念願のパスタ
明けましておめでとうございます!
今年も、どうか、何卒、応援のほどよろしくお願い致しまします!
日も沈み始め、夕飯時になり一葉達は食堂に向かっていた。
食堂に入ると、正義、雄一、理恵、春希、沙月が正座をさせらていた。
愛莉栖と華蓮がその前に立ち、腕を組んでムスっと怒っているのが伺えた。
正座をしているメンバーは、一葉の射撃試験の見学をしていたメンバーだ。
ローズが丁度厨房からお茶を載せた台車を引いていたので事情を聞きに行く。
「あら、ローズ。 こんなところにいたのね? 急に居なくなるんですもの、ビックリしたわ。 それで…今度は何で怒らせたんですか?」
正義達は度々、正座をさせられて説教というわけではないが、よく言い聞かされている。
そして、今回のも何かあの二人を怒らせたんだろうとは思うが、いつもと違う様子。
「はい。 実は…カレンさんも、アリスさんもカズハ君の晴れ舞台を見たかったらしく、それを黙って見に行った他の皆さんに『なんで、私達にも声を掛けてくれなかったの!』と」
「…え。 全員に見られてはちょっと…」
本当に勘弁してほしい。 全員に見られながらって、プレッシャーがすごいんだけど!?
「あ〜。 なんとなくわかりました。 まぁ、晴れ舞台はいずれまた見る機会があるでしょうからその時まで我慢してもらいましょう」
ジーザス! 神は死んだ! お願いだから、そんな機会は来ないでください!!
一葉は聞こえなーいと耳を抑え、首を降った。
その様子をシャイル達が微笑ましい者を見るように見ていた。
「今日はシャイル先生達も我が家でお食事になさいます。準備をお願い」
「かしこまりました。 あれ? 殿下のお姿が見えませんが」
「帰らせました」
「左様ですか。 では、準備に取り掛かりますので、お席に座ってお待ち下さい」
「ええ、よろしく」
「お好きな席にどうぞ」
マリアが、シャイル達に席の案内をする。
一葉は華蓮に近づき服を摘む。
「お姉ちゃん、もうやめてあげて?」
「…はぁ。 みんな、次、抜け駆けしたら、許さないから」
一葉が来たことによって、お小言をやめて、一葉を労う。
「お腹すいたでしょ? 直ぐに用意するから待っててね。 パスタ食べたかったんだよね? アイちゃんも休んでて。 後は、私だけでも出来るから」
「うん、お願いしてもいい? 流石に、あの量のパスタを作ったのは初めてだから、疲れたよ〜」
アリスは華蓮の言葉に甘え席に着くとぐで~と机に突っ伏した。
「よしよし、お疲れ様。 アリスお姉ちゃん」
一葉は愛莉栖の頭を撫でる。
「労ってくれるの? ありがと〜、一葉くん〜」
愛莉栖は一葉に抱きつき、そのまま抱え上げ、膝の上に乗せてギュッと抱きしめた。
「はぅあ! お姉ちゃん苦しいよ〜」
一葉は、アリスの背中をタップする。
「はいはい。 アイちゃん、一葉君が苦しそうだから放してあげてー」
華蓮が厨房から両手一杯に鉄板の載った器を乗せて、運んで来た。
「あれ? 俺らのは?」
正義が自分たちの分が無いことに気付いた。
華蓮が持って来たのは自分の分と愛莉栖と一葉の分だけだった。
「は? 自分で取りに行けば?」
(こんなに怒ってる、ハナお姉ちゃん初めて見た…)
「も〜、ハナちゃんそんなに怒らないで」
愛莉栖が苦笑しながら言う。
「ああ。いい、いい。 俺らが悪かったしな。 おーい、自分の分は自分で運べ〜」
「あいよ〜」「「「は~い!」」」
パタパタと厨房に取りに行った。
一葉は愛莉栖の膝の上から降りて、一葉の分として置かれたパスタの前の席に着いた。
木の器の上に鉄板が置いてある。
鉄板から発せられる熱が頬を撫でる。
鉄板の中は薄焼き卵が敷いてあって、その上に朱いパスタが載っていた。
パスタの器の両サイド、右側にフォーク、左側にスプーンが置かれて、それをそれぞれの手で掴む。
フォークで、数本掬い上げ、スプーンの上で巻取り口に運ぶ。
口に入れた瞬間、トマトの甘み、酸味が口いっぱいに広がった。
一口噛むと胡椒の辛味、風味の感じる玉ねぎのシャキシャキした触覚、ピーマンの仄かな苦味を感じ、パスタの甘みが滲み出てくる。
フォークで半熟の玉子焼きを切って口に運び入れる。
口いっぱいに淡白な甘みが広がり、先程の濃い味がする口の中をリセットする。
次は、パスタをフォークに巻いて、半熟の玉子焼きを絡めて口に入れると、まろやかになったトマトの風味が口に広がる。そこに、塩分の効いたウインナーの旨味がパンチを効かす。
一葉は一口一口噛み締めて味を楽しむ。
「ははは! どうやら、ナポリタンが気に入ったようだな!」
正義が一葉を見て快活に笑う。
「そのようだね。 口に合ったようで良かったよ! 一葉君、好みとかってほとんど言わないからね〜」
華蓮も満足そうに一葉を眺めていた。
食事が終わり、一葉はふと、気になっていたことを口にする。
「そういえば、僕の試験ってどうなったの? もう一回模擬戦だけやる?」
「ああー。 いや、その必要は、無いよ」
全員の視線がジンに集まって、ジンがたじろいだ。
少し、言葉に詰まっているのは、ジンにとって、話なれない人が多いことから、極度の緊張状態にあるからだ。
「そうなの? じゃあ、合格?」
「…そう、だな。 というよりも、俺が、もう、やりたくない」
「ジン…。 もうちょっと…ねぇ?」
姉のリンが呆れてものが言えなくなる。
「愚弟がごめんなさい。 ジンは、カズハ君と一度剣を合わせて、その実力を認めてるの。 だから、その…、もう一度やる必要はないし、無駄に疲れるだけだからやりたくないって言いたいんだと思う」
リンが補足をし、ジンが首を縦にブンブン振って、その意を伝える。
「そうね。筆記試験も問題なくクリアしてるし、実技試験も、まあ、問題が無いといえば、そうでもないけど、一応合格ライン出し、問題ないわ。 後は、後日ここに合否通知を送るからそれを見て頂戴」
「は~い!」
一葉は手をあげて、元気よく返事した。




