、総称で、課外活動って言ってますけどね」

 

「へぇ〜。 それって、絶対に入らないといけない?」


「そうですね。 高等部はいずれかの一つに必ず入らないと行けないですね。 ですが、あなたは免除されるかもしれませんね。 もちろん、入りたいところがあれば、入ればいいと思いますよ」


「うん。 良さそうなのがあればかな?」


「そうしてください。 あ、ここです」


 メイドと話しながら歩いていると、一葉がこれから通うことになる教室に着いた。


 教室は至ってシンプル。 すり鉢状になっており、最下段に教卓があり、その後ろに、上下左右にスライドする黒板がある。


 メイドと一葉は教室に入る。


「好きなところに座って待っててください。 直に、入学式も終わって、クラスメイトとこのクラスの担任が来ると、思いますので」


「分かりました。 ありがとうございます」


 ペコリと頭を下げて、メイドを見送る。


「あ。名前、聞き忘れた。ま、いっか」

 

 この教室は入って左側の窓から日の光が射し込んでいる。 中でも最後列の左角の席が一番日が当たっている。

 そこに座って見ると、日当たり良好でポカポカしている。

 椅子と机は一葉の体格には少し大きい。 足をぷらぷらとさせて、担任とクラスメイトが来るのを待つ。


 なかなか、来ないなぁ…。


 ふわぁ〜…。


 …。……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ